表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/58

別れ

朝靄が、街道に薄く残っていた。


宿の前で、ガルドは自分の大剣を背負い直す。

いつもと同じ仕草。

いつもと同じ無骨な背中。


「ここで別れだな」


それだけ言って、ガルドは振り返った。


ヒロは一歩前に出る。

言うべき言葉は、もう決まっていた。


「武を、極めるんだろ?」


「ああ」


短く、迷いのない返事。


「俺はな」

ガルドは空を一度見上げてから、続けた。

「強くなる理由を、まだ探してる」


「守るためかもしれないし」

「壊すためかもしれない」


「だから、遠回りする」


ヒロは頷いた。


「俺は……」

少しだけ言葉を選ぶ。

「モモを守る」


隣に立つモモは、何も言わずに微笑んだ。


「それと」

ヒロは続ける。

「戦う以外の力も、使ってみる」


ガルドは鼻で笑った。


「お前らしい」


それから、ちらりとリーゼを見る。


「リーゼ」


「は、はいっ」


少しだけ声が裏返る。


「お前は、ヒロと行くんだろ?」


「……え、ええ」


「なら」

ガルドは真面目な顔で言った。

「ヒロっ!

 リーゼの事もちゃんと大事にしろ」


ヒロは一瞬きょとんとした。

「え? ああ、もちろん」


仲間として、という響きしかない。

だが――


「ち、ちがっ……!」


リーゼが、慌てて手を振った。


「わ、私は、その……っ」

「そ、そういう意味じゃ……!」


顔が、みるみる赤くなる。


「……?」


ヒロはますます分からない。


モモは、ほんの一瞬だけリーゼを見て、

何も言わず、視線を逸らした。


ガルドも、その空気に気づかない。


「まあ、仲良くやれ」

それだけ言って、踵を返す。


「じゃあな」


重い足音が、道の向こうへ遠ざかっていく。


ヒロは、背中に向かって声を投げた。


「またな、ガルド」


返事はない。

ただ、片手がひらりと上がった。


やがて、その背中が霧にとける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ