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第16話 霊薬草を求めて

1話を出来るだけ長く書くように気掛けてみました。

 オーク達の町、ザバンに到着した2人は、妖精の洞窟を目指して進む。

 普通に徒歩で向かえば、8日はかかる道のりであるが、黒豹族に乗って進めば4日ほどで到着するだろう。

 今回の旅の目的は、霊薬草を手に入れて、自分達で回復薬を量産することである。

 来たる戦いに備えて回復薬を確保しておくことは重要な戦略なのだ。

 レイナとシュリは、普段とは異なる状況を楽しんでいた。

 それに、進化により強くなった自分達の力を試したいという欲求もあった。

 ブロックとエイトリに新しく作ってもらった武器と盾を手にした2人は、それを早く使ってみたいという気持ちもある。

 レイナは、ロングソードとサークルシールドを装備し、シュリは、ショートソードとをカイトシールド装備している。

 2人は、予定では真っすぐに妖精の洞窟を目指すはずであったが、強い敵との遭遇を期待して、ザバンから西南西の方角にあるトラヴァーユの町を目指すことにした。

 少しでも回り道をしようという算段なのだ。

 それに、トラヴァーユの町に転移魔法で何時でも行けるようにもなるし、(とが)められることは無いだろうとの判断である。

 しかし、夜になって途中で転移魔法で町へ戻ると、旅の進捗状況を聞かれた際に都合が悪い。

 なので、夜になっても町には戻らないことにした2人であった。


 2人は黒豹族に乗り、道なき道を進んでいく。

 2匹の黒豹族も当初は3m程度の大きさだったのが、今や4m程に成長している。

 成体ともなれば5mにもなる(はず)である。

 2匹とも、体力も増し、休憩を要する時間も多少減っているようである。

 2人は、トラヴァーユの町までは、3日ほどかかりそうであるが、そこまでの道のりを楽しむことにした。

 2日は野宿をすることになるが、夜は交代で眠り、悪魔や魔虫の出現に備えるのである。

 トラヴァーユを目指し始めた初日、大きな川を渡らなければならなかった。

 2人は川を渡ろうとしたが、体長6m以上はありそうな巨大なワニのような魔獣が数匹いることを確認し、回り道をすることにした。

 2人が習得している魔法では、水との相性は良いとは言えなかったからだ。

 レイナは火属性の攻撃魔法を得意としており、シュリは土属性の防御魔法と、光属性の回復魔法を得意としている。

 シュリの魔法で対処することも出来なくはなかったであろうが、安全に行くことを選択したのである。

 2人は、安全に川を渡り、先へ進む。

 これから山を越えた先に、目的のトラヴァーユの町があるのだ。

 2人が、山を登り、山を下りきる前に夜が訪れた。

 火を()き、保存食になっている魚や肉を(あぶ)って塩をかけて食べる。

 この辺りは魔素力が濃ゆい。

 悪魔が出現してもおかしくない場所である。

 2人は交代で休み、周囲への警戒を(おこた)らない。

 そして予想通り、悪魔が現れた。中位悪魔である。

 翼は無く、三又の槍を持ち、人型に近い出立である。

 進化する前でも対応できたかもしれないが、進化した今となっては楽に倒せる相手である。

 但し、数は多く、12体は居るようである。

 レイナとシュリは、新しい武器の試し切りがてらに中位悪魔を切り倒していく。

 レイナのロングソードは、片手で扱うタイプの両刃の武器である。なので、悪魔の攻撃を盾で防ぎ、武器が弾かれた、その隙を突いて切り倒していく。

 また、火属性の攻撃魔法である、炎の嵐により遠距離攻撃を行い倒していく。

 シュリは、レイナよりは非力なため、ショートソードを得意としており、防御力重視のカイトシールドで防御範囲を広くとって戦う。

 時に、防御魔法である土壁を使い、防御重視で敵を倒す。

 レイナが攻撃重視なのに対し、シュリは防御重視というスタイルで戦う。

 結果、中位悪魔を8体をレイナが倒し、4体をシュリが倒した。

 まだ剣に魔法効果を付与して戦うほどの相手ではなかったので、使ってはいないが、2人とも魔法効果を剣に付与することも出来る。

 2人は、相当の余裕を残して12体の悪魔を倒しきることが出来たのであった。

 悪魔は、下位であればあるほど夜に出没するが、上位悪魔クラスになると、昼間でも出現することがある。

 しかも、夜ならば出会う恐れも大きくなる。

 まだまだ油断できる状況ではないのだ。夜は始まったばかりなのだから。

 レイナが見張りを終え、シュリを起こそうとした時、上位悪魔が8体現れた。

 黒い翼に2本の角、黒い装束に身を包み、槍のような武器を持っている。

 2人は飛び起きて、上位悪魔と対峙し、緊張感が高まる。

 武器と盾に魔法を纏わせ、上位悪魔の魔法攻撃に備える2人。

 上位悪魔は、 極小規模なブラックホールを作り出し、対象の体の一部分を飲み込んでしまう魔法、闇魔球(ダークボール)を使用するからである。

 魔法によって保護しなければ、剣も盾も一瞬で消滅してしまうのである。

 8体の悪魔が、一斉に闇魔球(ダークボール)を使用してくる。

 それに対し、レイナは機動力で回避し、シュリは盾と土壁によって防御する。

 レイナは火属性、シュリは光属性の魔法を、剣と盾に纏わせている。

 2人は其々(それぞれ)の魔法を纏わせた剣で攻撃を試みる。

 進化前であれば、武器に魔法を纏わせることも出来ず、負けていたであろう相手であるが、今ではこの数の差を前にしても勝機が見えていた。

 2人は、其々(それぞれ)1体の上位悪魔を倒し、残りは6体である。

 レイナは、悪魔の持つ槍の攻撃を(さば)き、更に1体を倒す。

 一方、シュリは光属性の魔法を武器に纏わせているため、武器に魔法を纏わせていない悪魔との相性は良い。

 悪魔の槍に剣が触れると、槍は脆くも崩れ去った。

 そのまま、袈裟切りで悪魔を断ち切り1体を倒す。これで残りは4体である。

 すると、4体の悪魔は、勝機を見出すことが出来ないことを悟ったのか、この場を去ったのであった。

 朝を迎え、旅を進める2人は少し疲れていた。悪魔の襲撃を警戒して、充分に休むことが出来なかったからだ。

 しかし、自分で選んだ旅路なので仕方が無いといえば仕方が無い。

 幸いなことに、魔素力が高い地域を脱したため、悪魔とは遭遇しないであろうと思われるので、今夜は大丈夫だと信じたい。

 何せ悪魔以外にも何が現れるかは判らないのである。

 2人は、黒豹族に乗り、先を急ぐ。

 こんな旅は早く終わらせて、快適な家で(くつろ)ぎたいという気持ちのほうが強くなったからというのも理由の一つである。

 そんな思惑の2人とは逆に、体長3mくらいのゴキブリ型の魔虫が20匹程立ちはだかる。

 数匹が羽ばたきながら迫ってくる。他にも素早い動きで、カサカサと迫ってくる黒い影。

 2人は、戦えば勝てないことは無いが、虫系は全般的に苦手であった。

 黒豹族に全速力で逃げるように指示し、戦うことを避ける。

 目的は、霊薬草なのだから。

 こうして、嫌な思いをしながらも2日目の夜を迎えた。

 2日目の夜は、昼間に出会った魔虫が来ないことを祈りながら2人で交代で休むのであった。

 それにしても嫌なことは重なるものである。

 ()いている火を見つけてか、羽を広げると体長7m程もある蛾のような魔虫が現れたのである。

 巨大な蛾が、2人を目掛けて迫ってくる。

 巨大な蛾は、催眠効果がある鱗粉を降り注ぎ、眠っていたレイナは無抵抗に催眠状態に陥った。

 眠り続けるレイナに対して、シュリは一人で戦うしかない。しかも、飛ぶ敵を相手に遠距離攻撃に乏しいシュリは剣で戦うしかないのだ。

 巨大な蛾の足の動きが気持ち悪い。

 その足を()(くぐ)って攻撃しなければ、届かないのである。

 しかし、シュリは魔法を使った。


 「聖者の祈り!」


 この魔法は、対象の状態異常を回復する魔法なのだ。

 この魔法をレイナに対して使ったのである。

 レイナは目覚め、頭上を見上げると巨大な蛾が羽ばたいている。

 その気色の悪い姿に、ぞわっとした、レイナは武器も持たずにシュリのほうへ走っていく。

 気が付けば、キラキラと光る粉のようなものが全身に(まと)わりついている。

 それは巨大な蛾の鱗粉だった。

 レイナはやるしかないと覚悟を決めた。

 

 「炎の嵐!!!」


 レイナの、「これ以上近づかないで!!!」と言う気持ちと共に蛾は焼き尽くされたのであった。

 そして、気持ち悪いと思いながらも、蛾の死骸の下から武具を救出し、別の場所に移り、朝まで休息をとるのである。

 こうして、2日目の夜は過ぎ去っていったのであった。

 2人は、3日目の朝を無事?に迎え進み始める。

 順調であれば、今日にもトラヴァーユの町に着くはずである。

 そう。嫌なことは続くのである。

 トラヴァーユに到着したら、風呂、もしくはシャワーでもいいから浴びたい。

 そういう気持であったのだ。到着するまでは。

 そして、到着したのであった。

 トラヴァーユ、そこは魔虫型人間とも言える魔人が住まう街なのであった。



世界地図

挿絵(By みてみん)

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