表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/58

誤解を解きたかった

リーゼは、はっきりと気づいていた。


モモの笑顔が、以前と違うことに。


ヒロの隣にいる時でさえ、どこか遠くを見ている。

必要以上に言葉を選び、必要以上に一歩引いている。


(……耐えられない)


仲間として。

友人として。

そして――かつて、同じ人を想った者として。


リーゼは、ミレイを呼び出した。


昼間の市場外れ、人気の少ない路地。

ミレイはいつもの調子で現れたが、リーゼの表情を見て、すぐに察した。


「……モモさんのことやね?」


「ええ。もう無理です。」


リーゼは、迷わなかった。


「モモが……悩んでいるの。あなたのことも、ヒロのことも」


ミレイは一瞬だけ目を見開き、それから苦笑した。


「うちが原因、って思われてるんやろな」


「……ええ」


「でも、それはちゃう」


ミレイは、きっぱりと言った。


「うちはヒロのこと、仕事仲間として信用してるだけや。

それ以上でも以下でもない」


リーゼは、胸の奥が少しだけ軽くなるのを感じた。


「だからな」


ミレイは続ける。


「ちゃんと話そう。三人で。

誤解は、顔見て話さんと解けへん」


「……ええ。そうしましょう」


リーゼは、深く頷いた。



その夜、モモは一人、夜道を歩いていた。


(……リーゼとミレイさん、待ってる)


約束の店は、街の外れにある小さな食事処。

人通りは少ないが、治安が悪いわけではない。


――はずだった。


(話って何だろう。

 私が……行っていいのかな)


ふと、足が止まる。


ヒロの顔が浮かぶ。

商談に向かう背中。

最近、少し遠く感じる横顔。


(私は……必要なのかな)


胸が、ぎゅっと締め付けられる。


「……考えすぎ、だよね」


自分に言い聞かせるように呟き、再び歩き出した、その時。


――視線。


背後から、はっきりとした“意図”を感じた。


振り返ろうとした瞬間、

口元を塞がれ、視界が暗転する。


「――っ!?」


声は、出なかった。


複数の腕。

手際の良すぎる動き。


(……狙われてた?)


最後に浮かんだのは、その疑問だけだった。



少し離れた路地裏。


影に紛れて、男たちが短く言葉を交わす。


「……目的の女だな」


「間違いない。ヒロのだ」


「連れていけ。騒ぎになる前に」


彼らの目に、躊躇はなかった。


それは衝動ではなく、

**計画された“実行”**だった。



そして、同じ夜。


ヒロはまだ知らない。


リーゼも、ミレイも、

そして――モモ自身も。


この夜が、

二度と元には戻れない分岐点になることを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ