15話 セイレスとの契約?結婚
イリス国の民達には申し訳ないが、ジェラルドがかけてきた最後の言葉を考えれば、ここに長居するのは逆に迷惑になるかもしれない。
早めに退散するのが一番波風が立たない。
アリシャとセイレスは、まだ教会で人達を避難させているのだろうか。
とりあえずの脅威は去ったと伝えに行くか。
「教会で二人がイリスの人達を安全な所に連れて行っているから、見に行こうか」
「よろしいのですか?」
言われて頭を触り、気づく。俺、角が生えてるんだった。角を隠していたローブもボロボロで、もう隠すことはできない。
パニックは避けたいからなぁ……。
クラリスに説明してもらえば、俺の無事も伝わるか。
「悪いけどお願いしてもいい?」
「お任せください。魔王様も巨大な魔力の持ち主と戦われたようですし、お怪我はございませんか?」
「うん、大丈夫。俺は無傷だよ」
「いえ、御身のお顔に傷がついておられます。
少しだけ失礼します」
俺の身体をペタペタと触りながら、ローブを引っ剥がされる。クラリスさん、なんか恥ずかしいのですが!
「威厳を示されるのも大事ですが、ちゃんとご自愛くださいね。嘘は厳禁ですよ?」
「ごめんごめん。嘘はついてないよ。
だから俺の代わりに二人の下に行って、もう魔王軍が撤退したことを伝えてきて」
「かしこまりました」
クラリスが一礼して教会がある方向に歩いて行く。場所を教えてないけど、わかるんだ。
さすがメイドちゃん。
一人になった瞬間、膝が笑い始めてくる。
……少し疲れたな。
しばらく目を閉じて三人の帰りを待っていると、いつの間にか空が明るくなり陽が昇ってきたようだ。差し込んできた朝日が眩しくて目を開けると、三人が俺の顔を覗いている。
「あっ、生きてた」
こらこら、勝手に殺すんじゃないよ。
「俺、結構寝てた?」
「それはもう、私達が声をかけても起きませんでしたから。アリシャなんてちょっと心配していたわ」
「こ、こらセイレス!」
セイレスはいつの間にか、魔術師のような黒い正装に着替えていた。
はっはーん。やっぱりちょっと俺のことを気にかけてくれていたなんて、アリシャも可愛いところあるじゃないかー!
「アリシャ」
「なによ」
「ありがとう」
「べ、別にあなたにお願いされたからやったわけじゃないし!
それに、セイレスの魔法制御がなければもっと時間がかかってたから、私だけの手柄じゃないわ」
わかりやすくそっぽを向いている。かわいい。
「セイレスもアリシャを助けてくれてありがとう」
「別にいいわ。非常時くらい女神でも手を貸すのが、普段から信じてくれてる人間達に対しての誠意ってものよ」
「なんか今の、すごい女神っぽかった」
アリシャが少し自慢げに胸を張って事実を口にする。
「それはそうよ。私達、本物の女神だもの。
人から求められたからってなんでも手を貸してたら、それこそ都合のいい存在と変わらない。
だからあなたと結婚したのだって、ちゃんとお互いに利があるからなんだから」
「えぇ? 利があるだけじゃ嫌だって言ってたのに?」
「うるさい、バカ」
頭を叩かれる。あんまり痛くない。
このやりとりは安心するなぁ……。
俺が笑っていると、様子を見に来た民が何人か集まり始めてきた。そろそろお暇しなければ。
「じゃあセイレス。俺達はそろそろ帰るよ。
あんまり長居して俺が魔王だってバレても迷惑かけちゃうしね。また今度、改めてくるよ」
アリシャがセイレスにハグしようとした時、なぜか一度手で制し、俺の前に歩み寄ってくる。
「ねぇ」
言葉を探すように、セイレスが手をモジモジさせながら再び口を開いた。
「やっぱり私と結婚した方が、きっとあなたのためになるわよね……?」
「それは、うん。正直に言えば結婚して、魔力を受け渡した後に一緒にいてほしいけど……!
街のこともあるし、別に今すぐにって話じゃなくても」
「……いいえ。やっぱりするわ、あなたとの結婚」
「なんで?」
急なセイレスの心境の変化についていけない。
「私はそこにいるメイドを簡単に切り捨てる冷酷な人だと思って、一度は結婚を断った。
でも、勘違いしていた。
ちゃんと信頼して送り出していたのね。
だから、やっぱり最初に会ってから見た印象は間違ってなかった。
私に誓える? ともに生き、ともに戦い__そして最後まで責任を持ってやり抜くと」
セイレスが力のこもった目で俺を見る。答えはもちろん決まっていた。
「ああ、もちろんだ」
セイレスを二人目の嫁ちゃんに迎え、残るは最後の三女神。
魔王城に全員で戻ってからしばらく経ち、俺はセイレスに地獄の魔法訓練を受けていた。
休憩時間に三人目について聞いてみる。
出来れば勇者が魔王城に来る前に結婚しておきたいが、二人に話を聞いてみると、めちゃくちゃ微妙な顔が返ってきた。
「あー、うん。あの子はちょっと苦労すると思う」
「そうね……。結婚自体は多分問題ないけれど、その後が一番大変……というか厄介だと思うわ」
二人も結構クセあるよ?
というのは言わずに黙っておいた方がいいだろうが、厄介と来たか……。
ツンツンのアリシャと、クールなセイレス。
三人目は一体どんな子なんだろう?




