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第7話 住居を求めて その2 &雷聖霊トール

 オークの町を出て2日目にドレイクとの戦闘になったのだが、その後も、日中はワイバーンやら大きな蜂の様な魔虫等が引切り無しに出てくるので、中々休むことが出来ない。

 しかも、山岳地帯であるため、足場が悪く戦いにくい。

 そして、魔素力が濃い地域になるため、夜になると、下位悪魔が集団で現れるのだ。

 焚火(たきび)とヘパイストスの周囲以外は、漆黒の闇である。暗闇に紛れて攻撃してくる下位悪魔に対して、道案内のオークと背中併せで戦う。

 こんな時は、眠らずとも済む体であることに感謝したい。

 4頭の魔獣―黒豹族と呼ぶことにした―も夜目が利くので、下位悪魔退治には役に立つ。

 明け方近くになり、一息つける状況となり、体を休める。

 道案内役のオークも、槍を肩に担いだままで座ったまま休んでいる。

 

 過酷な道のりであったが、3日目にして(ようや)く岩塩がある洞窟に着いた。

 そこまで大きな洞窟ではなく、防空壕くらいの大きさの洞窟である。

 その洞窟の天井には、塩のつららが出来ている。

 洞窟の内部全体が、岩塩で出来ており、人?の手で掘られたことによって出来ている洞窟であるのが判った。

 洞窟の奥へ進み、皮袋に砕いた岩塩を詰めていく。

 夕方になる頃には、皮袋10袋分の岩塩を手に入れることが出来た。

 これを黒豹族に2袋ずつ運ばせ、俺と道案内役のオークで1袋ずつ運ぶことにする。

 しかし、もう夕方なので、今夜は洞窟付近で休むことにした。

 

 休んでいる間に、ここに来る途中で倒した、ワイバーンの肉を火で(あぶ)って食べる。

 黒豹族に倒したワイバーンを運ばせていたのだ。

 生憎(あいにく)、塩があるのでいつもより美味しい。

 余った肉は、黒豹族のエサとして与える。

 そして、その晩は下位悪魔等は現れず、ゆっくりと休むことが出来たのであった。


 さて、明くる朝、帰り道を進んでいく最中(さなか)、空を見上げると雲行きが怪しくなって行く。

 見る見る間に、黒い雲が空一面に広がってゆき、大粒の雨と共に雷が落ちる。

 山岳地帯であるため、周囲には、雨露(あまつゆ)(しの)ぐ場所は無く、先を急ぐ。

 すると、目の前に雷が落ちた、と思ったら大柄な男性で手にはハンマーのようなものを持っている人物?が現れた。

 人間が俺以外にいるはずが無い。

 俺は、念話で話しかけた。


 (おい、お前は何者だ?)


 (我は、雷聖霊トール、雷を司る者だ。お前こそ何者だ?)


 (俺は、人間のゼド、炎聖霊ヘパイストスは俺の仲間になったぞ。お前も、俺と共に来ないか?)


 (ほう、ヘパイストスが・・・か。だが、我を仲間にする資格があることを証明して見せよ。さすれば、仲間として共に行こう。)


 トールは、そう言うと手に持つ武器(ミョルニル)を天高く振り上げた。

 すると、雷がトールの持つ武器(ミョルニル)に落ち、雷光と共に轟音(ごうおん)が鳴り響く。

 直後、トールが手を振り下ろした。


 「雷光の槌(ライジングハンマー)!」


 俺の体が雷に撃たれ、その瞬間、死んだと思った・・・。

 (ひど)い奴である。

 俺は、仲間にならないかと誘っただけなのに。

 不意打ちに近い。

 俺は死にかけた。しかし、奇跡的に身に(まと)った魔素力によるものなのか、(かろ)うじて生きていたのである。

 実際のところ、落雷で死ぬ確率は30%程度なのだ。

 俺は、ドワーフの街で手に入れていた回復薬を使った。ドワーフのアンドヴァリに手渡されたものであった。


 (よくもやってくれたな・・・。)


 そして、ヘパイストスを召喚する。


 「紅炎励(プロミネンス)起爆炎覇(アクセラレーション)!」


 ヘパイストスを中心に、半径10メートル程の円形の空間に多重積層魔法陣が出現し、直後に下から上へと爆炎が巻き起こる。

 激しい雨の中である。ヘパイストスとの相性は最悪。しかし、俺の攻撃は続く。


 「風刃の嵐!」


 無数の真空の刃が、トールの体を切り刻む。

 俺の必殺技である、風刃の強化版である。

 精霊は精神生命体である。なので、肉体を持っていないため、体を切り刻まれようとも元通り復元し、物理攻撃は無効となる。

 しかし、精神生命体であっても魔素力による攻撃、つまり、魔法攻撃は有効なのだ。

 これは、手が空いた時にヘパイストスに教えてもらったのである。

 そして、トールがこう言った。


 (これが最後になる。)


 「虹雷(エーテルブレ)の槌(イクハンマー)!」


 虹色の雷光がトールの持つ武器(ミョルニル)に落ちる。

 (ほとばし)(まばゆ)い虹色の光、虹雷エーテルブレの槌(イクハンマー)は、雷以外の6属性(火・風・水・土・闇・光)の魔素力を雷に(まと)わせ、如何(いか)なる精神生命体にもダメージを与える雷聖霊トールの最強技である。

 これを(じか)に食らえば、例え上位悪魔すら、跡形もなく消滅することは間違いない。

 直後に、虚無のエネルギーの残渣(ざんさ)虹雷(エーテルブレ)の槌(イクハンマー)を食らうことにする。

 これを虚無のエネルギーの残渣(ざんさ)で食らいつくすことが出来なければ、恐らく今度こそ間違いなく死ぬであろう。

 俺は、両手を前に突き出し、虚無のエネルギーの残渣(ざんさ)による盾を具現化する。

 トールが腕を振り下ろし、直後、俺に虹色の雷が(ほとばし)る。

 しかし、俺は生き残った。しかも、虚無のエネルギーの量が少し増えたようである。

 そして、トールはこう言う。


 (我を仲間にする資格は証明された。お前の仲間となろう。)


 トールの体は、光に包まれ小さな光となり、最後には、(うな)る雷を秘めた黄玉となった。

 こうして、俺は雷聖霊トールを仲間にできたのであった。


 (しばら)くすると、雨も上がり陽が差してきた。

 岩塩が入った袋を背負い、2人と4匹の魔獣が進んでいく。

 夕方になると火を()き、夜をやり過ごす。そして、朝日が昇る頃には出発するのである。

 岩塩の洞窟を出て2日目、帰り道の道中もワイバーンや魔虫等の襲撃を受けたが、行きで倒した数が多かったのか、然程(さほど)数は多くはなかった。

 しかし、夜になると下位悪魔が集団で現れることには変わりがなく、道案内のオークと黒豹族と共に倒さねばならなかった。

 そして、 俺達は岩塩の洞窟を出発して3日目に、(ようや)く無事にオーク達の町へ帰りついたのであった。


 オーク達の町に到着すると、オークロードがいる建物へ向かう。

 採取してきた岩塩は、10袋の内9袋をオークロードへ引き渡し、代わりに3人のオークを紹介してもらった。1人は、大工仕事の他にガラス細工(ざいく)等も出来るとのことだった。

 残る1袋の岩塩は、勿論(もちろん)自分達で使用する目的である。

 オーク達の町に到着した日、その日はオークロードがいる建物に泊めてもらうことになった。

 その際、感動したことが一つあった。

 何と、温泉があったのだ。しかも、露天風呂で、源泉かけ流しである。

 オークの町は、近くに火山があるためか、この辺では温泉はあまり珍しいものでも無いらしい。

 俺は、ゴブリン達の町にも、温泉かお風呂が欲しいものだと思うのだった。

 

 翌朝、オーク達の町を出発しドワーフの街を目指す4人と黒豹族達。

 移動は黒豹族に乗ることが出来るので、歩くよりも断然速い。

 ドワーフの街からオーク達の町へ行く際には3日ほどかかったが、帰りは2日もかからずに済みそうである。

 川を渡るのも、黒豹族に乗ったままなので、濡れるのは主に下半身だけで済む。

 ドワーフの街に着き、ブロックとエイトリと合流する。

 今度は、全員が黒豹族に乗ることが出来るわけではないので、歩く速度での旅となる。

 ゴブリン達の集落へ向かう途中、ブロックとエイトリに対し、雷聖霊トールとの戦いの際に回復薬が役立ったことを伝え、感謝の意を()べる。

 ブロックによると、どうやら回復薬は、妖精が沢山いる場所に生えている霊薬草という草の成分から抽出されるらしい。

 いずれは、ゴブリン達の集落近くでそういう場所を見つけたいものだ。

 途中で、体長4mくらいの大型の蜘蛛のような魔虫に遭遇したが、それ以外には特に問題もなく、旅は順調に進み、ドワーフの街を出てから3日後には、無事、ゴブリン達の集落に到着したのであった。

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