第20話 リザードマン達との出会い その2
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建物の中に入ると、2階に案内された。
2階の廊下を進んだ先の部屋に通されると、そこには机の前に座っているリザードマン?
何だか少し人型に近いようにも思える。
俺は、そのリザードマンに話しかけた。
「お前が、この街で一番偉いリザードマンか?」
「俺はリザードマンじゃない。その上位の存在、レプリティアンだ。」
「そうか、俺はゼド、シチリガドの北にある、俺達の町からやって来た。
お前の息子とは色々あったが、今日はとある協力を依頼しに来たんだ。
俺達だけじゃなくて、お前達にも関係のあることだ。」
「それで、用件は何だ?」
「まず、順を追って話そう。
俺達は、今町を作っているんだが、そんなに魔素力が高くない俺達の町に5人の上位悪魔が現れた。
俺達は戦い、4人を倒し、1人を捕虜にした。
そして、どこから来たのか尋問した結果、その悪魔は別の宇宙から来たと話し、しかも、10万もの悪魔の軍勢が1年以内に攻めてくると話している。
俺は、この話を本当のことだと思っている。
ドワーフの王や、オークロードにもこの情報を伝え、各方面と協力体制を築けないかと動いているところだ。
それで、リザードマン達からも対悪魔戦に向けて協力を得たいと思っている。」
「その悪魔が適当なことを言ってるんじゃないのか?
別の宇宙だとか信じるほうがどうかしてるぞ?
まず、根拠がない。」
「そうだな。説明しようにもどこから話して良いか判らないが、先ほど、対悪魔戦でサラスヴァティーから協力してもらうよう話を取り付けたばかりだし、その他にも3体の聖霊が俺の仲間になっている。
この事実を以て、信用してもらうことは出来ないか?」
「仮にその話が本当だとしても、今、目の前にある危機に対応しなくてはならない状況にある俺達に協力を約束など出来ん。
そもそも、お前が俺達を騙そうとしているのかもしれないしな。」
「それじゃあ、俺達がお前達の危機を救ってやろう。その代わりに、悪魔達からの襲撃の際には協力してくれ。こういう契約でどうだ?」
「本当か?お前達にこの街を守ることができるのか?
ドラグーンの街のリザードマンの軍勢から、この街を守ることがお前に出来るのか?」
「ああ、約束しよう。だが、何故、リザードマン同士で争う必要があるんだ?」
「このシチリガドの住民は、サラスヴァティー様を水と豊穣を司る神と信じて崇めている。
サラスヴァティー様が此処にいることで、飢餓や天候、病等から守られて我々の生活が成り立っているのだ。
しかし、ドラグーンの街の連中は違う。度重なる病や飢餓に苦しみ、自分達の為だけにサラスヴァティー様をドラグーンの街へ連れて行こうとしているのだ。
我々は、サラスヴァティー様と信仰を守るため、戦わざるを得ない状況にある。
さあ、お前は、俺達の危機を救う救世主となることが出来るのか?」
「ああ、やってやろうじゃないか。
俺が前にいた世界では、男に2言は無いっていう言葉があってだな、一度言ったことは取り消さんのだ。」
こうして、俺はシチリガドの街の防衛と、ドラグーンの街の調査を行うことにしたのである。
俺達は、すぐにドラグーンの街へ転移魔法で移動した。
ドラグーンの街も、シチリガドと同様に湿原にあり、湿地に杭を打ち込んだ基礎の上に通路や建物が建っている。
しかし、その規模はシチリガドの3倍はあろうかと言えるものであった。
街の至るところで、病や飢餓で倒れているリザードマンがおり、街の活気も感じられない。
また、シチリガドへの侵攻に備えるべく準備が進んでいるのか、武装したリザードマン兵士を見かけることが多い。
俺は、その辺をうろついてる兵士に、傭兵を雇ってくれるところはないかと質問したところ、着いてくるように言われ、言われるがままに着いてゆき、ある建物に案内された。
そこには、偉そうに座っているリザードマンと、武装した兵士が数人いた。
「近く戦争があるんだろ?俺達を傭兵として雇ってくれないか?」
「傭兵は雇っても良いが、腕はあるんだろうな?」
「ああ、俺達は強いぜ。何なら勝負でもするか?」
「じゃあ、こいつと戦ってみろ。」
そう言われ、俺達3人は其々1対1で戦い、3人とも勝った。
「報酬は、半分は前払いで払ってくれよな。」
「いや、報酬は全てが終わってからだ。働き次第だな。」
「本番は何時なんだ?」
「1週間後だ。」
そんなやり取りの後、この街で一番偉い奴は誰だと聞いてみた。
すると、イオン王女だということが判った。
確かに遠くに王宮らしき建物が有る。
俺達は、その王宮を目指し歩き始めた。
王宮の前に来ると門兵がおり、中に入れそうにはない。
まあ、無駄だと判っているが、王女に謁見できないか聞いてみた。
「俺は、ゼドと言う者で、シチリガドから来たんだが、王女様と謁見することはできないかな?」
「イオン王女様はお忙しい。お前等にかかずらっている暇はない。」
「俺達は、シチリガドのレプリティアンから話を聞いてやって来ている。
俺と水聖霊サラスヴァティーとは協力関係にあるんだが・・・。
それでも話を聞く価値は無いのか?」
「一応、話は通してみるが期待しないことだな。」
俺は、暫く待った。
「良かったな。謁見出来そうだぞ。」
俺達は、王宮内に案内され、女王の間に通された。
「お主がゼドか。
何の用で妾に会いに来たのか?」
彼女もレプリティアンなのだろう。人型に近い。ちょっと可愛い感じもする。
「率直に言うと、10万もの悪魔の軍勢と戦うことになるので、協力関係を結べないかということが目的で来た。
シチリガドのレプリティアンにも協力を依頼したところ、街の防衛を条件に協力を取り付けることが出来たので、此方へ足を運んだという次第だ。」
「ほう、では妾とは敵同士ということになるな。」
「俺達は、2つの街が歩み寄れる方法を探しに来ている。シチリガドの住民達はサラスヴァティーを神として信仰し崇めている。それを力づくで奪い取ろうというのは間違っているのではないか?」
「妾はこの街、国を預かる者として住民の命を守らねばならん。お前の如き下賤な者の言うことなど聞く気にはなれん。」
「俺はサラスヴァティーと協力関係にある。サラスヴァティーは水のある所にはどこにでもいると話していた。
例えば、このグラスの中の水にでさえもサラスヴァティーはいるのだ。
サラスヴァティーよ、出てきてくれ。」
すると、グラスの中に、小さなサラスヴァティーが現れた。
(サラスヴァティーよ、シチリガドだけでなく、このドラグーンの街にもお前の加護を与えることは出来ないか?)
(我の加護は、我を信仰する者のみに与えられる。よって、我を信仰すれば、その加護は授けられるだろう。)
「何と、加護を受けるためには、サラスヴァティー様を信仰しなければならないとは・・・。
このドラグーンの国教では、土聖霊ガイア様を信仰しているのだ。
信仰の対象を変えるとなると、住民の中には反感を持つ者も大勢いることだろう。」
「そっちは王女様に任せるよ。俺達は2つの街が戦わないで済めばそれで良い。
対悪魔戦は、利害関係は一緒だしな。協力できなければ街ごと滅ぶことになる。
それでは、俺達はこれからシチリガドに戻るとするよ。」
そう言い、俺達は転移魔法でシチリガドへ戻って行ったのであった。
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