第19話 リザードマン達との出会い
俺は、リザードマン達と接触して帰ってきた2人の妖鬼族が、転移魔法を習得したと聞いて、早速2人が行ってきた2つの都市へ転移魔法で連れて行ってもらった。
都市の名前は、シチリガドとドラグーン。
どちらもリザードマンの治める都市である。
さて、どうしよう?どちらの街から探索を始めるか。
まずは、俺達の町に近いシチリガドにするか。
一応、雷聖霊トールと光聖霊ヘイルダムを連れて来ているが、2人の妖鬼族も大鬼族に進化させておくことにした。
シチリガドの街は湿原の中にあった。
街の通路は、湿地に打ち込んだ杭の上に木の板を敷いて造られている。
道幅は5~6人が横にならなんで歩ける程度であるが、街全体にこのような通路が張り巡らせてあるということを考慮すると、凄いと感嘆するほかはなかった。
街の建物は、湿地に打ち込んだ杭を基礎として建てられており、2階建ての建物がほとんどである。
街の規模から推測するに、住人は1万人は下らないだろう。
行きかう住人の姿は、以前出会った蜥蜴男と同じである。身長は180cm程度、全身に緑色の鱗があり、顔は蜥蜴のように細長く前に突き出している。
手と足には水掻きがあり、湿地に適した体になっている。
俺は、一人のリザードマンに、この街の一番偉い人は誰かと尋ねてみた。
「こんにちは、俺はゼドと言う名前なんだが、この街で一番偉い人がどこにいるか知らないか?」
「偉い人?そうだなぁ・・・。サラスヴァティー様かな?この町の中心の建物にいるよ。
この街は、サラスヴァティー様がいる建物を中心とした円形状に建物が建っているんだよ。」
「なるほど、ありがとう。」
目的は、サラスヴァティー様とやらに決まった。
俺は、街の中心を目指して足を進めた。
円形状に並んだ建物が有り、円形状の通路があり、また円形状の建物が有り・・・、数えてみたら7層もの建物の円形の列の中心に、目的の建物が有った。
全くもって美しく計算された都市設計である。
俺達は、街の中心の建物の入り口前にいる衛兵に、サラスヴァティー様に会いたいと話したところ、金貨10枚必要だと言われた。
何だ?その制度というか決まりは・・・?
まあ、入れてくれるのだったら仕方が無いと思い、金貨10枚を支払った。
建物に入ると、中心に水の柱のようなものが動いている。
よく見ると、腕があるようにも見える。
突然それがこちらに振り向いた。
体が水になった女性のような容姿である。
(我に何の用だ?)
(俺は、ゼド。この街で一番偉い人は誰かと聞いたら、サラスヴァティー様だと聞いたもんでやって来たんだけど。アンタがサラスヴァティー様?)
(そうだ。)
サラスヴァティーがそう答えた時、俺の懐からトールとヘイルダムが現れた。
そして、トールが話しかける。
(サラスヴァティーよ。久しいな。こんな所に閉じこもっていたのか。)
ん?トールが出てくるということは、サラスヴァティー様というのは水聖霊なのか?
これは是非とも仲間にしたい。
俺はサラスヴァティーに話しかける。
(実は、1年以内に別の宇宙から10万もの悪魔が襲撃してくるらしく、一緒に戦える仲間を探している。この街は人口も多いし、力になってくれないか?)
(余りにも唐突だな。そして、トールよ、お前は我に馴れ馴れしすぎるな。)
そして、ヘイルダムがサラスヴァティーに話しかける。
(ゼド様は、この宇宙を創ったお方だ。サラスヴァティーよ、お前も共に来るが良い。)
(我は、いつでもどこにでもいる。この世界に水がある限り。
その時が来れば力を貸そう。)
(そうか、その時は頼む。)
こうして、水聖霊サラスヴァティーからの協力については話を取り付けたのだが、まだ、リザードマン達からの協力を取り付けることは出来ていない。
俺達は建物から出て、衛兵にこの街のリザードマンの中で一番偉いのは誰かを聞いてみた。
「なあ、この街のリザードマンの中で一番偉い奴ってどこにいるんだ?」
「それは、あの建物だな。」
と、衛兵がある建物を指さした。
俺達はその建物に行き、扉をノックした。
そして、出てきたリザードマンが俺の顔を見た瞬間、驚きの声を上げた。
「お、お前はあの時の!!」
「俺とアンタ、どこかで会ったっけ?」
「忘れたとは言わせんぞ!あの時はトールとか言うやつにやられたが、今日はいないようだな。
そう言う声に反応して、建物の中から10人くらいの武装したリザードマンが現れた。
俺は、正直面倒だったのだが、相手をしなきゃならないらしい。
このリザードマンには、何を言っても聞く耳を持ちそうにもない。
俺は、覚悟を決めて刀を抜いた。
2人の大鬼族も戦闘態勢である。
武装したリザードマンは、リーチが長い槍を武器にしている。
対する俺は、刀であるので懐に潜り込むしかない。
2人の大鬼族にしても、武器はロングソードとハンドアックスなので、状況は俺と同じである。
そして、リザードマン達は集団戦の訓練をしているのか、息の合った連携攻撃で攻めてくる。
しかも、武器に魔法を纏わせている。
ひょっとして、上位悪魔よりも強いんじゃないだろうか?
と思った時、リザードマンの数人が魔法を使用した。
「水刃の嵐!」
幾つかは刀で防いだが、水刃の一つが、俺の左腕に当たり、骨が見えている。
俺は、回復薬を使い左腕を治し、相手の動きを止める魔法を放つ。
「超重力場!」
この魔法で、3人のリザードマンの動きを止めることが出来た。そして、その隙に3人を切り伏せた。
後ろを振り返ると、2人の大鬼族は負傷して苦戦している模様である。
大鬼族が攻撃魔法を唱えた。
「裁きの光!」
この魔法は、遥か上空に極大魔法陣を描き、光のエネルギーと聖霊力を収束させて対象1人を消滅させるという魔法である。
これにより、1人のリザードマンが消滅し、その魔法で怯んだ別のリザードマンをもう1人の大鬼族が切り伏せた。
俺は、この隙に2人に回復薬を使用し、光聖霊ヘイルダムを召喚した。
ヘイルダムのスキルである「破邪の光鞭」は、半径10km以内の広範囲を聖霊力の塊である光の鞭によって攻撃する危なっかしいスキルであるが、今回は使用する聖霊力を少なくしてもらい、半径5mくらいでお願いした。
「破邪の光鞭!」
これにより、5人のリザードマンは倒れ、残るは俺に会ったことがあると言うリザードマンだけである。
「お前が、この街で一番偉いリザードマンか?」
「・・・いや、違う。俺の父親だ。」
「いいか?俺達はお前達リザードマンに敵意は持ってない。攻撃されたから身を守っただけだ。だから、俺達を攻撃するな。判ったな?」
「ああ、判った。」
そう頷くのを確認したうえで、負傷したリザードマンに回復薬を使い、裁きの光によって消滅したリザードマンはヘイルダムが「神々の慈悲」というスキルを使用して復活させた。
この「神々の慈悲」というスキルは、死んで間もなく魂が残っている状態の者であれば復活させることが出来るというスキルである。
こうして、10人のリザードマンは全て元通りになり、俺達は漸くこの街で一番偉い奴と話が出来ることになったのだ。
世界地図です。