感じる距離感
最近、ヒロの隣にいる時間が減った。
理由は、分かっているようで、分からない。
最初の頃は、商談の席にも呼ばれていた。
露店から始まった取引が、商会を相手にするようになっても、最初のうちは一緒だった。
でも、いつの間にか。
「今日はいいよ。宿で待ってて」
そう言われることが増えた。
声は、優しかった。
いつもと変わらない調子で、気遣うように。
だからこそ、聞けなかった。
――どうして?
理由を聞けば、答えは返ってくるのだと思う。
でも、その答えが、自分をもっと傷つける気がして。
モモは、何も言わずに頷くようになった。
宿の部屋で、一人になる時間が増えた。
窓から街を眺めながら、考えてしまう。
(……私、もう必要ないのかな)
ヒロは忙しい。
街でも、商会でも、名前を聞くことが増えた。
「最近、すごいらしいな」
「運も判断も、異常だって」
そんな噂が、壁越しに聞こえてくる。
その中心に、ヒロがいる。
その輪の中に、自分はいない。
代わりに、いつも名前が出る人がいる。
ミレイ。
明るくて、よく笑って、誰とでも距離が近い。
ヒロの隣に立つのが、あまりにも自然で。
(……似合ってるな)
そう思ってしまった瞬間、胸がちくりと痛んだ。
ミレイは、いい人だ。
親切で、裏表がなくて、ヒロのこともよく支えている。
分かっている。
それでも。
(私とは……違う)
幸せな未来を想像しようとすると、
どこかで必ず、その考えに行き着いてしまう。
ヒロは、優しい。
だから、きっと言わない。
「もう必要ない」なんて。
だから、余計に分からない。
守られているのか、遠ざけられているのか。
考えれば考えるほど、心が静かに沈んでいく。
ヒロが戻ってくる気配がして、モモは慌てて立ち上がる。
いつも通りの笑顔を作って、迎える準備をする。
(大丈夫)
(私は……大丈夫)
そう言い聞かせながら。
でも、その言葉が、誰よりも自分に向けた嘘だということを、
モモはちゃんと分かっていた。




