スライム
それは湖から這い出て地面の上に完全に姿を現した。横幅20センチくらい、縦は15センチくらいの球体で薄い水色、体は向こうが透けて見える。なんか花の上でじっとしたまま動かない。しばらくした後こちら方面に向かってゆっくり移動してきている。それがじっとしていた場所にあった花は無くなっていた。
「あれは何?」
[あれはスライムです。]
「あれは生き物?花を食べたの?」
[あれは毒に耐性のある生き物です。花はスライムが消化しました。花だけではなく気に入ればなんでも消化します。]
気に入ればなんでも消化するのか。私はしばらく考えてリュックの中からゴミ箱を出しスライムの進行方向においた。ゆっくりとスライムがゴミ箱に近づいてくる。やがて視界?にゴミ箱が入ったのか、ゴミ箱に触れる前にスライムの進行が止まった。じっとゴミ箱を観察しているように見えるスライム。しばらくしてゴミ箱に触れた。だんだんゴミ箱がスライムの中に消えていく。私はそっとゴミ箱に近づいてその様子を眺めていた。やがてゴミ箱は中身とともに全てスライムに消化された。スライムがゴミ箱を消化している間、私はスライムを観察していた。生き物だという事だが目、鼻、口は見当たらない。
「どうやって周りの状況を把握しているの?どこで消化しているの?」
[スライムは気配察知能力が優れています。好みの食べ物は体内に取り入れ体内の消化液で溶かし吸収します。」]
ゴミ箱を全て消化したスライムは3回ほどその場でプルプル震えてからゆっくりこちらに近づいてくる。心なしか色が濃くなっているような気がする。私はリュックからランタンを出して近づいてくるスライムの前にかざした。
「ゴミ箱は気に入った?良かったらこれもどうぞ。」
スライムの前にランタンを置いた。スライムは何度もプルプルした後ランタンを消化し始めた。
「顔はないけどなんかかわいいな~。」
やがてスライムはランタンも消化し終わった。スライムの色は明らかに濃くなっている。しばらくその場でじっとしていたがやがて細かくプルプルし始めた。そして
(ポンッ!)
スライムの頭?から石のようなものが飛び出し私の足元に落ちた。拾い上げるとそれは青い宝石のように見えるものだった。そしてスライムを見ると色は元の色に戻っていた。それに目と口らしきものが確認できるようになっている。その顔?は嬉しそうで、私の前で左右に揺れながらビヨンビヨンと伸び縮みしている。
「これは私にくれたの?」
[はい。あなたはおいしいものをくれる人とスライムに認識されました。お礼に魔石をだすからあなたと一緒にいたいと言っています。スライムは気に入った人にしか顔を見せません。あなたはこのスライムに好かれました。]
うーん、ゴミを食べてくれるのはありがたいし、ペットは今まで飼ったことがないから不安もあるけど私はこの世界に知り合いもいなくて少し寂しいし、連れていこうかな。
「じゃあ一緒にいこうか。私は蓮だよ。よろしく。」
私はしゃがんで足元で左右に揺れるスライムに挨拶をした。それから辞典をしまい、スライムを両手ですくいあげ一旦テントに戻ることにした。