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違和感のある再開

酒場は、夜でも騒がしかった。

剣士、商人、傭兵。

それぞれが自分の一日を、酒に溶かしている。


「やっぱり、この騒がしさが落ち着くな」

ガルドがそう言って、大きなジョッキを机に置いた。


ヒロは、ほとんど口をつけていない。

目の前に座るモモから、視線を外せなかった。


――そこにいる。

それだけで、胸がいっぱいになる。

ガルドが気づいた。

「そんなに見ると穴が開くぞ?」


モモが、冗談めかして笑う。


変わらない。

声も、仕草も。

なのに――


(少し、大人びた…?)


ヒロは、そう感じていた。


「ヒロ」

モモが、名前を呼ぶ。


「ん?なに?」

「……一年、だったんだよね?」


「ああ。こっちに来てから」


モモは、少しだけ目を伏せる。

笑顔は、崩さないまま。


「短いね」


短い。

その言葉に、ヒロは違和感を覚える。


「色々あって、あっという間だったかな…。

 モモは……?」

問いかけると、彼女は一瞬だけ言葉を探した。


「私は、ちょっと長かったかな」


その“ちょっと”に、重みがあった。


ガルドが、無遠慮に割り込む。

「なあなあ、二人とも同じ世界から来たって本当か?」


モモは頷く。

「はい。……遠い、世界です」


リーゼが、静かに観察していた。

ヒロを見る目。

そして、モモを見る目。


(この人……)

(ヒロの“時間”を、私よりも長く生きている)


直感だった。


「ねえ、ヒロ」

モモが、真面目な顔で話しかけてくる。


「無理、してない?」

「してないよ」


即答だった。いつもの癖だ。

他人が心配になる言葉を無意識に排除している。


モモは首を横に振る。


「嘘」

「ヒロは、嘘つく時……呼吸が浅くなる」


ヒロは、少し驚いた表情になる。


(覚えてるんだ)

(そんなことまで)


二年。

二年だと思っていた。モモも。


でも、モモの目には――

もっと長い時間を経た人間の静けさがあった。


「大丈夫」

モモは、微笑む。


「私は、ここにいる」

「ずっと、待ってたから」


(ずっと…?)

(二年…長いよな、そりゃ)


ヒロはまだ、自分とモモに仕掛けられた時のイタズラに気づけない。


リーゼは、グラスを置く。

胸の奥に、静かな痛み。


(私は……)

(ヒロの“今”でしかない)


酒場の喧騒の中で、

三人の時間は、ずれて重なっていた。


誰も、

その歪みを、

まだ言葉にできなかった

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