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隠せない裏の動き

商会の帳簿を見ていて、

ユウガは、ほんのわずかな違和感に気づいた。


(……お金の流れが変わった。)


売上が落ちている。

だが、それは商会全体の話じゃない。


一部の商人だけが、露骨に外されている。


「ヒロの取引が増えた分、

 こっちは減るわけか……」


独り言が、自然と漏れた。


ヒロが来てから、街の流れは変わった。

無駄な中抜きが減り、

効率のいい取引が回り始めた。


それ自体は、正しい。


だが――

“正しすぎる変化”は、必ず反発を生む。


ユウガは、商会の奥で交わされている

小さな会話を思い出していた。


「最近、ヒロ派ばっかりだな」

「顔も見なくなったな、あの女」


……女?


(モモさんのことか)


休日の街で出会った。

ヒロの隣に立つ、静かな女性。


派手じゃない。

だが、妙に目を引く。


(……いやらしい目で見てたな、あいつら)


その視線を思い出し、

ユウガは無意識に拳を握った。


「……嫌な予感しかしない」


敵対派の商人たちは、

最近、やけに静かだ。


文句も言わない。

直接の妨害もしない。


――それが、一番危ない。


(正面から来ないなら、裏だ)


ヒロ本人を潰すのは難しい。

評判が良すぎる。

街にも、商会にも、もう必要な存在だ。


じゃあ――

何を狙う?


ユウガの脳裏に、

自然と答えが浮かんだ。


(……一番、効くところ)


ヒロが、判断を誤る場所。

冷静でいられなくなる場所。


「……まさか」


思わず、立ち上がる。


ユウガは、知っている。

ヒロが何を大事にしているか。


商談の席で、

ほんの一瞬だけ視線を向ける先。


疲れていても、

必ず帰ろうとする理由。


(……あの人しか、いない)


モモ。


ヒロの“弱点”であり、

同時に“支え”。


(最悪だ……)


商会内の力関係が変わり、

富が偏り、

嫉妬と焦りが溜まった時――


人は、金よりも

人を壊す方法を選ぶ。


「……ヒロさんには、まだ言えないな」


証拠がない。

嫌な予感だけだ。


それに――

今のヒロは、うまくいきすぎている。


(聞いたって、信じないかもしれない)


ユウガは、深く息を吐いた。


「……せめて、目は離すなよ」


誰に向けた言葉かは、

自分でも分からなかった。


ただ一つ、確かなのは――


水面下で、

何かが動き始めているということ。


そしてそれは、

もう“商売”の話ではない。

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