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聞こえる音は

街が、少しずつ変わってきている。


そう感じるのは、たぶん私だけじゃない。

理由は一つ。

きっと、街中の誰もが気づいている。


そう、ヒロ。

最近よく聞く。


市場で。

宿の食堂で。

道端の立ち話の中で。


「当たり前みたいに話が通るらしい」

「最近、あの辺の流れが変わったって」


誇らしい、はずなのに。

胸の奥が、ざわつく。


ヒロは、いつも通りだ。

私を見る目も、声も、距離も。


変わらない。


それなのに――

私の居場所だけ、この街で、この世界で薄くなっていく。


歩いていると、視線を感じる。


露骨じゃない。

でも、はっきりと意識されている。


「……あの人か」

「ヒロの……」


言葉の続きを、勝手に想像してしまう。


(女)

(元娼婦)

(今は――?)


肩をすくめて、歩く。


何も言われていない。

何も起きていない。


それなのに、心だけが疲れていく。


(私は……)


ふと、立ち止まる。


ヒロの隣にいる理由を、考えてしまった。


現実世界で最初は、仕事だった。

それは事実だ。


今は違う。

そう、思っている。


でも、それは――

私だけが思っていることだったら?


ヒロは、何も言わない。

言わなくてもいいと、思っているのかもしれない。


でも。


言葉にされない関係は、

街のざわめきに、簡単に溶けてしまう。


夜。


宿の部屋で、灯りを落とす。


窓の外では、人の流れが続いている。

誰かが成功し、

誰かが取り残される音。


(私がいなくなっても……)


また、考えてしまう。


胸が、ぎゅっと痛む。


違う。

そんなはず、ない。


ヒロは――

ちゃんと、私を見ている。


そう信じたい。


でも、信じるための“言葉”が、

どこにもない。


その夜、モモは気づかなかった。


街のどこかで、

別の視線が、彼女を“個人”としてではなく

**「使える駒」**として見始めていたことに。


置いていかれる音は、

もう、すぐ後ろまできていた。

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