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耐える。
暗い。
目を開けているのか、閉じているのかも分からない。
揺れだけが、はっきりと分かった。
(……動いてる)
馬車だと、遅れて理解する。
体は横にされ、手足は縛られている。
口は――塞がれていない。
でも、声は出さなかった。
(叫んでも……意味、ない)
それは諦めじゃない。
ただ、状況を理解しただけだった。
頭が、妙に冴えている。
誘われた道。
少し暗い裏通り。
背後から伸びてきた腕。
抵抗はした。
でも、数が多かった。
(……私、また)
胸の奥が、きゅっと縮む。
ヒロの顔が浮かんだ。
最近、忙しそうだった。
うまくいっているのが、分かっていた。
自分は――
邪魔、だったのかもしれない。
(違う、って……言ってくれるかな)
でも、その言葉を聞く前に、
自分はここにいる。
馬車が、止まった。
外から、低い声がする。
「静かだな」
「慣れてるんじゃねえの?」
笑い声。
モモは、目を閉じた。
(……泣かない)
泣いたら、負けだと思った。
何に、なのかは分からないけれど。
ヒロは、きっと探している。
リーゼも、ミレイも。
だから――
自分は、折れない。
(大丈夫)
誰に言うでもなく、心の中で繰り返す。
(私は……大丈夫)
それが、
自分にできる唯一の抵抗だった。
馬車の扉が、ゆっくりと開く。
光が、細く差し込んだ。




