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信じられるものが無い

街を、走っていた。


理由は分からない。

目的地は分からない。

ただ、立ち止まったら終わる気がして。


(……どこだ)


頭の中で、地図がぐちゃぐちゃに混ざる。

普段なら、無意識に整理できるはずの情報が、今は何一つ噛み合わない。


――確率を見ろ。


そう思った瞬間、反射的に視線を落とす。


……何も、出ない。


「……くそ」


自分で自分を殴りたくなった。

こんな時ですら、数字に縋ろうとしている。


(違うだろ)


守るって、言った。


口にした言葉が、胸の奥で反響する。

リーゼの声。

あの平手の痛み。


(俺は……)


走りながら、思い出してしまう。


最近の自分。

商談。

数字。

成功率。

勝ち続ける感覚。


――うまくいきすぎていた。


確率が見えているから。

判断の根拠があるから。


「だから大丈夫だ」

どこかで、そう思っていた。


(……モモは?)


あの人は、数字じゃない。


不安を飲み込んで笑うところも。

自分を後回しにするところも。

夜、ふと黙り込む背中も。


全部、知ってたはずなのに。


「……俺は」


足が、少しだけもつれる。

息が激しくなる。


(守ってる“つもり”だっただけじゃないのか)


街灯の下で、息を整える。

汗と、冷たい空気。


確率表示は、相変わらず沈黙したまま。


――当たり前だ。


選択肢がない。

失敗率も成功率も、出せる段階じゃない。


(それでも……)


拳を握る。


数字がなくても、行くしかない。


モモがどこにいるか分からない。

敵が誰かも、はっきりしない。


それでも。


「……迎えに行く」


誰に言うでもなく、そう呟いた。


これは計算じゃない。

逃げ場も、近道もない。


それでも――


(俺が、行く)


走り出す。

しかし、何も見えない暗闇を

闇雲に走る感覚が抜けない

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