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ここはどこなの?
「私は辞典です…?」
浮かび出た言葉を思わずそのまま疑問気味に読んでしまった。すると辞典がまた淡く光りながら文字を浮かびだした。
[いいえ。あなたは辞典ではありません。]
それはそうだ。私は辞典ではない。あたりまえだ。
「私は誰ですか?」
わかりきった質問を思わず辞典にしてしまった。
[あなたは江川蓮です。]
辞典は私の名前を浮かび上がらせた。
「あなたは何故私の名前を知っているのか?」
[私はなんでも知っているからです。]
なんでも知っている?では聞いてみよう。
「私はなんで今、見知らぬ草原にいるの?」
辞典に文字が浮かんだ。
[あなたがエレベーターにいた時のあなたの波長とこの世界の波長がぴったり合致しエレベーターのドアという空間と空間を隔てるものが有り得ないほど絶妙なタイミングで開きあなたの意識がぼんやりとしたまま何の疑問も持たずにドアをくぐった結果あなたはこの世界に着いてしまったのです。]
「この世界って?ここはどこなの?地球じゃないの?日本じゃないの…?」
[ここは惑星テーラスのジャンポという国です。]
私は辞典に浮かんだ文字をしばらく見つめ続けた。