表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/21

16話 魔法は義務教育の中にある

 で、話を聞いてみたら俺は椅子から転げ落ちた。

 一言で表すなら、好きになりすぎて相手を殺しかけたことが何度かある……らしい。


 どういうことだよ!?

 好きになった相手を殺したくなるってこと!?

 怖ッ!


 顔を青ざめさせていると、アリシャが温かいタオルを渡してくれた。後ろでクラリスがムッとしている。


「まぁ、そういう反応になるわよね。

 実際には殺したことはないけど、私とセイレスで何度か止めに入ったことがあるわ」


 何度かあるのか……。

 待ってくれ。二人で止めに入らなかったら……。

 つまり! ヤンデレじゃん!!

 またクセが強いの出てきたなぁ……。


 三人目の嫁になってくれなんてお願いしたら、俺のタマが危ない!

 生き残るために仲間探しを頑張っていたら、味方に半殺しにされるなんて冗談じゃない!


 顔が引き攣っていたのだろう。セイレスがフォローしてくれた。


「無理もないわ。誰だってそんな反応になるもの。でもいつかは向き合わないといけない問題でもある。

 女神の魔力が同じ所に二つあれば、嫌でも気づくわ。向こうから様子を見に来ると思う」


「マジか……」


「あの子に関しては準備しても仕方ないから、一旦は置いておきましょう。それよりも」


「魔法の練習だよな……」


 はっきり言っておこう!

 俺には魔法の才能があんまりないかもしれない! というのも、セイレスに教えてもらっている中級以上の魔法理論が全くわからない。


 変身魔法も角を隠せるようにはなったが、服を変えたりはまだできない。


「ちょっと困るな……!

 魔王なのに魔法が苦手なのは!

 魔王としての威厳が毛ほどもない!」


 すると、セイレスが魔法書をパタンと閉じて小さくため息を一つ。

 出来の悪い生徒でゴメンネ。

 だが、意外にもセイレスは成長速度についてではなく、諦めが早いことに呆れているようだった。


「魔法についてまだ教わったばかりなのに、随分と早い見切りね。もっと落ち着いて魔力を身近なものにしないと」


「転生前は魔法が一切ない世界の一般人だったから、魔力を操作してもどこか距離を感じるんだよな」


 セイレスが少しだけ表情をしかめた。


「グレイヴがいた元の世界は知らないけれど、下級魔法なら人間でも使える者は珍しくないわ。それこそ歴代の勇者パーティに所属していた魔術師なんて、人間でありながら上級魔法も使っていたわよ」


 なんだその人間! ズルい!

 もう少し魔力が身近というか、手頃な物で学びたいなぁ。


 机に顎を乗せながら、魔法書を下敷きにする。

 代わりに昔飼っていたペット達をウォーターボールで作って行進させる。

 元気かなぁ……ワンコ達。


 すごい視線を感じてセイレスを見ると、その表情はパアァっと明るいものへと変わっていた。

 普段は控えめな感情表現が多いけど、そんな顔もするのね。


「グレイヴ、それは?」


「んー、下級魔法のウォーターボールで作った、昔飼ってたワンコだよ。どうかした?」


「かなり細かく毛並みとかも再現してる。

 もしかして昔よく触れ合っていたりする?」


「実家で何匹か飼っててさ。それの人形よ。

 お座り!」


 命令するとしっかりと足を曲げてお座りのポーズを取るウォーターワンコが三頭。


「グレイヴ、その魔法コントロールがあれば、上級魔法も夢じゃないわ」


「え! マジで!?」


 ガバっと起き上がってセイレスの肩を優しく掴む。


「むしろそっちの方が難しいのよ? 中級魔法はどうしても魔力の性質や形状を変える必要があるから」


 俺が掴んだ手を払いながら、なおも続ける。


「今グレイヴがやっている遊びが、中級魔法と言ってもいいくらい。よく出来ているわ」


 希望が見えてきた。習うより慣れろというのは、こういうことなのか。

 ありがとう、実家のワンコ達よ。


「なら、さっさと覚えようぜ!

 上級魔法!」


「こら、調子に乗らないの。まだ足がかりが見えただけで、中級が出来るようになっただけ。

 形状変化は出来るってわかった。次は性質変化が課題よ」


「うーん、性質変化ってどうやるんだろうな。

 下級魔法ならイメージするだけで簡単に出来たけど……。

 どういうものが中級以上の性質変化なのか、教えてくれない?」


「いいわよ。性質変化は下級魔法で感覚として覚えるから、本当は形状変化の方が習得が難しいのだけど。

 グレイヴは記憶と強いリンクがあるみたいだし、一度見せた方が早そうね」


 そう言って、セイレスが両手に下級魔法のファイアボールとウォーターボールを同時に出す。

 既に俺が出来ないことを当然のようにやるセイレスをじっと見る。


 赤い炎の弾が一瞬にして青く色を変えた。

 まだ距離があるのに熱気がここまで伝わってくる。

 また、もう一つの水の弾は、一瞬の内に氷へと変わってしまった。


「わかりやすく実演してみたけど、どうかしら? イメージできそう?」


「おぉ! これあれだわ! 理科の実験!!」


「りか?」


「そう、学校で習うんだよ」


「へぇ。中級魔法の概念を学校で習うのね。

 グレイヴの故郷は素晴らしい国だったのかも」


「確かに教育については、他の国より多少は進んでいたかもね。

 うんうん、これなら性質変化もなんとかできるかも!」


 一度見るまでは全くイメージがつかない魔法だったが、魔法は理系脳の方が都合がいいのかもしれない。


 昔やったなぁ。黒い折り紙に虫眼鏡で光を集めて、黒魔術の儀式だ! って、懐かしいな。


 いや、待てよ?

 光を集める方法を魔法で何とかすれば、めちゃくちゃ強いビームとか打てるようになったりする? おぉ! 夢が膨らむ!!


 一人でウキウキしていると、横でセイレスが少しだけ笑っていた。

 そういえば、気になっていたことがあったんだ。


「なぁセイレス。俺と契約結婚して、魔力の代わりに何か能力をもらったと思うんだけど、心当たりある?」


「オープンで見てみたら?

 私にはあなたの中身がどうなってるかわからないわ」


「それもそうか。オープン」


 期待を込めて唱えると、久しぶりにステータス画面を見て、俺は口を少しだけへの字に曲げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ