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第6話 住居を求めて

 ドワーフ達の街から2人の職人、ブロックとエイトリがゴブリン達の集落にやってきてくれることになったのだが、申し訳ないことに、今のままでは彼らの住居が非常に質素な作りなのだ。

 ゴブリン達の集落に来てから数年経ち、最初の頃よりも多少は家らしくなったのだが、ドワーフ達の住む家と比べると、何だか申し訳なく思えてくるのだった。

 何せ、(あし)で出来たテントの様な家や、良くて粗末な小屋の様な作りなのである。

 ということで、当面の目標は住居を新しく作り直すことである。

 とは言え、建築の知識・技術に(とぼ)しい俺には、立派な家を建てることなど出来ない。


 幸いなことに、ブロックとエイトリはセメントのような素材については詳しかったので基礎部分は大丈夫そうである。

 なお、ドワーフ達は空間魔法という魔法で色んな素材を保存しておくことが可能なのだそうだ。

 なので、セメントのような素材や、鉄鉱石等を空間魔法で保存して運ぶことができるとのこと。


 後は建築技術を持つ者がいれば・・・。


 俺は、ブロックとエイトリに、木材で家を建てることが出来るドワーフを紹介して欲しいと頼んだ。

 しかし、ドワーフは木材で家を建てることはあまりしないらしく、オークという獣人族ならば、木材を使った建築が上手だと聞いたので、オークの住む町に向けて旅を進めることになった。

 その間、ブロックとエイトリには、ドワーフの街で待っていてもらうことにし、俺はオークの住む北の山脈を目指すことにした。


 翌日、俺は、北の方角を目指して旅立った。

 初日は平原が続き、特に問題も無く進み、夜を迎えると火を()いて(からだ)を休める。

 北の山脈を目指して進むこと2日目、大きな川があったので、泳いで渡る。

 水は冷たく、渡るのにも勇気がいる。

 川幅は、またもや50メートル以上あり、雲にも届く山脈や、川岸に自生している萌えるような緑の樹木が立ち並ぶ。

 周りの風景と相まって雄大な自然を感じさせる光景である。

 俺は、荷物を濡らさないように気を付けながら川を渡り終えると、魔法で火を出して温まりながら更に進む。

 途中、体長5mほどの大きな黒豹のような魔獣と遭遇した。

 こちらを威嚇(いかく)し、今にも襲ってきそうな魔獣に対し、いつもの必殺技でも良かったが、折角(せっかく)なので炎聖霊ヘパイストスに戦ってもらうことにする。

 ヘパイストスの珠玉を投げると、ヘパイストスが召喚されて周囲に複数の青白い火球が生じる。


 「熱波閃光弾(ヒートフラッシュ)!」

 

 複数の青い閃光によって、大きな黒豹のような魔獣の(からだ)穿(うが)たれた。

 その場で、倒れる魔獣。

 俺は、空中に浮かぶ珠玉=ヘパイストスを回収し、更に旅を続けようとした。

 その時、近くの草むらから先ほどの魔獣の子どもが4頭現れたのである。

 4頭とも体長3m程度、念話で意思疎通が可能かどうか確かめる。

 

 (親の(かたき)を討とうというのか?)


 すると、4頭の中の1頭から返事があった。


 (イエ、・・・コノ世界ハ弱肉強食、強キ者ニ従イタイト思イマス。)


 こうして、4頭の魔獣を従えて旅を続けることとなったのである。

 そして、ドワーフの街を出て3日目、(ようや)くオークの住む町に辿(たど)り着いた。


 4頭の魔獣は町の外で待機させておき、ゴブリン達の集落に来てくれるオークを探すことにする。

 オークの町は山岳地帯にあった。

 そして、石畳の道路が整備されており、その道路に沿って木造の建物が建っている。

 平屋建て、もしくは2階建ての建物が多く見受けられ、驚いたことに窓にはガラスが()められている。

 これはガラス職人も欲しくなるな。

 いっその事、ゴブリン達の集落などほっておいても良いのではないかと思える状況である。

 しかし、ここに住めばここの文化と王の定めた(おきて)に従わなければならなくなるし、そもそも受け入れられるかどうかも分からない。

 自由と文明を求めるのであれば、王の居ない世界、もしくは自分が王となれる世界のほうが良いのである。

 気を取り直して、町のオーク達から情報収集を行うことにする。

 

 (やあ、こんにちは!俺は人間のゼド、ここには初めて来たんだが、この町のことを色々教えてくれないか?)


 (よそ者か、俺達の町に何の用だ?)


 (一応よそ者ではあるが、見事な建物がたくさんあるってドワーフの街で聞いたんで見に来たのさ。

 それに、俺達が作る町にもここにあるような見事な建物が欲しくってね。)


 (俺達の町の建物は見事さ。でも、見たらサッサと去れ!)


 まず、1発目はこんな感じだった。

 そう、何事もとんとん拍子(びょうし)に進んだりはしないのさ。

 次々、気分を切り替えて行くか。


 (こんにちは!俺は人間のゼドという名前の者です。ここには初めて来たんですけど、この町のことを色々教えてくれませんか?)


 ちょっと丁寧に言ってみた。


 (あんた、人間って言ったか?見たことも聞いたことすらない。そんな奴に関わる暇はない!)


 ほう、下手に出れば好き勝手言いやがって。

 俺は一旦町を出て、魔獣4頭を呼び寄せた。そして、魔獣を引き連れて町に戻り、さっき同じように聞いてみた。


 (やあ、こんにちは!俺は人間のゼド、ここには初めて来たんだが、この町のことを色々教えてくれないか?)


 (・・・、色々聞きたいんだったら、この町で一番立派な建物に住んでるオークロードと話してみたら良い。)


 さっきとは違う反応だった。

 俺は、魔獣を引き連れて町で一番立派だろうと思われる建物に向かった。

 その建物の前に立っている衛兵に話しかける。


 (やあ!俺は、人間でゼドと言う者だが、俺の話を聞いてくれるオークロードがここにいるって聞いてやってきたんだが・・・。)


 (・・・、少し待て!)


 と言い、建物の中に入っていく衛兵。

 (しばら)くすると、衛兵が出てきて俺だけを建物の中に入れてくれた。

 まあ、仕方ないだろう、魔獣だし。

 建物に入るとホールがあり、その先にある通路の先の部屋に案内された。

 部屋に入ると、木製のソファに座る一際大きなオークがいる。

 こいつが例のオークロードなのだろうと思い、(むか)いのソファに腰掛ける。

 

 (俺達の町に、家を建ててくれるオークを探しに来たんだけど、皆、(ろく)に話も聞いてくれなくてさ。思わず魔獣を連れて来ちゃったよ。)


 面倒くさいので、いきなり本題に入ることにした。


 (建物を建てるオークは何人もいる。しかし、身の安全も保障されないような場所へ行かせるわけにはいかない。それと、報酬はちゃんと貰えるんだろうな?)


 報酬と来ましたか。痛いところを突かれた。

 

 (身の安全は保障する。俺は強いからな。しかし、報酬となると今は払えるものが無い。それ以外で他に望みがあれば何でもしよう。言ってくれ。)


 完全に悪役である(笑)。

 

 (・・・じゃあ、塩だな。塩を取ってきてくれ。

 まあ、塩と言っても岩塩なんだが、その岩塩が採れる場所には強い魔獣がたくさんいてな。)


 こうして俺の仕事は決まった。岩塩採取である。

岩塩が採れる場所は、オークの町から北西に3日ほど行ったところにあるらしい。

 道案内役のオークを一人付けてくれるということで話は(まと)まり、俺は魔獣4頭と道案内役のオークと一緒に岩塩採取に向かったのだった。

 

 山を登り、山脈の尾根伝(おねづた)いに進み、下を見ると雲海が広がる。

 空を見上げると、雲一つなく太陽の日差しが心地よい。

 平地よりも標高が高いので、気温は少し低く、肌寒さを感じるくらいである。


 オークロードの話を聞くに、強い魔獣がたくさん出るというがどれほどのものなのか。

 オーク達の町を出て2日目、(しばら)く進むと、体長2mくらいのドラゴンのような生き物が10匹程度現れた。

 道案内のオークが念話で話しかけてきた。

 

 (ドレイクが出た!こいつは毒を持っている。触っただけでも死んでしまう。気をつけろ!)


 魔獣に襲われたら、4頭の魔獣(黒豹)に戦わせようと思っていたが、毒を持っているのであれば分が悪い。

 ここは俺の出番か。

 一応、念話で意思疎通が可能か試してみるが、それは不可能であった。

 4頭の魔獣には、手を出さないように指示し、その間に風刃で2匹を倒す。

 道案内のオークが、槍で1匹を相手にしている。

 そして、俺は炎聖霊ヘパイストスを召喚する。


 「紅炎励(プロミネンス)起爆炎覇(アクセラレーション)!」


 ヘパイストスを中心に、半径10メートル程の円系の空間に多重積層魔法陣が出現し、直後、下から上に爆炎が巻き起こる。

 このスキルは、強制的に範囲内の分子に加速を加え続けることによって、強制的に熱崩壊に至らせるのだ。


 残り8匹のドレイクのうち、5匹が爆炎に巻き込まれて消滅する。

 残りは3匹である。


 「風刃!!」


 「ギャー!」


 残り3匹のうち1匹を倒したところで、残った2匹は飛び去ったのだった。

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