〜守るべき者〜
大日本帝国で最強の神薙都市という場所があった。最先端の科学や、超能力を駆使している軍人達がいた。
そこでは、軍人と悪魔の戦闘が毎日行われていた。
赤い飴玉を噛み砕き、足にブーストをかけていく。帝都の中心部にやってくると、すぐさま問題の地下鉄へとやってきた。地下鉄は真っ暗闇だった為、男は目を凝らしてよく見回す。すぐさま抜刀できるように刀を手にかけていた。黒い髪に、綺麗な顔立ち。腰に太刀を携えており黒い軍服を着ていた。それはまだ士官の者という証でもあった。
右島三蔵は、人々にぶつかりながら向かっていた。地下鉄から人々が泣きながら逃げ惑っている。血塗れの子もいれば、食われそうになっている子もいる。
無線のワイヤレスが繋がり、男の声が聞こえてきた。
『C級の悪魔が四体、場所は東京の帝都の地下鉄。応援呼びますか』
機械的な声、男はしばらく考えてから上唇を舐めて、走りながら悪魔を探していた。C級の悪魔ならば一人でも十分ではないかと考えていた。三蔵は考えていたが、考えるよりも先に口が動いていた。
「三人ばかり、応援を頼む」
『了解いたしました。一分後に到着します』
無線の切れる音が聞こえた。一匹目の悪魔を見つけた。悪魔の身体は靄がかかっており、顔は骸骨だった。口から人間の頭に齧りついて、魂を吸い取っているように見える。三蔵は抜刀をして、高く飛べないが、身体に負荷がかかると分かっていながら、物凄く足に力を入れてブーストをかけた。瞬時に背後に回ることができて、悪魔の首を斬った。
悪魔は叫び声をあげていたが、そのC級悪魔の靄が頭を掴んで、くっつけてこっちに向かってきた。相性が悪いと判断した三蔵はポケットから煙玉を取り出し、地面に投げつけた。煙が地下鉄に充満する。その間に、地下鉄にいた人々を地上に逃がしてやった。
C級の悪魔となると、暗闇は平気だが光が苦手な者が多かった。だから、地下鉄から地上に戻れば死なずにすむのだ。
三蔵も地上に戻ると、三人の軍人がやってきた。一人目の東雲文月は黒いショートカットボブにスーツの姿をしている女性だった。ショットガンを背負っており、弾丸を胸に入れている。
二人目の赤島八乙女は、白い髪に紫色のメッシュを入れて、サングラスをかけており、風船ガムを噛んでいた。スケボーを片手に持っている。もう片方の手には箱を持っていた。黒い軍服を着ている。
三人目は朝比奈傑だった。金色の短髪で前髪を真ん中分けにしていて、猫目だった。持っているものはディナーベルだった。
「さあ、悪魔退治と行こうか!」
八乙女が大声で言った。風船ガムがパンと弾けたのが合図となり、また地下へと四人は向かって行った。
三蔵が次に相手したのは、首を三メートルくらいに伸ばし、目が片方抉れていて、そこから虫が這い出ていた。身体は背中に羽がはえており、身体は猿のような感じだった。
奇声をあげながら、襲い掛かってくる。だが、三蔵は次に青い飴玉を噛み砕いて、目にも止まらぬ速さで斬り捨てた。
そのまま座り込んで、力が入らなくなってしまったようだった。
文月が相手した悪魔は空を飛んでいた。蝙蝠の翼に頭は人間の頭蓋骨で、身体はワニだった。文月は真剣な表情で、ショットガンをぶっ放していく、ショットガンの弾丸を容易く悪魔はかわした。が、その弾丸は途中で爆発して、蝙蝠の翼を怪我させる。悪魔は奇声をあげながら、空飛んで襲い掛かってくる。
「来てみてくださいよ。撃ち落としてあげますから」
言葉が通じたのか怒り狂い、真正面に突撃してきた。文月はショットガンを構えて、銃弾をぶっ放した。蝙蝠の悪魔は銃弾を今度はかわし、文月を掴んで宙へと浮かんだ。そして、壁に投げ飛ばした。壁にぶつかって、口から血が出るが、文月は口の端から流れる血を拭い、ショットガンをもう一度構えて、滑空している蝙蝠悪魔に向かってヘッドショットをした。
「まさか、壁に当たるなんて思いもしなかったです」
誰にも聞かれないように、呟いて文月は気絶をした。
三匹目は最初に三蔵が相手していた悪魔だった。八乙女は風船ガムを食べながら、スケボーに乗って、箱を構える。箱を投げ飛ばして、悪魔にぶつかった。悪魔は箱に入ってしまい、何度もかたかたと動いていたが、八乙女は風船ガムを箱の中に詰め込んで握り潰した。そこから砂がさらさらと溢れて出てきた。
「意外と俺、世界征服とかワンチャンありじゃね?」
とか余裕ぶっこいて呟いた。
四匹目の相手をするのは頭はサソリで身体はアリの悪魔がいた。王女の者が奥に引っ込んでおり、周りは何百匹もののサソリとアリの悪魔がいた。襲い掛かってくる悪魔達を見て、傑はディナーベルを鳴らした。
頭が破裂し、叫び声に近い声が聞こえてきた。ディナーベルを二回鳴らすと、槌が落ちてきて、サソリの悪魔達を潰していった。
「なんや、つまらんわ」
そう言い残して、合流するが、三蔵と文月がいないことに気付いて、二人は探しに行った。そして負傷をしている二人に気付いて身体を抱えて、元の神薙都市に戻ることにした。空間から隙間があいて、女性が言った。
「お疲れ様です。こちらへどうぞ、治療をするので」
神薙都市のアンドロイドのメロスがそういって、案内していった。空間を閉じてコールドスリープの所に戻っていった。
三蔵と文月はしばらく休暇が必要だと知り、八乙女と傑は上層部の人間のところに行き報告しに向かった。
高層ビルの頂上の部屋に行くと、だだっ広い会議室があった。そこには金色の長髪の白い軍服を着た女性がいた。
「美影上層部、悪魔は潰してきました」
余裕そうな表情で、八乙女は言った。美影は表情を変えず、美しい妖艶な顔のまま、軍靴の音を鳴らしながら近づいてきた。
美影は重苦しい口を開いていった。
「余裕ぶっこいていると死ぬぞ」
「え?」
その言葉が意外と言いたげな表情をする八乙女に対し、傑は頷きながらいう。
「そうですね、確かに油断していると殺されますね」
「悪魔はそう簡単には消えない。悪魔がいる限り、人間の安寧はないが……、それは分かっているか?」
「分かってますよ、だから最強の俺が戦っているんでしょう?」
八乙女がそう威張って言うと、傑が突いた。だが美影の表情は変わらなかった。無表情のまま淡々という。
「悪魔と人間の抗争し始めたのは、一億年前からだ。天使からの使いで、天使が悪魔がやってきて地球侵略をすると予言してから。それから、私達の超能力が発揮されてきた。それは教科書でやったな」
「はい」
二人は声を揃えて言った。美影は悲しげな顔をして踵を返して外を見つめる。外は青く晴れ晴れとしていた。
「神はこれは試練だと言っていた。だから、私達は戦い傷つけあう。この素晴らしい世界を救うために連合も組んだ。全国が手を組んで悪魔を倒すまで戦おうと約束し合った。懐かしい思い出だ」
美影がなにを言いたいのか分からないのか、二人は小首をかしげていた。美影は一瞬口を閉じたが、また開いて言った。
「二人は長生きしてほしい。だから、自惚れないでほしい」
「いやいや、だって俺は! この世界の陸将になるのが夢っすから!」
そう満面の笑みでいう八乙女に呆れてものが言えない傑。
「報告してくれるか」
「悪魔四体死滅の確認と、負傷者二名出ました。国民の怪我は百五十名くらいだと思われます」
傑は表情一つ変えずに言った。美影は振り返ることなくいう。
「国民の怪我人は、機械で調べればいい。超能力者が足りない今、二名も負傷者が出たのは痛手だ」
二人は無言になった。
「帰っていいぞ」
二人は「失礼しました」といって、部屋から出てて行った。
八乙女は悔しそうに「なんだよ! あの言い方!」と怒っていたが、傑は冷静に答えた。
「お前は自信過剰すぎる、確かにお前の力だと強いかもしれない。だが、俺達よりも上がいるということを忘れるな」
「分かってる!」
新しいガムを食べながら八乙女は悔し気に言っていた。傑は肩を竦めてやれやれと呟いていた。医療室に入ると、三蔵と文月が目を開けているがぼんやりと空中を見つめていた。疲れ切っている表情だ。
「若いっていいですよね」
「お前達も俺も若いだろ」
そう突っ込まずにはいられなかったのか、三蔵はそう言い返していた。八乙女は文月の顔を覗き込んだ。
「よ、文月ちゃん」
「あ、ナルシスト」
「誰がナルシストだ! ゴラァ!」
「お疲れ」
「ありがとう」
そう会話を交わして、ほっと全員は一息ついて、普通の日常に戻って安堵感でいっぱいになった。