8話 神殿の森
オモチャ箱みたいにぐちゃぐちゃした中から探してます。
整理中、いや供養中
既に準備は終わり王様の居ると言う広間まで案内される。
能力の加減で支度が簡単になっているのも良いな。
広間に付くと魔法陣の周りにいた人たち以外の人物がそろっていた。
「お待ちしておりました勇者様」
第一声をあげたのは、王様だった。
「お待たせしてすみません」
「いえいえ、たいして待っておりませんのでお気になさらずに、早速ではありますが、本題に移ってよろしいでしょうか?」
「はい」
「では、これから勇者様に行ってもらうところを説明いたします」
「はい」
「勇者様には専用の武器が森の遺跡にて手に入ると伝えられております」
「はい、その専用の武器を今日は取りに行くということですか?」
「その通りです。
先日行って頂いた洞窟で覚醒した能力に適応した武器になるそうです」
「なるほど」
専用武器か、一体どんなものになるのか。
万能職種の能力から考えると、……わからん。
万能武器とか?
まさかね。
「森までは馬車で送らせていただきます。
今日は大した戦闘にならないと思いますのでご安心下さい」
「分かった」
まあ、戦わせるために呼ばれたのだから戦うことに否やはない。
女神様がいなかったらどうだったかは分からないが、まあ、仮定の話をしても無意味だ。
さっさと専用武器とやらを手に入れようか。
「では、昨日に引き続きボールトンとシスターエリアが案内致します。
頼んだぞ二人とも」
「はっ!」
「承りました」
「では、専用武器を手に入れるのをお持ちしておりますぞ」
「分かりました」
そう言って俺は玉座の間を後にする。
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馬車に揺られること一時間、慣れない揺れに気分を悪くなってきたところだったので助かった。
馬車を出るとそこは森の入口というのがしっくり来るものになっていた。
森が続いているはずの場所で不自然なほど木々が避けている一本道、これが勇者専用武器に続く道か。
「では、参りましょうか」
「ここからは歩きですな」
そう言われたので馬車から降りる。
「森に入ると霧が出てきますが、ご心配なさらないで下さい」
「分かりました」
シスターエリアの言葉に首肯する。
今回は戦闘はないとのことで、勇者の姿のままだ。
少なくとも今日は、見習い騎士になることもないだろう。
しばらく歩き続けると霧が晴れてきた。
それと同時に大きな建物が見えてきた。
パルテノン神殿を彷彿とさせる柱が特徴的な建物だ。
建物の真ん中に入り口がありそれを挟むように二人の人物が向き合っているそんな彫刻が施されている。
「ここから先は勇者様のみ入ることができます」
「我々は入り口にて待機ですな」
どうやらこの神殿の中に勇者専用武器があるようだ。
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神殿の中は薄暗く感じた。
しかし、視界を確保するには問題はない。
神殿の奥へと続くであろう門がある。
「でかいな」
門には竜のような何かとそれと対峙するように一人の人が描かれている。
人のほうが圧倒的に小さいのだが、それでも竜のほうが苦戦しているように見える。
小さいものが大きいものに勝ってしまいそうななかなかに理不尽な装飾だ。
「これ開けれるのか?」
門は人一人の力では動くように見えない。
「行き止まりか?」
俺は、門に軽く触れてみた。
すると門が少しずつ奥へと動き出した。
「なるほど」
これなら簡単に入れる。
しかし、触れるだけで開くのであれば誰でも入れるのではないだろうか?
あるいは、外の二人がここに入ろうとしなかったことに何か理由があるかもしれない。
門が開くと中には一筋の光とそれに照らされた剣が台座に刺さっていた。
「勇者専用の剣か」
台座まで歩き剣に手を掛ける。
剣は妙に手に馴染むように感じた。
「なるほど、これは専用と言われてもうなずけるな」
まるで何年も何十年もこの剣を手にしていたような錯覚を感じた。
剣を握り引き抜く。
抜いた穴から光が飛び出してきた。
その光はくるくると飛び回ったかと思うと台座の上に戻ってきて人の姿を形どる。
幼い女の子の姿になると光が弾けるように四散しまるでそこに最初からいたかのように少女がそこに立っていた。
「初めまして勇者様、私は女神様から使わされた天使のハニエルと申します」
可愛らしい声でペコリと頭を下げるハニエルちゃん。
それと同時にエメラルドグリーンの髪が、跳ね上がる。
「ああ、そう言えば確か十分な強さになるまで天使がお供をしてくれるって言ってたな女神様」
「むむむ、反応が薄いですね……まあいいです。
確かに私があなたのお供をする天使です」
悔し気に呟いた後、こちらの言葉に対しての返事をしてくれる。
なるほど、つまりは
「君って相当強いんだよね」
「はい、私は相当強いですよ」
頭は弱そうだけど、しかし、俺が強くなるまで付き添ってくれる存在である以上は護衛のようなものと判断して構わないだろう。
推測からそう思ったが、ハニエルの見た目からとても戦えるようには見えないのだ。
「もしかして疑ってます?」
「いや、これっぽっちも疑ってないよ」
まあ、疑うなという方が無理なんだが、ファンタジーな世界だし何でもありなんだろう。
「そうですか?
なら良いです」
「ところでいろいろと質問をしたいのだが、大丈夫か?」
「はい、どんとこいです」
ちょっとだけいや、かなり心配だなぁ。
「じゃあ、まずはじめにこの勇者専用装備ってのはなんだ?」
「勇者にしか装備できない対魔王決戦兵器です」
「対魔王? 対破壊神ではないのか?」
「破壊神には効き目はありませんね」
「じゃあどうやって倒すんだ?」
「一先ず魔王の力を貴方の力にしていただく必要があります。
なので、破壊神のことはひとまず置いておいて下さい。
当面は魔王と対峙する時のために前準備を行って下さい」
話の流れを変えられたが、これ以上破壊神の事を聞いても答えてくれなさそうだ。
「わかったよ。
まあ、当然戦う以上体を鍛えるが、俺が戦闘に参加したところでうまく立ち回れるとは思えないんだが」
「そこらあたりの心配はいりません。
まず、ルストレア王国でそれなりに訓練をして動きを体に覚え込ませますから」
「いや、幾ら俺が訓練したところで経験で負けるだろ。
何より、戦闘は心の持ちようが大事だろ。
正直言って、自信は殆ど無いんだが」
「そこらあたりは大丈夫でしょう。
実際のところ試練の洞窟はクリアなさっているでしょう?」
「守られながらだけどな」
「それは仕方が無いことです。
戦闘になれた人が一人で入る分にはあまり危険度は高くないですが、戦闘未経験者が一人で入るととても危険ですからね。
ですが、あの洞窟の一番重要なのは覚醒を施す鏡の間ですから。
鏡の間で覚醒することが出来れば戦闘を一度も出来なくても問題ないのです」
なるほど、正にチュートリアルのようなものだな。
「ところで、さっき魔王の力を俺のものにすると言ったよな」
「はい」
「それは具体的にどうするんだ?」
「それは、簡単です。
魔王を倒せば自動的に貴方の力になります」
こちらが何かする必要は戦闘のみと言うわけか。
「魔王の力ってのはどんな物なんだ?」
「魔王を確認するまでは分からないですよ」
「魔王の能力次第というわけか」
「はい」
「成る程、わかったよ。
で、この後どうするかは、引き続きあの人達に任せればいいのか?」
「はい、当分の間はそれでいいです。
もし、必要なのであれば私が手を出したりしますし大丈夫ですよ」
「具体的には?」
「秘密です。
悪いようにはしないので安心してください」
かわいらしい笑みを浮かべる天使な少女、これのどこにどれほどの力を秘めているのだろうか?
しかし、相変わらず俺の必要性が理解できない。
天使がいて強いのであれば、わざわざどこの誰ともわからない俺を使う必要なんてあるのだろうか。
なぜ俺なのか、それが分からない限りいつ見限られるかわからない恐怖がある。
とはいえ、なるようにしかならないのは確かなんだろう。
天使との話が終わった俺は、武器を持ちながら外へ出る。
『武器転』で素手にする。
報告するときにまた出せば良い。
一応『武器転』で出せる武器を確認すると万能武器の名前があった。
……そのまんまかよ。