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第23話 ホルテックにて その2

 ホルテックの街に戻った俺達は、頭を悩ませていた。

 あの悪魔が言うことを、そのまま信じていいのだろうか?

 一部の疑念が湧いていない訳ではない。

 しかし、俺が知っている事実とは辻褄(つじつま)は合っている。

 あの悪魔が言う通り、信じるも信じないも俺達次第なのだ。

 最悪の場合を想定するのは定石である。

 結果何も無ければ、それはそれで良いのである。

 俺が信じないで、他の誰が信じられるというのだろう?

 俺が信じられなければ、シャルル・ド・ホルテックも信じられる訳がない。

 しかも、シャルル・ド・ホルテックにしてみれば、他の議員を説得する必要があるだろう。

 ホルテックの街にして、どの程度の脅威であるのか?


 10万の悪魔、彼らが望むものはその生命を永らえさせるための魔素力であろう。

 魔素力より産まれ出たものであれば捕食対象となる。

 魔獣類然り、ゴブリン達然り、妖鬼族(オーガ)然り、オーク達然り。

 捕食対象でないのは聖霊力から生まれた天使、精霊、聖霊、妖精、ドワーフ等の妖精の亜種等及び俺がこの惑星に降り立つ前から存在していた動植物だけであろう。

 これらの事を総合して考えれば、オーク達にとっても十分な脅威となり得ることなのだ。

 後は、議員達を納得させることができるだけの説得材料だけなのだが。

 俺は光聖霊ヘイルダムを召喚し、念話でこう言った。


 (ヘイルダムよ、俺がこの世界の創造者であることを証言してくれないか?)


 (はい。ゼド様は、世界の始まりのエネルギー、虚無のエネルギーが(かす)かに残っております。

 これは、この世界の創造者である唯一の証拠になります。)


 (ありがとう、ヘイルダム。)


 この証言で納得できなければ、この街からの協力は得られないだろう。

 さて、シャルル・ド・ホルテックの方を見ると、ヘイルダムの神々しい姿に恐れ(おのの)いたのか、どうやら成功したようである。

 相手を、俺自身で説得できないのが悔しい限りである。


 「シャルル・ド・ホルテックさん、納得してもらえましたか?」


 「・・・ああ、(にわ)かには信じがたいが、私は信じてしまった。今すぐにどうとは言えないが議会に問うことにしようと思う。」


 「ありがとうございます。議会は何時頃になりますか?」


 「事は急を要する。明日か明後日には開けるよう尽力しよう。」


 「では、明後日、また来ますので、今日はこれで帰ります。」


 そう言うと、俺は転移魔法で町へ戻ったのであった。


 町に戻った俺は、ガラムに、転移魔法を習得した者同士で、行くことが出来る都市を増やしておくようにと指示した。

 今後、いざという時に誰もがどこの都市へも行けるようにしておくことは大事だと考えたからである。

 そして、明後日、ホルテックの街に行く時には大鬼族(トロル)を2人連れて行くことにした。


 そう言えば、ガラムには馬のような魔獣の捕獲を指示していたんだった。


 「ガラム、馬のような魔獣は捕獲できたのか?」


 「はい!今のところ5頭ほど捕獲に成功しています!」


 「その内、俺達に慣れてきたら乗って空を飛べたり出来そうか?」


 「まだ、そこまでは判りませんが、可能性は高いと思います。」


 「そうか、厩舎のようなものもいずれ必要かもな。今後も捕獲を続けてくれ。」


 「はい。判りました!」


 こんなやり取りの後、ゴブリを呼んで、町づくりの進捗と、資材の購入状況について聞いてみた。

 

 「なあ、ゴブリ。町づくりは進んでるか?資材の購入とか大丈夫?」


 「はい!町づくりは順調そのものです。資材の購入も、転移魔法でドワーフに付いてきてもらって空間魔法で運んでもらっています!」


 「なら、良かった。後は収支の状況をしっかり確認しておくようにな。」


 「はい。お任せください!」


 こんな風に外出ばかりじゃなくて、俺は町づくりも結構頑張っているのである。

 そして、ホルテックへ向かう日が来た。

 2人の大鬼族(トロル)を連れて、ホルテックへ転移魔法を使った。

 屋敷へ着くと、シャルルが出迎えてくれた。

 何故、シャルルと呼ぶようになったかと言うと、シャルルの方から


 「私のことは、シャルルと呼んでください。」


 と言い出したからである。

 まあ、名前が長いから助かるのではあるが。

 シャルルに議会の件を聞くと、どうやら色々と揉めている様で、俺に午後からの議会で証言して欲しいとのことだった。

 まさかの展開であったが、協力してもらえるのであれば仕方が無い。

 俺は、証言することにした。

 俺達は、用意された昼食を食べ、入れてもらった紅茶のようなものを(すす)り、議会の開始を待つ。

 そして、時間となり、俺は議場に案内されて証人席に座った。

 議会が始まり、議長がこう言う。


 「それでは議会を再開します。シャルル・ド・ホルテック君、発言をどうぞ。」


 「はい、会議の冒頭で話した、ゼド・セドリック様を参考人としてお招きしています。

 彼から証言をして頂きたいと思いますので、よろしくお願いします。」


 俺は立ち上がり、証言をし始めた。


 「初めまして、皆さん。ゼド・セドリックです。

 先日、シャルルさんに俺がこの街へ来た経緯を説明したんだが、それと同じ内容を今回話そうと思っている。

 まず、俺はこの宇宙の創始者である。今は、ほぼ力は残っていないが、このことは、光聖霊ヘイルダムが証言してくれる。」


 俺は、光聖霊ヘイルダムを召喚した。

 議場内にはどよめきが起こり、そして程なく静まり返った。

 

 (ヘイルダムよ、俺が、この世界の創始者であることを証言してくれないか?)


 (はい。ゼド様は、世界の始まりのエネルギー、虚無のエネルギーが(かす)かに残っております。

 これは、この世界の創造者である唯一の証拠になります。)


 そして、俺はこう続けた。


 「俺は、虚無のエネルギーで宇宙を創り、何十億年もの間、この宇宙を漂っていた。

 そして生命の息吹が感じられるこの惑星に降り立ち、この世界の大気を虚無のエネルギーで満たした。

 それは聖霊力や魔素力と言ったものに変わり、様々な生物が生まれた。

 最も、元からいた動植物はあった訳だが。

 そして、数年前に虚無のエネルギーで肉体を創り、人間の(からだ)を手に入れたのだ。

 俺は、その昔、本当に存在した人間だったため、人間の形を選んだ。

 そして、俺は、この惑星に以前人間が暮らしていたような文明的な町を作ろうと思い、仲間を探すうちに、ゴブリン達や大鬼族(トロル)達を仲間にしていった。

 そんな中、魔素力が高い地域でもない俺達の町に、上位悪魔が5人現れた。

 俺達は、力を併せ4人を倒し、1人を捕虜として拘束した。

 その悪魔が言うには、別の宇宙から来た悪魔の一人であり、その別の宇宙から10万もの悪魔の軍勢が、転移魔法を応用した技術で1年以内に攻めてくる、というものだった。

 俺の様に、別の宇宙の惑星で大気を虚無のエネルギーで満たせば、悪魔の軍勢が存在し得ることは明確だ。

 その悪魔が言うことは辻褄(つじつま)があっている。

 そして、俺は、戦力を整えるため、各方面に協力を呼び掛ける中、このホルテックの街にも訪れたという訳だ。」


 俺は、証言を終え、安堵した。

 (ようや)く、うまく説明が出来るようになった、と。

 いや、実際のところ、この説明で納得してくれる人がどの程度いるのだろうか?

 疑問は残るのだが、今できる最高の説明をしたつもりである。

 うまく行けば、次回からもこのパターンで行こう。

 俺は、議場から退室し、議会は続けられた。

 俺は、シャルルの屋敷に戻り、執事にお茶を入れてもらいながら、シャルルの帰りを待った。

 果たして議会はどう動くのだろうか。

 (しばら)くすると、シャルルが戻ってきた。

 結果は、俺達に協力してくれることになった、とのことであった。

 俺は安堵したが、どの程度の戦力となるのか等は、まだ議会で決まっていないらしく、今後詰めていくとのことであった。

 議員内閣制というのも、意思決定がスムーズに行われないという点で言えば面倒なものである。

 シャルルには、また後日、訪れることを伝えて、俺達は転移魔法で町へ戻ったのであった。



世界地図

挿絵(By みてみん)

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