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第18話 霊薬草を求めて その3

 妖精の洞窟を目指す3人と2匹、騎乗から見渡す限り、全て平原である。

 大天使は、その翼により、高い位置から妖精の洞窟を探すことが出来るので、遥か上空を飛んでいる。

 レイナとシュリは、正直なところ迷っていた。

 見渡す限りひたすら平原であるため、朝と夕には方角が正確に判るものの、日中には頭上に太陽があるため、方角が判らなくなるのであるから。

 恐らく、南の方角であろうと見当をつけた方角へ向かっていたのである。

 そんな時に大天使が同行することになったことは運が良かったと言えるだろう。

 レイナとシュリは、太陽と大天使が進む方向を頼りに妖精の洞窟を目指す。

 こんな事であれば、トールとドワーフ達に磁石を作ってもらえば良かったのに、ということは敢えて言わないでおこう。

 この世界には、科学王国は、まだ今のところ存在していないのだから。

 磁石自体が貴重なのである。

 (しばら)く進むと、雲行きが怪しくなってきた。

 ポツポツと降り始める雨。

 その内、大粒の雨が降り出し、水浸しになって、足元がぬかるみ、太陽も隠れて方角が判らなくなってしまった。

 一旦進むことを諦め、転移魔法でトラヴァーユの街へ戻ることにした。

 トラヴァーユに戻ると、市場に(おもむ)き、酒を売っている店の下調べをする。

 なお、2人の後には大天使もついてきている。

 2人は、酒を売ってる露店を見つけ、其々(それぞれ)1本の酒瓶を銀貨2枚で買った。

 雨が止むまでの間に、普段楽しめない酒を飲もうという訳である。

 なお、2人は大鬼族(トロル)に進化したため、毒耐性も高くなっており、酔いにくい。

 1本で酔えるかどうかは判らないが、雨が上がるまでの暇な時間をつぶすことくらいはできるだろうとの考えである。

 しかし、酒を飲むとなると摘みも欲しくなる。

 市場では、昆虫食のような怪しい物ばかり売っているので、手持ちの干し肉を(かじ)りながら酒を飲む。

 2人は、一瓶飲み干してから転移魔法で元の場所へ戻った。

 まだ、雨雲があったが雨は止んでいるようである。

 後は、方角さえ判れば進めるのであるが、それが判らない。

 2人は、予定とは異なるが、この大草原に生息する馬のような魔獣?を捕まえることにした。

 しかし、馬のような魔獣は、追いかけると飛んで逃げてしまう。

 中々思うように捕まえることが出来ない。

 大天使は、今のところ、ただ付いてきているだけなので、仲間となった訳ではない。

 なので、手伝ってもらうことは出来ない。

 無駄だと思ったが、馬のような魔獣に、念話で意思疎通ができないか試してみたが、意思疎通は出来ないようである。

 そうこうしている内に、雲も晴れ、太陽が出てきた。

 恐らく南であろう方角も判ったので、その方角へ向けて進もうとした。

 その時、空に虹が見えた。

 その虹が、蛇の形を成してゆく。

 その巨大な姿は、数十mとか数百m等の規模ではない。

 体長数kmはあろうかという大蛇である。

 その大蛇は念話で語りかけてきた。


 (我が名はヨルムンガンド、妖精の洞窟を守る者である。貴様ら、何故、妖精の洞窟を目指すのだ?)

 

 レイナとシュリは言葉を失った。その余りの巨大さ、恐ろしさのため。

 そして、その問いに対しては、大天使が答えた。


 (この世界の創始者がそれを望んだ故。)


 (ふむ、それを証明できるのか?)

   ・

   ・

   ・

 これはどうやら、レイナやシュリが答えなければならないようである。

 なので、レイナが念話で答えた。


 (私達は転移魔法で、私達の主を連れてくることが出来ると思います。(しば)し、お時間を頂きたい。)


 レイナは、転移魔法により町へ戻り、急いで俺の家にやってきた。

 

 「ゼド様、妖精の洞窟に向かっている最中に、ヨルムンガンドという巨大な蛇に、邪魔されて困っています。ゼド様が、世界の創始者であることを証明できるかと質問されて困っています。」


 「そうか、俺が行ったら解決するのか?」


 そこで雷聖霊トールが念話で口をはさんできた。


 (ヨルムンガンドが出ただと?我も行こう。奴とは浅からぬ因縁がある。)


 こうして、レイナに連れられて俺とトールは、ヨルムンガンドと対面することになったのである。

 いや、待てよ!大きすぎるだろ!これは俺の心の声である。

 まず、言葉を発したのはトールだった。


 (ヨルムンガンドよ、貴様とは決着をつけねばならないと思っていた。我と戦え!)

 

 (良かろう。但し、その前に妖精の洞窟を目指すことは、この世界の創始者の意志であることを証明して見せろ。)

 

 (俺が、この宇宙を世界を創った者だ。内に秘めた虚無のエネルギーはほぼ使い果たし、この世界の大気を満たしてしまったので、今はその力の残渣しかない。

 この虚無のエネルギーの残渣を感じ取れるのであれば、その証明になるだろう。)


 (確かに、貴方からは虚無のエネルギーの残渣が感じられる。・・・認めよう。

 それはそうとして、次は、トール、貴様との決着だな。)


 こうして、雷聖霊トールとヨルムンガンドの戦いが始まった。

 暗雲が立ち込め、鳴り響く雷、トールの雷光の槌(ライジングハンマー)虹雷(エーテルブレ)の槌(イクハンマー)の嵐である。

 対するヨルムンガンドは、その巨体でもって周囲の地形を変えながら鞭の様にその体を打ち付ける。

 また、ヨルムンガンドは毒を吐き、大地の怒り(アースクエイク)により大地を割る、

 その戦いは壮絶を極め、神々の戦いと言うに相応しい戦いであった。

 そして、その戦いは7日7晩続いたのであった。

 勝負は、トールが勝ち、ヨルムンガンドが大地に横たわり、その姿が妖精の洞窟へと変わった。

 ヨルムンガンド自身が妖精の洞窟であったのだ。

 但し、トールもヨルムンガンドの毒を喰らい、シュリに聖者の祈りをかけてもらっていたが。

 こうして、俺はレイナ達に洞窟の調査を任せ、俺達の町へ戻ったのであった。

 レイナ達は、妖精の洞窟に入り、霊薬草を探すが中々見つからない。

 もっと奥に行けば霊薬草が生えているのであろうかと思い、先に進む。

 すると、ちらほらと色んな光の玉が浮かんでいる。

 意志を持たない下位精霊である。

 光の下位精霊であれば、暗闇でも周囲をほんのりと明るく照らすことが出来る。

 なので、何匹か捕まえることにした。

 また、水の下位精霊もいた。飲み水を出す程度なら可能そうなので、何匹か捕まえることにした。

 それにしても、霊薬草が見つからない。最深部まで進んできたが、妖精や、上位精霊、聖霊王には会えたが、肝心の霊薬草が無いのである。

 2人は、霊薬草について何か知らないか聖霊王に尋ねた。

 すると、どうやらこの辺りの草原に生えているのが霊薬草なのだそうだ。

 2人は聖霊王にお礼を言い、妖精の洞窟周辺の霊薬草を採取した。

 そして、トラヴァーユに戻り、酒を買うと、転移魔法で俺達の町まで戻ってきたのであった。

 レイナとシュリは、俺の家へやってきて、今回の旅の経緯を報告した。


 「何故、トラヴァーユに向かったんだ?

 俺の指示通りじゃないじゃないか!」


 「勝手な行動して申し訳ありません。しかし、トラヴァーユの街へ今後、転移魔法で移動できるようになり、貴重な物も手に入りました。」


 レイナはそう言うと、蜂蜜のような甘い液体が入った瓶を差し出す。

 舐めてみると甘くて美味しい。

 更にシュリが、お酒も手に入りました、と酒瓶を差し出す。

 聞けば、翼の生えた馬のような魔獣が沢山いるようだし、移動用としてこの町に連れてくるのも良いかもしれない。

 それに捕まえてきた意志のない下位精霊達。

 光の下位精霊はガラス球に入れておけば照明になる。

 それに水の下位精霊は各家庭に設置すると水道となる。

 霊薬草も見つけることが出来たし、今回の調査は収穫もたくさんあったようだ。

 それと、大天使、彼は光聖霊ヘイムダルに深く礼をし、話し込んでいる。

 俺は、何かあったら言ってくるだろうと思い、それは放置することにした。

 俺は、レイナとシュリに光の下位精霊と水の下位精霊をもっとたくさん捕まえてきて欲しいと依頼した。

 それとゴブリン達の幹部である、ゴブリ、ゴブイチ、ゴブゾウ、ゴブヨシを霊薬草から回復薬を造る研究チーム担当とした。

 成功すれば、悪魔達との戦いで傷病者をすぐに直すことが出来ることだろう。

 羽の生えた馬のような魔獣の捕獲は、ガラムに任せることにした。ガラムの重力場ならば、傷つけずにとらえることが可能だろう。

 その内、厩舎を作って飼葉を与える感じにしたいものだ。

 とまあ、こんな感じで霊薬草を入手するという目的は達成されたのであった。



世界地図

挿絵(By みてみん)

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