第8話 新しい町づくり
ゴブリン達の集落に到着した俺達は、まずは広場にゴブリン達を集めて、ドワーフの2人とオークの3人、それに黒豹族を紹介した。
(やあ!皆よく集まってくれた!今日は、新しい仲間を連れて来たので紹介したい。
まず、ドワーフの街からやってきてくれたブロックさんにエイトリさん。彼らは製鉄技術を持ってるから皆の武器も強力にしてくれることになると思う。
それと、オークの町からやって来てくれた、クェルクスさん、アルバさん、ボリアリスさんの3人だ。
彼らは、新しい住居を作る技術者達だ。
これから、木材の伐採等の建設作業が始まるわけだが、皆も協力して欲しい。よろしく頼む。
それと、4頭の魔獣、黒豹族も俺達の仲間になってくれることになった。皆、恐れずに接してやって欲しい。)
こうして、俺は簡単に紹介を済ませ、ゴブリン達の新しい町を作るための作業が始まったのであった。
しかし、ちょっと見ない間にゴブリン達の数が多くなっているような気がする。
どうやら、他のゴブリンの集落から続々と集まってきているらしい。
食糧事情が良いことから集まってきているのだろうと思うのだが、労働力が増えるのは良いことである。
建物の建設に使用する材木は、川の上流にある山から木を切り出して、伐採木として川に流して集落の近くまで持ってくる。そこから、黒豹族やゴブリン達が荷車で集落まで持ってくる。
そして、伐採木の乾燥も欠かせない。
そのまま使用すると反りや割れが生じてしまうので、建設用の材木としては使えなくなってしまう恐れが有る。
伐採木の乾燥には、炎聖霊ヘパイパトスが活躍してくれた。伐採木をヘパイパトスの周囲に積み上げて、2~3日かけて乾燥させるのである。
それを、オーク達とゴブリン達が加工して、建材として使用するのだ。
建物の基礎部分は、ドワーフの2人と手伝いのゴブリン達で行う。
出来るだけ自分達だけで作業できるように、ゴブリン達にも手伝わせて作業工程を覚えてもらうのである。
まずは、ドワーフ達が使用する工房と、ドワーフ・オーク達の住む家、それに続いてゴブリン達の家という順序で建てて行きたい。
何故、先にドワーフ達の工房から手を付けたいかというと、先に鉄製の斧や大工仕事で必要になる道具を作れるようにしたいからである。
そして、町づくりの拘りポイントとして、水道・下水道施設の整備及びトイレの水洗化、風呂もしくは温泉施設の建設がある。
これだけ大人数になってくると、衛生面に気を付けて、病気の流行等を無くすことはとても大事なことなのだ。
しかし、これだけ大掛かりな施設を建設するとなると、人材面、資材面で莫大な資金が必要となる。
自前で用意できる資材及び人材が有ればいいが、無ければ資金繰りを考えなければならない。
俺は、ドワーフ達が空間魔法で保存している資材の状況を確認した。
内容としては、セメントのような資材は節約して住宅10軒分、武器等を作成するための鉄鉱石等の資材は1~2年分あるとのこと。
猶予は3~4ヵ月といったところだろうか。その間に資金繰りを考えることにする。
町づくりを始めてから、2週間程経ったある日、空に大きな翼を広げたドラゴンが現れた。ヒュドラである。
以前、たまに遊びに来てもいいと言ったので、やってきたようである。
ヒュドラは、集落近くの草原に降り立ち、こちらを見ている。まるでエサを強請る猫の様な感じである。
生憎、ヒュドラにあげることができる肉も無かったので、ヒュドラには、そこで待っているように伝え、狩りに出かけることにする。
そして、その肉と引き換えに、ある頼みごとをする目論見である。
黒豹族に乗り、森に入り獲物を探す。
暫くすると、以前倒した黒い蛇と同種と思われる蛇が現れた。ただし、今回は体長7メートル程度である。
こいつで良いかと思い、雷聖霊トールを召喚する。空には黒い雲が広がり、風雨が吹き荒れる。
技の発動まで、多少時間がかかるのがネックであるが、強力な攻撃である。
「雷光の槌!」
黒い蛇は瀕死状態となり、黒豹族にヒュドラの元まで運ばせた。
集落に戻ると、ヒュドラは工房の建設現場を興味深く眺めていた。
(やあ、ヒュドラ、お待たせ。今日の分を持ってきたよ。)
(来たか・・・。頂こう。)
と言うやり取りの後、ヒュドラにその蛇を渡すと、ヒュドラは一飲みにその蛇を飲み込んだ。
(ヒュドラさんよ、頼みがあるんだが、これから10日に1回程度、ここに来てくれないか?
その度に食べ物を用意しておくから、俺達をドワーフの街やオーク達の町まで運んで欲しい。)
(・・・良かろう。その度に肉を用意してくれるならな。)
そして、その日は2匹のゴブリンと共に岩塩の洞窟まで(1時間程かかったのだが)運んでもらったのだった。
翌日に、またヒュドラに来てもらうことを約束して。
翌日、ヒュドラがやってくる。―その前に、俺達は皮袋10袋分の岩塩を採取しているのは当然である―そして、2匹のゴブリン達と一緒にオーク達の町まで運んでもらう。
次に、オークロードに会い、岩塩を渡して、10日後までに追加で3人程、家を建てる人材を都合して欲しい旨を伝える。
その要求には応じてもらえたため、すぐにヒュドラの背に乗り、ゴブリン達の集落に戻り、その日の分の肉を用意するため狩りに出たのであった。
こうして、10日に1~2回、ヒュドラに肉をあげる条件で遠方との行き来が容易となったのである。
10日後、俺はオーク達の町までヒュドラに運んでもらい、その日の内に3人のオークと共にゴブリン達の集落へ戻ってきた。そして、ヒュドラには確保しておいた肉を喰わせる。
それにしても、ヒュドラの背に乗って移動するときのオーク達の顔が忘れられない。
3人とも目を瞑って、決して目を開かないのである。
俺は、もしかしたらオーク達は高所恐怖症なのかもしれないと思うのであった。
それはそうと、新しい町を作るための資金源として、岩塩をドワーフの街で売ったらいくら位になるか知りたいものだ。
それに、岩塩を採取する際に、毎回、俺が出向かなければならないのも苦痛だ。
ヒュドラと一緒に岩塩の洞窟へ行ったので、ヒュドラも場所は把握したはずであるし、夜中に出てくる下位悪魔に対抗できる戦力さえあれば、俺が行かずとも済む。
当面は仕方ないとして、用心棒役となる部下が欲しい・・・。
そう思い、俺は、ゴブリン達を集めて、この近辺に強い種族、もしくは魔獣がいないか聞いてみた。
すると、最近、南西の方角に、額に角が生えた妖鬼族と呼ばれる種族が現れたとの情報があった。
どうやら、夜中に現れる悪魔から避難してきたらしい。
悪魔から逃れるために避難してきた種族に、悪魔からの護衛を頼むというのも変な話ではあるが、悪魔と言っても、様々なランクがある。
確認しておく価値はあるかもしれない。
仮に、上位悪魔より高位である下位魔将から逃れてきたというのであれば、下位悪魔よりも強い種族であることは期待ができるのである。
俺は、黒豹族に乗り、南西へと向かった。
途中、川幅50m以上の川があったり、2mもある大きな蟷螂の様な魔虫と遭遇したり、5~6mはある蛇と鶏を足したような魔獣―バシリスクと呼ぶことにした―と遭遇したものの、大きな問題もなく4日ほどで妖鬼族がいる場所に着いた。
妖鬼族が避難していた場所は、敵に見つかりにくい林の中であり、近くには草原が広がっているような場所であった。
避難してきた妖鬼族は、総勢50名ほどであり、最初は俺に対し警戒しているようであったが、念話で幾度かやり取りをする内に警戒心も消えていったようである。
どうやら、念話で話を聞けば、ここまで逃げてきた理由は、下位魔将を筆頭に、多数の上位悪魔からの攻撃を受けたためであるとのこと。
それだけの悪魔たちが発生するのであれば、よほど魔素力が濃い地域で生活していたはずである。
俺が、この惑星に降り立ち数千年が経っているので、その間、生き延びていることを考えると戦力はそれなりに高いのかもしれない。
俺は、妖鬼族の戦力を試すため、模擬戦をやろうと持ち掛けた。
妖鬼族は、結構乗り気で妖鬼族の中でも一際大きい大剣を持つ青髪の妖鬼族が相手をすることになった。
俺は、その辺に落ちている木の棒に魔素力を纏わせ青髪の妖鬼族と相対する。
もし、あの大剣を直に受け止めれば、魔素力を纏わせていたとしても容易く折られてしまうだろう。しかし、受け流すだけであれば可能である。
俺は、ゆっくりと歩きながら距離を詰める。
すると、青髪の妖鬼族は大剣を上段からの袈裟切り、そして左薙ぎへと繋げてくる。
俺は、袈裟切りを受け流し、左薙ぎを後ろへ軽く飛んで躱す。
青髪のオーガが、右手を前に出し魔法を唱えた。
「重力場!」
直後に、俺の体にかかる重力が増し、動きが遅くなる。
しかし、俺も魔法で応戦する。
「風刃!!」
その魔法を、大剣で受ける青髪の妖鬼族。
流石にこれ以上続けると、どちらかが死にそうである。
(もう、判ったから大丈夫。)
彼ならば、下位悪魔くらいは、充分対応できそうである。
そう判断した俺は、妖鬼族に、俺達の町に来ることを提案したのであった。
名前:ゼド・アイザック
種族:人間
年齢:32歳?
身長:181㎝
髪:銀髪
肌:白
魔法:火属性(火炎弾)
風属性(風刃、 風刃の嵐)
特技:虚無のエネルギーの残渣