【授業】表現領域について
このクラスでは初めまして、かな。表現・演出分野の実技担当講師のオスカーだ、よろしく。
さて早速だが本日の授業内容は『表現領域』とその展開方法について、だ。
表現領域の構築とは、一定の範囲内に空間や材料の制約を無視して、発動者の"そうぞうりょく"であらゆるモノを具現化させる万能の技術。舞台、大道具、小道具、演出等々すべてを賄える、このパーク固有の魔法技術……という認識でいいだろう。他所の魔法技術との差異とかは別の授業で学んでくれ。
で、この表現領域展開の技能はサーカス従事者、特に夢想家と呼ばれる職種が最も扱いに長けているとされるが、実のところこのパークに住んでる人間なら少なからず行使可能な力だ。
やり方は簡単。最初に領域を展開する範囲を強く意識し、そこに配置したいモノを思い浮かべる。この際、例えば車などの複雑精緻な機械を具現化させたい場合とか、実際の中の駆動の理屈や内部構造を知っている必要は無い。「どういう見た目で、どう動くか」の細やかな”そうぞう”さえ巡ればいい。もちろん、実際の構造知識があったほうがよりリアルに思い描きやすいだろうけどな。
まずは試しに自分の足元になにか自然物を作ってみるといい。動きが必要無い、植物や石ころくらいのものでいい。余裕ができたら数を増やしてみたり、動くモノを思い描いたり、物理的に手が届く範囲までなら領域を広げてみてもいいぞ。
ただ、他人を怖がらせかねないようなモノはなるべく具現化させるんじゃないぞ。そういうのは見たがるヤツにだけ見せるべきなんだからな。
……よしよし、みんな領域の展開はできてるみたいだな。その感覚を忘れるなよ。
そうそう、注意してほしいのはこの表現領域、公共の場で好き勝手展開すれば人様の迷惑になる。他人の領域、特にサーカスが催しているパビリオン内なんかで開こうもんならそれはそのサーカスにケンカを売ってることに等しい。
なのでそういう場で大っぴらに広げるには公的あるいは領域所持者の許可がいるから、外では節度を持って利用するように。
ああ、この表現領域訓練室は「許可が下りてるエリア」なので、今はこの部屋の範囲内なら自由に試してみていいぞ。
ああでも一応、抜け道……といっちゃなんだがちょっとした例外もある。
……よ、っと。
手品みたいに取り出したこのステッキだが、ごくごく狭い範囲に表現領域を展開・物品を具現化している状態だ。こういった手持ちできるサイズくらいで、危険物ではない物品を即座に手元に出して、しばらく持ち歩いたり使用する行為――『限定具現化』なら、公共の場でも咎められないことが多い。
ただし、これも一応は無断の領域展開扱いだ。厳しく禁止されてる場所もあるし、あまり悪用するなら当然ペナルティがあるから濫用しないように。
――ん、なんだ渡辺。話の途中に慌てて駆け寄ってきて。質問か? ……違う? 星海がどうしたって?




