11話 動向
ごめんなさい、しょうもないダジャレを書いて本当に申し訳ないと思っています。
なので、本当に幼虫を飯にしないで下さい。
供養は続けます。
気が付くとベッドの上だった。
何をしていたのか少しぼんやりと考えて、ボールトンさんと模擬試合を行ったことを思い出す。
しかし、肝心の試合内容が全く思い出すことができなかった。
とはいえ、今この状態を見ればどうなったかは容易に想像がつく。
顎に違和感があり体の他の部分が大した怪我がないことから察するに下からの一撃を顎に当てられて気絶したらしい。
一撃で倒されたということはつまりボールトンさんとの戦いは完敗だったということなのだろう。
いくら決定事項とは言え出張先のエルグリンダ領のシルギット伯爵としてはあまり見ていて気持ちいいものではなかっただろうな。
勇者としての力を期待していたのに熟練とは言え一兵士にあっさりと負けるというのは心証が悪いだろう。
とはいえとりあえずこれからやれることをやっていくしかないよな。
やっぱり素振りとかした方がいいかな。
そんなことを考えていると横から声がかかる。
「意識がはっきりしてきたようですね。
体調は問題ないですか?」
声に反応して顔を向けるとシスターエリアが座っていた。
「問題ありません」
「そうですか。
それはよかった。
目が覚めたら会議室にお連れに言われているのでつきてきて頂いてもよろしいでしょうか?」
「分かりました」
シスターエリアに促されてベッドから立ち上がる。
「それでは、先導いたします」
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会議室には、アグニス王、ボールトンさん、シルギット伯爵が待っていた。
「勇者様をお連れしました」
「ご苦労、下がってよいぞ」
「かしこまりました」
俺を案内してくれたシスターエリアが下がる。
俺はそのまま会議室に入る。
「どうぞ」
メイドの一人が椅子を引いてくれる。
一言お礼を言い座る。
俺が座って話が聞くける状態になるのを確認するとシルギット伯爵が口を開く。
「それでは、前置きはなしで本題に入ります。
明日勇者様には我が領に来ていただくことになります。
そして、冒険者ギルドに登録していただきます」
「冒険者ギルド?」
「はい、魔物を駆除してその素材を卸している組織です。
その性質上、魔物から人々を守る組織だという人もいるくらいです。
まあ、半分以上はギルドの宣伝でしょうが」
少し皮肉を含めるあたりあまりシルギット伯爵のギルドに対する心象はよくなさそうだ。
しかし、そんなギルドに登録してほしいとはどういった理由があるのだろうか?
「そのギルドに入る理由はなんですか?」
「勇者様には、我が領にて魔物討伐によって実戦経験を積んでいただきます。
そして、魔物討伐をすれば魔物の素材が手に入るのでそれをギルドに卸す形になります」
「シルギット伯爵が買うことはしないのですか?」
俺の言葉にシルギット伯爵は首を横に振る。
「ギルドを通さない魔物素材の売買は違法です。
なので魔物を売るにはギルドに卸していただかなくてはなりません。
ですがギルドで魔物の素材を卸すにはギルドに登録していない人にはできないのです」
なるほどそれは冒険者ギルドとやらはかなりの権力を持っていることになるな。
魔物の素材だけとはいえ売買権を独占しているのだから。
そんな思考を見抜いたのかシルギット伯爵はため息を吐いてそのことについて言及する。
「魔物の駆除を一括して管理するためです。
一つは魔物討伐の報酬の取り合いを防ぐため
一つは必要以上に魔物を狩りすぎないようにするため
そして、魔物の素材の中には厄介な性質のものもあるためそれらの管理の為にもそうせざる負えないのです」
シルギット伯爵はギルドの権力が大きい理由を簡単に説明してくれた。
そしてシルギット伯爵が現状に不満があることもあまり隠そうとはしていない。
「なるほど」
「他に何か聞きたいことはございますか?」
「そうですね。
ここ王都には冒険者ギルドはないのですか?」
「勿論あります。
しかし、王都では冒険者の活動する場が多くありません。
なので王都での冒険者登録は目立つのです」
「俺が目立たない方がいい、ですか」
「まあ、端的に言えばそうなりますね。
勇者様は、この国の最大戦力になり得る存在です。
可能な限り秘匿したいのです」
「なるほど、分かりました」
「他にはありますかな?」
「以上です」
「それでは、明日は早いので私はこれにて失礼します」
シルギット伯爵は、そう言うと立ち上がり一礼してその場を後にする。
「勇者様は、この後何かしたい事はありますかな」
ボールトンさんの言葉に頷く。
「新しい武器を試しておきたいです」
「分かりました。
それでは修練場へ案内するように」
ボールトンさんの言葉に一人のメイドが頭を下げて、かしこまりました。
と答えた。
「勇者様」
アグニス王が声を掛けてきた。
何だろうか?
「はい」
「歴代勇者様方は、何かしらの願いを神に聞いていただく代わりにその力を我らに貸して下さると聞いております。
勇者様は、いったいどんな願いを伝えなされた?」
質問の意味を吟味してその上で答えた。
「女神様との結婚を」
その言葉に王は驚きの表情を見せた。
「他に何かありますか?」
「い、いえ」
「ではこれで」
王に頭を軽く下げその場を後にする。