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なろうラジオ大賞4

星座の道しるべ あの星の下に私の家族がいる

掲載日:2022/12/18

 夜。

 満点の星。


 空に浮かぶ星々を目印に、小さなボートが海原を進む。


「ネノ、眠らなくてもいいのか?」


 父が優しく声をかけてくれた。

 そのたくましい身体には部族の長であることを示す入れ墨。

 幼いころからずっと見ていたその身体。


 怖い夢を見た時は、父に抱きしめてもらいながら眠っていた。

 もうすぐそれもできなくなると思うと、ちょっとだけ胸が苦しくなる。


「うん……星がとってもきれいだから」

「星は神々が俺たちに与えてくれた道しるべだ。

 どんなにつらくても夜空を見上げれば星がそこにある。

 俺たちの島が何処にあるのかも分かるぞ」


 父はそう言って優しく微笑んだ。


 私はこれから見知らぬ島へ行って、そこに住む部族の長の息子と結婚する。

 ずっと前から決められていた取り決めで、私はそこへ嫁ぐために育てられた。


 島と島とは、目で見えないくらい離れているが、星座の道しるべをたどれば必ずたどり着くことができる。

 古くから受け継がれてきた部族の技。


「うん……」

「やはり寂しく思うか?」

「ううん、星がお父さんたちの場所を教えてくれるから。

 寂しくはならないよ」

「そうか、よかった」


 父はまたほほ笑む。

 でも、少しだけ寂しそうに見えた。


 私たち家族はどんなに離れていても、星と星とで繋がることができる。

 家族のきずなが途絶えることはないのだ。


 それから、夜が明ける前に目的の島へたどり着けた。


 島に住む部族は総出で私たちを迎え入れてくれた。

 真ん中に立つのは長とその息子。


 私の結婚相手である彼には、すでに入れ墨がほられている。

 父とは違う、独特な柄。


 あどけなさを残す彼は少しだけ緊張しているように思えた。


「よく来たな、兄弟。

 さっそく婚姻の儀をあげよう」

「ああ……」


 長と腕を組んで挨拶を交わす父。


 それから島を挙げての宴が開かれた。

 朝から晩まで、途切れることなく、島に伝わる歌が奏でられる。


 私は結婚相手と並んでその様子を眺めていた。

 ぼーっとしていると、そっと私の手に彼の手が重なる。

 私がほほ笑むと、恥ずかしそうに顔を背けた。


「じゃぁ、気をつけてな」


 その日の夜。

 父は故郷の島へと帰る。


 船を出す父を私の新しい家族がそろって見送ってくれた。


「娘を頼んだぞ」

「……はい」


 父の言葉に力強く返事をする夫。

 彼となら上手くやっていけそうな気がした。


 父は船を海へ走らせる。


 星々が浮かぶ空の下。

 一艘のボートが海の上を泳ぐ。


 その姿が見えなくなるまで、私はずっと見守っていた。


 ずっと……ずっと。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 詩的な情景、美しい夜が目の前に立ち上がってくるような、いい話ですね。 主人公と許婚の青年が、ともに素朴で初々しい印象なのも、物語を爽やかにしています。末尾の締め方もシンプルながら「これしか…
[良い点] 素敵なお話ですねー。星空を見て航海をする。 日中だと太陽しかない道標がないけど、月のない夜ほど星が正確に導いてくれる♡ 暗いほど安全いう逆説的な設定に、古代(?)のロマンを感じます。 地…
[一言] すごく好きな作品です。 余白の使い方がとても素敵ですね。 小説を書いていると、ついつい何でも詳しく書かなきゃと思いがちですが......(私だけ?;) こちらは、作品の世界観に必要な言葉が、…
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