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第17話 霊薬草を求めて その2

 トラヴァーユの街、そこは昆虫型魔人の巣であった。

 街自体は地中にあり、まるで巨大な蟻の巣の様な姿をしているのである。

 2人は、期待していたものは何もないことを悟ったが、少しでも情報を持ち帰ろうと思い、黒豹族には外で待っているように指示し、トラヴァーユの街に入る。

 地中に入ると、通路は広々としており、所々に明かりが灯っている。

 通路を、体長2.5mくらいの蟻の様な顔の昆虫型魔人が数匹歩いている。

 言語を話せるような発声器官はなさそうでなので、恐らく念話でしか意思疎通は図ることが出来ないであろう。

 昆虫型魔人は腕は4本あり、足は2本である。

 しかし、2足歩行をしたり、6足歩行をしたりしている。

 羽のようなものは無く、空を飛ぶことは不可能なようだ。

 色は黒と深い緑の2種類がいた。雌雄の違いだろうか?

 2人は、念話で近くの昆虫型魔人に話しかけてみた。


 (あの~、ここはトラヴァーユの街ですか?)


 (そうだが、珍しい格好をしているな。何という種族だ?)


 (えーと、種族は大鬼族(トロル)です。)


 (あまり聞いたことは無いが、まあ、誰にも迷惑をかけないならゆっくりしていくと良い。)


 (ありがとうございます!それと、あなた方は何という種族ですか?)


 (俺達は、魔虫族(セクトピス)だ。)


 2人は通路をどんどん進み、市場のような場所に出た。

 市場では、小さな昆虫のような食材や、魔獣の肉、木の実、樹液のようなドロッとした液体等が売っている。

 魔獣の肉は、黒豹族へのエサの補充分として買っておいても良さそうである。

 また、蜂蜜の様な甘そうな液体があったので、買ってみる。

 銀貨3枚で1瓶を買えた。

 舐めてみると、思った通りとても甘い。

 甘いものが貴重なこの世界で、蜂蜜のようなものが手に入ると判ったことはとても良い情報であった。

 2人は、ゼドに良い報告が出来そうだと喜んだ。

 そして、宿は無いだろうかと思い、その辺にいた魔虫族(セクトピス)に話しかける。


 (すいません、この街に宿ってありますか?)


 (宿?ここをずっと真っすぐ行った先に、ドワーフ達がやってるやつならあるよ。)


 (ありがとうございます!)


 言われた通りに進んでいくと、ドワーフが経営する宿屋があった。

 泊っている客は、オークやドワーフ等が多いようである。中には見たことが無い種族もいる。

 1人1泊銀貨8枚であった。

 風呂やシャワーが無いので、ベットだけであったが、夕食と朝食の2食付きだったので野宿よりはよっぽどマシである。

 レイナは転移魔法で黒豹族の元へ行き、エサを与え、明日の朝までは自由行動とすることを伝え、また転移魔法で宿へ戻る。

 2人は夕食を食べ、体を拭いて、ベッドに寝転んだ。

 まさか、この街でまともな食事が出てくるとは思わなかったので、嬉しい誤算であった。

 そして、2人は、早々に眠りについたのであった。

 翌朝、朝食をとり、宿を出る際にドワーフに、此処(ここ)に王は居るのかと聞いたら、最下層にいるとのことであった。

 トラヴァーユは街でもあり、王国でもあるということになる。

 無数の通路が、迷宮のように入り組んでおり、何層にも重なるトラヴァーユの全構造を図り知ることは出来ない。

 レイナは、王に会うのは非常に難しそうだと思ったのであった。

 2人は黒豹族に乗り、妖精の洞窟を目指す。トラヴァーユから、南に2日程向かった先にある(はず)である。

 (しばら)く進むと、目の前にはひたすら続く草原が現れた。

 此処(ここ)では何かに遭遇しても身を隠す場所もない。

 遠くには動く動物が見えるが、遠すぎて何かわからない。

 多少の起伏はあるものの、然程(さほど)丈が高いわけでもない草の原を駆ける黒豹族。

 山岳地帯や、道なき道を進む時には徒歩の2倍程度の速度であったが、ここでは全速力を出して走ることが出来る。

 2人は、思ったよりも早く到着できるかもしれないと考えるのであった。

 そんな2人の前に、全長10mは有ろうかと思われる怪鳥が現れた。

 しかし、怪鳥の狙いはレイナ達ではなく、翼の生えた馬のような生き物であった。

 この馬のような生き物は、この草原に沢山いる魔獣であるが、ユニコーンとペガサスを併せたような姿をしており、怪鳥から見ると恰好の獲物(えもの)であった。

 1頭の魔獣が怪鳥に捕まり、怪鳥は飛び去ってゆく。

 この世界は弱肉強食なのである。

 しかし、2人はこの魔獣は移動用に飼えば有用そうだなと考えた。

 そして、妖精の洞窟を調査した後には、何頭か、この魔獣を捕まえて町へ連れて帰ることにした。

 それにしても、この地域は聖霊力が多少強い地域のようである。

 馬のような生き物も、魔獣かと思ったが聖霊の1種かもしれない。なので、大きな視点で見れば、上位聖霊である炎聖霊ヘパイストス達の部類に属するのかもしれない。

 ここには妖精の洞窟があり、妖精は聖霊力から生まれているので、聖霊力が強いというのも(うなづ)ける話である。

 2人と2匹が、平原を進み続けると、白い翼に白いローブを着た天使らしき生き物達に出会った。天使であれば聖霊力から生まれた悪魔とは対照的な生き物となるが、必ずしも友好的であるとは限らない。

 シュリが、天使らしき生き物に語りかける。


 「こんにちは。私はシュリ、あなたは天使ですか?」


 「ああ、私は天使ですね。あなた方はここで何を?」


 「私達は、精霊の洞窟を目指して旅をしているんです。」


 「そうですか。この世界は、どこも安全という訳ではありませんので、お気をつけて。」


 「はい。ありがとうございます。

 それと、1年以内に別の宇宙から10万の悪魔の軍勢が攻めてくるらしくて、一緒に戦ってくれる仲間を探しているんです。仲間になってくれそうな人達に心当たりはありませんか?」


 「10万の軍勢?別の宇宙?よく判りませんが穏やかな話ではなさそうですね・・・。より高位の存在に聞いてみるしかないですね。」


 「私達はドワーフの街、アイアロンの東にある町からやってきたんです。

 転移魔法で一度行った場所へは行くことが出来るので、またここへ来ることも出来ますけど、もし急用であれば私達の町まで来てください。では、さようなら。」


 そう言って、2人は旅を進めた。

 平原を駆ける黒豹族、上に乗る2人は、夕日が落ちてきて日差しが眩しいため、右手で顔を隠している。

 周囲を見渡す限り、全て地平線である。

 太陽の位置で、進んでいる方角の見当を付けるのであるが、南に向かって進んでいるので、顔の右側に西陽が差してくるのだ。

 そして、陽も沈み辺りが暗くなった頃、転移魔法でトラヴァーユの宿へ向かうのであった。

 2人がトラヴァーユの宿に到着し、宿泊手続きを進めていると、食堂の方から酔っ払った客が出てきた。どうやら、この宿では酒も提供しているようであった。

 ということは、この街では酒も造っているということになる。

 酒を買って持ち帰ろうと思ったが、今買えば荷物が多くなってしまうので、妖精の洞窟の調査が済んでからにしようと思う。

 2人は、食堂で夕食を食べ、一杯のビールの様な発泡酒を味わったのであった。

 翌朝、街の周辺で待たせていた黒豹族に乗って昨日進んだ場所まで転移魔法で移動し、目的地を目指して急ぐ。

 そんな2人の前に、2対4枚の翼を持つ天使が現れた。

 明らかに昨日の天使よりは格上の存在。

 手には弓を持ち、神々しいオーラを放っている。


 「昨日、配下の天使より話を聞いたが、貴方がシュリか?」


 「そうです。貴方は?」


 「私は、大天使だ。昨日の10万の悪魔の軍勢とは真の話か?」


 「そのように聞いています。我らの主は、この宇宙の創始者でありますれば・・・。

 光聖霊ヘイルダムも仲間となってくれています。」


 「ヘイルダム様も仲間になっているとは・・・。私達も見極めなくてはならないようだ。共に行くことにしよう。」


 「どうぞ、ご自由に。」


 こうして、2人と2匹に、大天使が同行することになったのである。



世界地図

挿絵(By みてみん)

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