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9話 会議

供ー養は続くーよー

 俺とボールトンさんそしてシスターエリアは、神殿から王城へ戻ってきた。

 そして、これからどうするかを決めていく。

 情報の共有が必要だという俺の提案を受けて、王様達が会議を開いてくれる事になった。

 向こうもこちらのことを知りたいのだろうな。

 円卓の一席に座るわけだが、それでも視線がかなりあるので落ち着かない。

 こういう場では、『ジョブ』の中でも勇者が一番落ち着く。

 神殿で得られた武器は、現在どこと言っていいかわからないところに収納中である。

 頭の中で『武器転チェンジウエポン』と唱えればすぐにでも取り出せる状態ではあるのだけど亜空間でも用意されてるのかな?


「では、これより勇者様を交えた作戦会議を始める」


 最初に宣言したのは、王様だ。

 この場には重要な人物しかいないだろう。

 誰もが、いかにもな雰囲気を醸し出している。


「では、はじめに勇者様から」

「ああ、わかった。

 俺の能力について伝えておく」


 誰もが真剣な眼差しで俺を見る。

 久しぶりだなこうやって自分がプレゼンテーションみたいなことをすることになるとは


「俺の能力は……」


 ふと思う、このまま正直に自分の能力について教えていいものか。

 この国の重要人物だけが集まっているであろうこの会議場、しかし、俺の意図しない勢力にまで情報がいかないとは限らない。

 何より自分自身が全ての能力を説明できるわけではない。

 説明をするにしても全て口で説明するのは難しいなので、百聞は一見にしかず。


武器転チェンジウエポン


 俺は、最初に渡された剣をどこからともなく取り出す。


「武器と防具の換装だ。

 その場に応じた装備になることができる」

「なるほど、他に特別な能力はあるか?」

「いや、特にない」

「例えば強力な魔法を使えたり、力が強かったりしないのか?」

「さっき行った以外は見ての通りだ」

「そうか」


 会議参加者全体的に落胆の色が見えた。

 他の勇者たちはおそらくもっと強力な能力を得ていたのだろう。

 いや、もしかするときっちり自分の能力を伝えていたのかもしれない。


「王よ、勇者様も自分の能力は完全に理解していない可能性がありますのでまたの機会に聞いていくのがよろしいかと」


 ボールトンさんがフォローを入れてくれる。

 しかし、過去の勇者も隠していたとなるとよっぽど俺の能力が弱いことになるのだがな。


「ふむ、そうか。

 一先ず勇者様にやってもらうことを決めようか」


 王様がそう言うと会議場は一気に騒がしくなる。

 俺の配置の奪い合いなのかと思いきやどちらかと言うと押し付け合いのようだった。

 あなたの領地では盗賊がどうのあなたの領地では魔物がどうのと言ったかんじだ。

 戦力として見られていないどころか厄介者扱いだ。

 まあ、平和ボケしたおっさんがチートとも呼べない能力を貰って何とか戦えているだけだし、おっさん一人を守るために自分の兵力を割かないといけないと考えれば当然か。

 傭兵の方がよっぽど役に立つだろう。

 王家のひも付きを自分の領地に入れたくないという思惑もあるかもしれないがな。


「やはり話し合いでは決まらんか」

「毎回、こうやってもめるのか?」

「……まあ、似たようなものだな」


 この反応からするに貴族たちは歴代勇者を取り合ってきたようだ。

 まあ、強大な戦力なのだ当然か。

 若けりゃ騙しやすいしな。

 今回はその限りではない。

 ある程度結論が出たようで、場が静まる。


「私の領地、エルグリンダ領にて、勇者様のお力を発揮していただくというのはどうですかな?」

「エルグリンダ領か、なるほど、森界に近いそなたの領ならうってつけであるな」


 森界がどんな場所かわからないが、響きからして危険な場所でなったばかりとは言えども勇者の力が必要なようだ。


「勇者様はそれでいいですかな?」


 詳しく聞いたところでそこまで大きく変わらないだろうと思い首肯する。


「それでは、勇者様が最初に行く場所はエルグリンダ領に決定する。

 異論のあるものはいるか?」


 王様の問いに誰もが沈黙で返す。


「異論が無いようだな。

 他に何か伝えておきたいことがあるものはおらぬか?」


 王様が、意見が無いことを確認する。


「それではこれにて会議を終える」


 その言葉で空気が緩む。


「それでは、解散」

『は!』

「ああ、シルギット伯爵は残るように」

「はい」


 王様の言葉で会議は終わる。

 会議というより俺の能力の確認と言ったほうがいいかもしれない。


「それでは、改めて自己紹介させていただきます。

 私は、シルギット・ノル・エルグリンダ。

 伯爵としてエルグリンダ領を統治しております」

「俺はこの世界に勇者として召喚された者だ」

「なるほど、早速で不躾でありますが勇者様のお力を確認させて頂いてよろしいでしょうか?」


 気が早いな。

 まあ、伝説にあるほどらしいし勇者の力を見ておきたいと言うのは当然か?


「わかった。

 どうすればいい?」


 ここでなにかするというわけではないだろうと思い王様の方を見る。


「ボールトン」

「はっ、それでは中庭の方へ行こうか」

「中庭でいいのか?」


 シルギット伯爵が不思議そうに尋ねる。


「ああ、中庭で十分だ」

「そうか」


 表情こそ変わらないが、シルギット伯爵がいかにも落胆しているのが見て取れた。

 歴代の勇者に比べれば格段にレベルが低いのだろう。

 中庭で済むような力の持ち主でないことは明白だ。

 しかし、同時に思うことは、そんな力を持った勇者をなんのしばりもなく自由にさせているということ。

 協力すると確信しているのか。

 協力するしかなくなるのか。

 まあ、いま気にしても仕方のないことだ。


「それでは参りましょうか」


 そう言って会議室を出るボールトンさんに続いて出る。

 後ろを見ると、付いてくるのは、シルギット伯爵とその護衛らしき人物のみである。

 まあ、王様も忙しいだろうし正直見ても意味が薄いよな。

 ボールトンさんに負けるほどの実力なのだから。

 それどころかほとんどの騎士に負ける自負がある。

 そんな自負あっても仕方がないのだが、勝てる気はしないのでこれまた仕方がないのである。

 ボールトンさんと戦うことになるのかと思いながら皆さんに合わせて移動する。

 しかし、気が重い。

 何所まで見せた方が良いのか。

 勝つ必要があるのか。

 そもそも勝てるのか。

 そんなことを考えているうちに中庭に到着する。


「では、始めるとしよう。

 勇者様前へ」


 王様の言葉に応じて前へ踏み出しある程度進んで止まる。

 ボールトンさんもこちらに来る。


「勇者様のお力しかと拝見致します」

「勇者様、全力で来てくだされ」

「分かった」


 ああ、もうなるようになれ。

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