表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/58

結果の矛盾。スキルの矛盾。

【警告】

敗北確定。


赤い文字が、視界を埋め尽くす。


逃げろ。

諦めろ。

それが――最善。


頭では、分かっている。


この男に勝つ未来は、

どこにも表示されない。


確率は嘘をつかない。

今まで一度も、裏切らなかった。


「……終わりだな」


タカシが、ゆっくりと近づいてくる。

足音が、やけに大きく響いた。


「分からなかったか?」

「お前は“選ぶ側”じゃない」


「俺が、俺こそが“選ぶ側”なんだよ」


ヒロは、伏したまま動かない。


いや。

動けないのではない。

動かないと、決めている。


(……確かに)

(俺は、負ける)

(もう、間に合ってない)


それでも。

胸の奥に、消えないものがあった。


――モモ。


泣きそうなのに、泣かなかった顔。

それでも、名前を呼んだ声。


「……ヒロ」


責める声じゃなかった。

助けを、信じきった声だった。


(あの時も)

(俺は、正解じゃなかった)


金もなくて。

強くもなくて。

格好悪くて。


それでも――

行った。


確率がなくても。

保証がなくても。


「……そうだ」

ヒロの喉から、声が漏れる。


「俺は……」


【選択肢:諦める】

成功率:72%


また、同じ表示だ。

――それでも。


ヒロは、選ばなかった。

「……俺は、諦めない」


その瞬間。

視界が、ひび割れた。


数字が、崩れる。

確率が、意味を失う。


【スキル覚醒】

文字が、今までと違う色で浮かび上がる。


【固有スキル】

《勇者の矛盾》

――敗北が確定した時。

――それでも信じ、立ち向かう意思を持った時。

――“勇者が負ける”という矛盾を、力に変換する。


ヒロの身体を、何かが駆け抜けた。


痛みが、消える。

重さが、消える。


世界が――遅くなった。

「……は?なんだ?」


タカシの目が、初めて揺れる。

「何だ……その動きは」


ヒロは、立っていた。

さっきまでとは、違う。


足が、床を叩く。

一歩で、距離が消えた。

「――っ!?」


タカシの反応より、

ヒロの拳の方が早かった。


衝撃が、空気を裂く。

壁が、砕ける。


「ぐ……っ!」

タカシが、吹き飛ぶ。

「ば、馬鹿な……!」


「確率は……見えてる……!

 俺は,正解を選んでいるんだ!」


タカシの視界に、

いつもの“90%以上”が浮かばない。


代わりにあるのは――

空白。


「……表示されない?」


初めての感覚。

正解が、ない。

保証が、ない。


「嘘だ……!」

「俺は……間違えない……!」


ヒロは、静かに言った。

「間違えかどうかは」

「……選んだ後にしか、分からない」


もう一度、踏み込む。

さらに拳が、タカシに届く。


タカシの身体が、崩れる。

「……あ、ああ……」


床に伏したまま、

タカシは天井を見つめる。

「数値が……」

「正解が……」


目が、焦点を失っていく。

「……分からない……」


ヒロはその場を去った。

もう、戦う必要がなかった。


その後。

タカシの姿は、消えた。


倒れていたはずの場所には、

何も残っていなかった。


まるで――

“心”だけを、置いていったみたいに。


ヒロは、深く息を吐く。

(……勝った、のか)


実感は、ない。


ただ。

まだ、やるべきことがあった。

ヒロは、部屋の奥へと走り出した。


――モモの元へ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ