第9話 新しい町づくり その2 &妖鬼族との合流
読むのが難しい漢字にはルビを振りました。
結構大変でした。
妖鬼族は避難してきたばかりで、衣食住の確保も満足に出来ていない状況であった。
妖鬼族が、俺の提案を飲むことは目に見えていたが、強制はできない。
俺は、町の場所を伝え、その気があるなら町へ来るように言った。来る者は拒まず、去る者は追わずの精神なのだ。
それに、10日に一度はヒュドラがやってくるので、そろそろ町へ戻らないと不味い。
俺達の町から妖鬼族の避難場所に到着するのに、黒豹族に乗って4日を要しているのだから。
次もヒュドラには岩塩の洞窟へ連れて行ってもらい、ドワーフの街で岩塩1袋がいくらで売れるのかという調査を行う腹積もりなのである。
仮に、妖鬼族がすぐに俺達の町を目指しても10日はかかるだろう。
それまでには町へ戻ればいいだけの話なのだ。
帰り道、湿地で竜種型の人間の様な魔獣に囲まれた。
イメージとしては、蜥蜴男と言った感じであろうか。手、足には水かきがあり、槍のような武器を持っている。
この辺りを縄張りにしている魔獣なのだろうか。
念話で、俺に、部下になれと言ってきたので断ったら、襲ってきたので、とりあえず雷精霊トールを召喚して撃退した。死んではいなかったようだが、確認はしていない。
しかし、この事が原因となり、後に問題が起こることになるのであった。
妖鬼族の元を去ってから4日後、予定通り町へ辿り着いた。
そして、実はゴブリン達のリーダー格のゴブリンには、呼びやすいように名前を付けていた。
その名も「ゴブリ」である。決して、ゴブリンのリーダーだからという訳ではない。
その他にも、4匹のゴブリンには名前を付けていたのである。名前は、「ゴブイチ、ゴブゾウ、ゴブノン、ゴブヨシ」である。
この5匹を中心に、200匹程となったゴブリン達を纏めてもらうことにしたのである。
今回も、俺がいない間はこの5匹に町のことは任せていた。
俺が居ない間の報告を受けたが、特に問題なく、工房は完成し、順調に町づくりは進んでいるとのことであった。
さて、ヒュドラのエサを用意しておかなきゃなと思い、狩りに出ることにした。
しかし、ヒュドラのエサも、いずれは黒豹族なり、他の仲間なりに任せても良いのではないだろうか?
黒豹族も成体になれば、体長5mまで成長するであろうし、妖鬼族が来たら彼らに任せるのも有である。
今のところは、俺が準備するしかないのだが。
森に入り、獲物を探していると変なスライムを発見した。
何かしらの魔獣の糞尿に集っていたのである。
下水道施設で飼うとなれば有用そうだなと思ったが、今回の目的はヒュドラのエサであるので放っておく。
今回は、5メートルはある大きな猪のような魔獣2体に遭遇したので、こいつに決めた。
「風刃の嵐!」
「ズババッン!!」 「ギィヤー!!!」
こうして、今回も無事にヒュドラのエサを確保することが出来たのであった。
俺は、ヒュドラに肉を与え、ゴブリンと共にヒュドラの背に乗せられて山岳地帯の岩塩の洞窟へ行き、岩塩を10袋程採取し、洞窟近くで夜を過ごし、翌日、ドワーフの街への入り口である洞窟前まで運んでもらった。
ヒュドラには、俺の町に戻り、肉をもらうようにと伝える。
ドワーフの街では、市場に行き、岩塩を売ることにする。俺の町までの帰りは、歩きで帰ることにした。
ドワーフの街の市場は、活気に満ち満ちており、行きかう人の数も多い。俺とは、そんな中で岩塩を売り歩く。
(塩~!塩は如何ですかぁ!?)
(ッ!! 塩下さい!!!)
(まいど!ありがとうございあーす!!)
こうして1日掛けて、岩塩1袋が大体金貨70~80枚で、全部売れた。
手元に残ったのは、金貨725枚、銀貨218枚(銀貨10枚で金貨1枚と同じ価値である)。判ってはいたが、この世界では塩は貴重な物らしい。
海から遠い内陸の土地だし、旅をするには危険な魔獣や悪魔等が出現するのであるし、鉄道の様な輸送手段も無いので仕方がないと言えば仕方がない。
今後も、岩塩は資金源の一つとして欠かすことの出来ない物となりそうである。
俺は、ゴブリンと共に歩いて町へ帰る。
ドワーフの街から、俺の町まで歩いて3日ほどかかる。
今度、今回稼いだ金貨で、空間魔法を使用できるドワーフ族に、町を作るために必要な建設資材なんかを買ってきてもらうことにしようと思う。
出来れば、何とかして俺の町に来てくれるドワーフを増やして欲しいものだ。
俺の町に、上下水道施設を整備するためには、配管工事なども必要となるため、もっとドワーフの製鉄技術が必要になるからだ。
それはそうと、俺が最近ヘパイストスを召喚しないのには訳がある。
実は、ヘパイストスは、工房で作業する際の炉の温度調節の手伝いをしているのだ。その他にも伐採木の乾燥をしたり、町の警護をしたりと、結構忙しいのだ。
本当に、ヘパイストスが仲間になってくれていて良かったと思う俺なのだった。
なので、戦闘で召喚するのは専らトールばかりなのは仕方が無い。
早ければ、俺が町に戻ってから2~3日で妖鬼族がやってくるかもしれない。
そう考え、のんびりと旅路を楽しむ。
やりたい事は山ほど有る。しかし、町づくりは一朝一夕には進まない。
今は、今できることをやるだけなのだ。
3日後、予定通り町に戻れた。
その足で、工房へ向かい、ブロックとエイトリに黒豹族に乗ってドワーフの街へ行ってきて、建物や上下水道施設の資材を購入してくるように依頼して、金貨700枚を渡した(なお、領収書もきちんと貰ってくるように念を押したのは言うまでもない)。
また、出来れば俺の町に来てくれるドワーフを5名ほど追加できないか兄のアンドヴァリに相談して来るようにも依頼した。
さて、取り敢えず他に今できることをやろうと思う。
まずは、霊薬草が採れるような場所を探すこと、それに例の糞尿に集っていたスライムの確保である。
俺は、ゴブリン達を広場に集めた。
(皆、聞いてくれ。実は、妖精が沢山住む場所には霊薬草という草が生えているらしいんだが、その霊薬草から回復薬が作れるらしい。皆の怪我も治せるし、俺達の町を作るにあたって、資金源となりそうだから、そういう場所を見つけたら教えて欲しい。
それと、この前、森で狩りをしているときに魔獣の糞尿に集っていたスライムを見たんだが、下水道施設で使えそうだから、見つけたら捕まえてきて欲しい。
皆も日々の仕事で忙しいと思うが、手が空いた時で良い。よろしく頼む。)
俺は、こう言い一先ず体を休めるために、家に帰る。
ああ、俺の家も早く建て直してもらいたいものだ・・・。
しかし、まだまだ先のことになりそうである。
翌日、ヒュドラの為の肉を準備する為、森に狩りに出かける。
今回は、大きなバイソンのような魔獣に出会った。
体長10mは有りそうなので、これを2日分としても良さそうである。獲物が大きな分、体力も相当なもので、さすがに、今回はトールも虹雷の槌を使用した。
そして、何とかトールの攻撃と俺の魔法で追い詰めて倒すことが出来た。
そして、この獲物を運ぶのには、黒豹族2頭とゴブリン達10匹で運んだのであった。
さて、ヒュドラを迎える対策も、妖鬼族が来れば万全であるが果たして来るのか来ないのか。
そんなことを考えているところに、1匹のゴブリンが例のスライムを捕獲したと言ってきた。
スライムは策に囲まれており3匹いた。
この前見たスライムに間違いない。しかし、3匹では少ないので、繁殖させたいものである。
俺は、このスライムに「スラッグスライム」という名前を付けることにした。
スラッグスライムのエサは、この町に豊富にあるのでいずれ数も増えるだろう。
下水道施設ができるまでにはまだまだ時間がかかるし、人手も足りない、時間に猶予があるのである。
そうこうしていると、妖鬼族がやってきた。
(よう!速かったな。)
青髪の妖鬼族が喋る。
(10日もかかったぜ。これでゆっくり出来るのかな?)
(町は、まだまだ完成まで程遠いから、質素な家に暫くは済んでもらうことになるけど我慢しろよ。一応食糧はあるから、その点は大丈夫だけどな。
それと、この町にはゴブリンが200匹以上、それにドワーフとオーク、黒豹族もいる。
皆と仲良くするように頼む。
それと、この町では用心棒として活躍してもらうことになるから、今日はゆっくり休んで英気を養ってくれ。)
(判った。今日はゆっくり休ませてもらおう。)
(ちなみに、明日の朝から皆を集めて紹介しようと思ってるからそのつもりで。それに、明日か明後日には一仕事頼もうと思ってるからよろしくな。)
こうして、その日の夜は更けていくのであった。