第14話 縦横無尽
樹齢千年は経っていると思われる大木が幾つも生えている林の中。
その巨木の幹から伸びる枝の付け根辺りに、家らしき建物が幾つもある。
ここは、ハーピィと呼ばれる翼を持った人型の妖魔が住む町、ハピネス。
ハピネスの町に着いた俺達は、地面から上の様子を伺う。
目の前に1人の可愛らしい女性のハーピィが降り立った。
「珍しいお客さんだね。私達に何か用でもあるの?」
「初めまして、こんにちは。俺の名前はゼド、実は1年以内に、10万もの悪魔の軍勢と戦わなきゃいけなくって、彼方此方で仲間を探してるんだ。」
「あら、ご丁寧にどうも。私は、リリス。でも、10万の悪魔の軍勢?私達には関わらないで欲しいわね。」
「俺達が関わらなくても、悪魔達は攻めてくるよ。仲間になってくれそうな宛ては無いかな?」
「強い聖霊なら知ってるけど、私達は平和に暮らしたいなー。」
「その強い聖霊って興味あるな。まあ、悪魔は羽があるから飛んできちゃうけどね。」
「その聖霊ならヘイルダムという名前で、此処から南東に3日ほど進んだ平原にいると思うけど。馬に乗ってて大きな角笛を持ってるよ。」
「その場所に行ってみるよ。それと俺達は、転移魔法で何時でもここに来ることが出来るから、また来るよ。じゃあ。」
そう言って、俺達は南東を目的地に決めた。一旦、転移魔法で町へ戻り、俺一人で黒豹族に乗り南東へ進む。
転移魔法を覚えたので、夜になったら町へ戻り、朝になったら、また元の場所に戻ればいいのである。
南東へ進むこと1日半、平原に着いたもののヘイルダムらしき姿は見えず、少し南へ進むことにした。
ヘイルダムを探すも、全く見つからず、日が暮れてきた。暫くすると日も沈み、今日はこれまでかと思い、転移魔法を使おうとする。
遠くでぼんやりと何かが光っている。
俺は、黒豹族に乗りその光に向かって近づく。
近づくにつれて、光に包まれた人物が馬に騎乗した、その姿が明らかになっていく。
俺は、こいつがヘイルダムだと確信し、話しかけた。
「君がヘイルダムか?」
(・・・、確かに我はヘイルダムだが何の用だ?)
念話で返事をしてきたので、俺も念話で返事をする。
(実は、1年以内に10万の悪魔の軍勢が、俺達の町を攻めてくるという情報があって、一緒に戦ってくれる仲間を探してるんだ。助けてくれないか?)
(10万の悪魔の軍勢?それは誠か?)
(ああ、俺が創ったこの宇宙とは別の宇宙からやってくる悪魔達だ。)
(おお、確かにお前の中には創造主たる虚無のエネルギーの片鱗が感じられる。よもや創造主と会えるとは思わなかったぞ。共に行こう。)
そう言うと、光聖霊ヘイルダムは、虹色に眩く光る玉となり、俺の仲間になったのであった。
聖霊を仲間にするのは3度目だが、今回は戦わずに済んで良かった。
毎回、聖霊を仲間にする度に戦っていたら命がいくつあっても足りないのだ。
俺は転移魔法で町へ戻り、翌朝、広場に住人達を集め、ヘイルダムを皆に紹介したのであった。
「おはよう!皆、新しく仲間が出来たので紹介する。光聖霊ヘイルダムだ。炎聖霊ヘパイストスと雷聖霊トールとは知り合いだったりするのかな?まあ、皆仲良くしてやってくれ。」
無事、光聖霊ヘイルダムの紹介が終わり、トールから虹雷の槌を5回受けて虚無のエネルギーを吸収した俺は、妖鬼族を5人、大鬼族へと進化させた。
態々書かないが、この作業は毎日行っているのである。
それにしても、もっと効率よく虚無のエネルギーを増やす方法は無いものだろうか?
光聖霊ヘイルダムが、どんなスキルを使えるのかも確認しておく必要がある。
今度、旅に出る際にはヘイルダムを連れていくことにしよう。勿論、戦闘になった際にヘイルダムに戦ってもらうためである。
そう言えば、俺が町に居ない間に、蜥蜴男の様な魔獣の調査のため、南方へ出かけていた妖鬼族2人が帰ってきたとの報告があった。
2人とも戦闘でボロボロになって帰って来ていたため、俺が買っておいた回復薬を使って傷を治してやっていたのである。
どうやら、2人は2つの町へ辿り着いたらしく、ジルから転移魔法を覚えるのを待っているの状況なのだ。
勿論、転移魔法を使用出来るようになったら、俺をその町へ連れて行ってもらう予定であることは言うまでもない。
しかし、どうやら、その2つの町はどちらもリザードマンという種族の町であるらしく、以前、俺があしらったことで敵対的な勢力と見做されているらしい。
なので、2人はリザードマンと戦闘になり、ボロボロになって帰ってきたということだった。
2人には、ご苦労様でした、と言うほかない。
2人が転移魔法を習得したら、俺が出向こうと思う。
さて、それはそうとして、世界地図を見て気になっていた点がある。
オーク達の町 (ザバン)から西南西に徒歩で8日ほど行った辺りに妖精の洞窟と記載されているのだ。
これは念願である回復薬の原料である、霊薬草の有無等の調査を行うことが出来るチャンスである。
俺は、幹部であり、大鬼族へと進化したレイナとシュリに、妖精の洞窟へ向かってもらうことにした。
2人は、既に転移魔法を習得済である。
なので、俺がオーク達の町 (ザバン)までの転移ゲートを開き、2人が黒豹族と共に妖精の洞窟へ向かうという算段なのである。
黒豹族に乗れば、凡そ徒歩の2倍の速度で移動できるので、4日もあれば妖精の洞窟へ到着できることだろう。
俺は、2人を呼び妖精の洞窟の調査を指示した。
そして、準備出来次第、俺の元へ来るように伝えた。
2時間後、2人は準備が完了し、俺は念のために回復薬を渡し、ザバンへの転移ゲートを開いたのであった。
しまった・・・。そう言えば、ドワーフのアンドヴァリに刀を打ってもらっていたんだった。
約束の10日を大幅に過ぎることになるので、自分で受け取りに行くとしよう。
俺は、ドワーフの街 (アイアロン)への転移ゲートを開き、アンドヴァリの元へ向かった。
そして、転移ゲートを潜り、石造りのアンドヴァリの工房の前に出た。
そして、アンドヴァリに会い、出来上がった刀を見せてもらう。
素晴らしい仕上がりのように思える。刀の波紋も美しい。
俺は満足して、代金はいくらかと聞いたら金貨20枚だったので、すぐに支払った。
アンドヴァリは、俺が出し渋ると思っていたのか、素直に金貨20枚を出したら嬉しそうな顔をしていた。
これで、今まで遠距離からの魔法攻撃ばかりだったのが、近距離での戦闘も可能となったのである。
また、武器や矢・直接的な魔法攻撃等を防ぐことも出来るようになった点も大きい。
町の皆の武具は自家製で、俺の刀は王室御用達って訳である。
町の皆の装備も整ってきているようだが、町づくりも平行して行っている。
幹部の大鬼族のグラントとゴブリン族の幹部のゴブノンには、転移魔法で岩塩の洞窟へ行き、岩塩採取を指示していたが、無事に進んでいるだろうか?
何せ岩塩は、今のところこの町で唯一の資金源なのである。
報告が無いのは問題なく進んでいるからだろうか?
俺は、グラントを呼び近況を報告させた。
報告によると、3日に1回ほどドワーフの街 (アイアロン)で岩塩を売っているらしい。
売上金を報告させると、この6日間で2回岩塩を売りに行き、金貨1508枚、銀貨397枚となったらしい。
グラントとゴブノンには今後、毎回の売上金を報告するように指示し、売上金の管理はゴブリン族の幹部であるゴブリ・ゴブイチ・ゴブゾウ・ゴブヨシの4人の共同責任で行うよう指示したのであった。
また、町の建設資材の購入については、7人のドワーフ族の技術者と連携して行ってほしいと伝えた。
さて、それから新たな妖鬼族を仲間にする件であるが、大鬼族の幹部となったガラム、それにもう1名の大鬼族の2名で黒豹族に乗って向かってもらおうと思う。
ガラムは、転移魔法は習得したので、以前住んでいた妖鬼族の集落付近にはすぐに向かえるだろう。
なので、その近辺でまだ逃げておらず、俺達の町に来たい妖鬼族がいれば、転移魔法ですぐに連れてこれるという訳だ。
悪魔から逃げて来たという過去があるが、進化した今であれば相当数の上位悪魔にも対処できるであろう。
もし、勝てないと判断した場合は逃げる判断をすることは言うまでもないのだが、万が一のため、ガラムに妖鬼族の集落まで転移ゲートを開いてもらった。
これで、いざという時に俺が救援に向かえることも出来るようになった訳だ。
ガラム達には、回復薬もいくつか持たせて出発させた。
名前:ゴブリ
種族:ゴブリンロード
性別:男性
身長:185cm
戦闘力:24,000
備考:ゴブリン族の王。得意な武器は、槍と短剣。
名前:ガラム
種族:大鬼族
性別:男性
身長:183cm
髪:青髪
肌:黄土
戦闘力:79,000
魔法:闇属性(重力場、 超重力場)
空属性(転移魔法)
備考:大鬼族の幹部。得意な武器は大剣。
名前:レイナ
種族:大鬼族
性別:女性
身長:172cm
髪:黒髪
肌:白
戦闘力:71,000
魔法:火属性(火炎弾、 炎の嵐)
空属性(転移魔法)
備考:大鬼族の幹部。得意な武器はロングソード。
名前:シュリ
種族:大鬼族
性別:女性
身長:168cm
髪:赤髪
肌:白
戦闘力:69,000
魔法:土属性(土壁)
光属性(聖者の祈り)
空属性(転移魔法)
備考:大鬼族の幹部。得意な武器はショートソード。
名前:ジル
種族:大鬼族
性別:男性
身長:179cm
髪:銀髪
肌:白
戦闘力:74,000
魔法:水属性(水刃、水刃の嵐)
空属性(転移魔法)
備考:大鬼族の幹部。得意な武器は刀。
名前:グラント
種族:大鬼族
性別:男性
身長:191cm
髪:藍髪
肌:茶
戦闘力:83,000
魔法:雷属性(落雷、黒雷)
空属性(転移魔法)
備考:大鬼族の幹部。得意な武器は手斧。
世界地図