悪役令嬢とヒロインのお茶会
思いついたので書いてみました。温かい目で読んでいただければ幸いです。
「お呼び立てして申し訳ないわね、カトリーヌ男爵令嬢」
「い、いえ……、招いていただいてありがとうございます。エリアージュ様」
緊張した面持ちでやってきたカトリーヌ男爵令嬢を私エリアージュは笑顔で応対する。
「貴女とは一対一で話して見たかったのよ、学園だと周囲の目もあるし、なんせ邪魔な声も入るから」
「は、はい……」
「心配しないでいいのよ、別に変な物は入っていないから」
ここは私の家の中庭である、カトリーヌ嬢からしてみれば敵陣みたいに感じるだろう。
カトリーヌ嬢は警戒心を持ちながらも用意した紅茶とお茶菓子を口にする。
「美味しいですね、この紅茶」
「気分を落ち着かせる成分が入っている茶葉が入っているのよ、少しは和らいだかしら?」
「はい、そのエリアージュ様にお呼び出しされる理由はわかっておりますので……、殿下の事ですよね?」
向こうから話題を振るとはカトリーヌ嬢は度胸がある、私はちょっと感心した。
「えぇ、最近貴女と殿下が二人きりでいる噂を聞いてね、一応私は殿下の婚約者なのでどのような関係なのか聞いておこうと思ってね、貴女は殿下の事をどう思っているの?」
「……私は殿下、オリアット様の事は好きです。王太子であるのに私みたいな男爵令嬢にも気さくに声をかけて色々相談にものってくださいます」
うんうん、気持ちはわかる。私も最初の頃はそうだった。
ただ、暫くして殿下はご自分の立場を理解してないだけだと気づいた。
気さくと言うけどただ単に注意力散漫だけなのだ。
「つまり殿下の事が好きなのね?」
「はい……、勿論エリアージュ様とのご関係は知っております」
「殿下は私の事『口うるさい』とか『身分しか価値がない』とか『面白味がない』とか散々言っているでしょう?」
「いや、それはその……」
「いいのよ、言われているのはわかっているから。私も殿下の事は愛してない、というか婚約自体本当は無くしたい、と思っているのよ」
「えっ!?」
「殿下は外面は良いけど性格は最悪よ。私は殿下から優しい言葉なんてかけられた事なんて無いし常に見下されてきたわ、長年ずっとそんな態度で接してきたら愛情なんて生まれる訳が無いわ」
「……」
「だから、私はいつでも婚約者の座は譲るつもりなの、別に貴女と殿下がどんな関係になってもどうでもいいのよ」
これは強がりじゃなくて私の本音だ。
「でね、私も王妃教育を受けてきて人を見る目だけはある、と思っているのよ。大体は感情的な所はわかるつもり。カトリーヌさん、貴女本当は殿下の事は愛してないでしょう?」
「っ!? そ、そんな事は……っ!?」
「貴女が殿下に向けている視線には『恨み』が篭っているわ。いや、殿下だけじゃない、殿下の取り巻き達に対しても」
私はそこで一口紅茶を飲んだ。
「なんでそこまで憎んでいるのか、最初はわからなかったけど『ある事』を思い出したのよ、私がまだ幼い頃、殿下とお茶会をしていた時にあるメイドが転んで殿下の服を汚してしまったのね、殿下は激昂してその場にいた騎士に命令してメイドを斬ったのよ。私、ショックを受けて暫く寝込んだのよ、『殿下はミスをしたら切り捨てる方なんだ』て。ちょっとした恐怖心を植え付けられたわ、その後にお父様にお願いしてそのメイドの葬儀に参加して弔いの花をささげさせてもらったのよ。その時、カトリーヌさん貴女もいたよね?遺族側に」
私の話に俯きながらガタガタと震えていたカトリーヌ嬢だったけど私の問いかけにピタッと止まった。
顔を上げると殿下に向ける可愛げのある表情ではなかった。
「……殺されたメイドは私の姉でした。我が家は貧乏で姉は王宮に出稼ぎで働きに出ていました。それがある日突然無礼討ちにあって遺体となって帰ってきて……、私達家族は泣き崩れました。そして王家に対し怒りを覚えました」
「それで復讐する為に殿下に近づいた、と」
「……あの後、両親も死に孤独になった私はある方に拾われて暗殺術を身に付けました。本当はエリアージュ様には公の場で殿下に断罪してもらい消えていただく予定だったんですが今の話を聞いて敵ではない事がわかりました」
「それでどうするつもり?」
「ちょっと早いですが復讐を実行いたします」
その目は決意している。
「そう、私が貴女を止める義理は無いけど……。関係者の一人として謝らせてほしいの」
私はそう言って頭を下げた。
「あの現場にいて私は殿下を止める事が出来なかった。私が一言言っていれば貴女のお姉さんは死ぬ事が無かったかもしれない。婚約者として殿下の愚行を止められなかった私にも責任があるわ、ごめんなさい」
「エリアージュ様、ありがとうございます……」
「償いにはならないかもしれないけど……、復讐を実行した後の身柄は我が家が保証するわ」
「そこまでしていただかなくても……」
「いいえ、貴女はお姉さんの分まで幸せにならなきゃいけないわ」
私は彼女の肩を強く掴んだ。
「死ぬなんて思わないで、私は貴女の味方でいたいの」
「エリアージュ様……」
私とカトリーヌ嬢との二人だけのお茶会は終わった。
その後、殿下は不慮の事故に遭い亡くなってしまった。
馬車で遠出した際に転落事故に遭ったそうだがその遺体には首を締められた跡が残っていたそうだが真相はわからずじまい。
カトリーヌ嬢は殿下の死後、忽然と学園から姿を消した。
その代わり、我が家には腕のいい護衛が1人入ったのは別の話だ。




