第11話 急転
今まで思いつくままに書いていたんですが、今後のあらすじを考えることにして、数日使ってしまいました。
(・・・、降参だ。)
俺達は、こう喋った上位悪魔を拘束し、上位悪魔の攻撃で倒れた3人の妖鬼族を運ばせつつ、建物の中に連れてきた。
オーク達やドワーフ達、ゴブリン達の働きにより、工房以外の建物も続々と完成しつつある。
オーク達やドワーフ達の住居は勿論のこと、ゴブリン達の住居も3棟ほど完成している。1棟が2階建てになっており、各棟に20部屋あるので、60匹分の住居は確保できたことになる。
なお、トイレの水洗化が目下の課題なのだが。
今回、上位悪魔を連れて来たのは、町の中心の広場横にある集会所である。
そこで、上位悪魔を椅子に縛り付け、何故、俺達の町に攻撃を仕掛けて来たのか尋問した。
(何が目的で俺達の町を襲った?どこから来た?)
(俺達は、別の宇宙から来た威力偵察部隊だ。今後、もっと大勢の悪魔がこの惑星に来ることになる。そしたら、お前達は皆殺しだ。)
(大勢?一体どのくらいの規模だ?いつ来るんだ?どこから来るんだ?)
(1年以内には来る、10万はくだらない数になるだろう。俺がいた宇宙からということ以外、どこから来るかは判らない。)
(ッ!! どうやって別の宇宙から来たんだ?)
(・・・、特殊な転移装置を使った。)
(それは、どんな転移装置なんだ?)
(詳しくは知らない。だが、俺達がいた世界は、こっちの世界よりも文明的にかなり発展している。
最近になって完成した装置だが、転移できるのも100%ではない。失敗すれば死ぬことになる。)
(お前達の世界では、悪魔や天使がいるのか?人間が居たりするのか?)
(ああ、悪魔も天使もいる。人間というのはよく判らないが、天使達に味方している種族不明の奴が1人いるらしい。)
と、得られた情報はこんなところだった。
実に不味い状況、大きな危機が迫っているのかもしれない。町づくりにばかり気を取られている場合ではないようである。
俺は、ドワーフの王 (トーリン・シュバルツヴァルト)とオーク族の王 (トールキン)と情報を共有するため、妖鬼族2人を黒豹族に乗せて旅立たせた。
俺の町の戦力はオーガが50名、ゴブリンが女子供を除いて200匹、それに炎聖霊ヘパイストスに雷聖霊トール、それに俺だ。
とてもではないが、勝てるとは思えない。しかし、座して死を待つ訳にはいかない。
戦える人数や、戦力を向上させる必要がある。
何でも良い、使えるものは全て使うしかない。
ふと、以前あしらった蜥蜴男のような魔獣を思い出した。
あいつらは部下を探していたようだ。何とかコンタクトが取れないものだろうか。方角的にはこの町から南の方角になるので、妖鬼族2人を黒豹族に乗せて調査に向かわせることにする。
この町の周辺にもまだゴブリン達がいるはずである。彼等を仲間にする方法もある。
それから、まだ他にも妖鬼族が残っていないだろうか?できれば合流して迎え撃つ態勢と整えておきたい。
それに、まだ知りえぬ種族がこの世界には居るのかもしれない。この世界の世界地図が欲しいものだ。
今度、ドワーフの王 (トーリン・シュバルツヴァルト)に謁見する際に、世界地図の件について聞いてみようと思うのだった。
俺は、その後も上位悪魔から有力な情報が得られないか何度も尋問を行った。
その結果、こっちとあっちの宇宙では言語体系が異なることが判った。コミュニケーションは念話に頼るしかないということだ。
それと後一つ、大きな情報が手に入った。
悪魔達は、上位悪魔以上であれば、転移魔法を使用できるというものであった。
行き来できる場所は、行ったことがある場所、もしくは見える範囲内という条件付きであったが充分である。
これで、ドラ○もんの「どこで○ドア」の誕生である。
さて、どうにかして転移魔法を習得してみたいものだ。人間の俺にも出来るのであろうか?
悪魔は、転移魔法を使えるから、宇宙間の転移をも行うことが出来る装置を作り出すことに成功したのであろう。
転移魔法を習得出来たならば、他の仲間にも教えて使えるようにしてみたいものだ。
俺は、この悪魔から転移魔法の使い方を聞き出すことにした。
素直に言えばそれで良し、言わなければ痛い目に逢ってもらうしかない。
(俺に、転移魔法のやり方を教えろ。教えなければ教えるまで苦しむことになる。)
(俺を自由にしたら教えてやってもいい。)
(言うだけタダだと思ったか?痛い目を見るが良い。それと結界魔法も使えるようだな。それも教えてもらうこととしよう。)
俺は、聞き取りという名の拷問を妖鬼族に任せ、別の宇宙に思いを馳せる。
俺が、この宇宙を創造したように、宇宙船スペース・ヴェガの他の船員7名の中にも宇宙の果てで新しい宇宙を創造した者がいたのだろうか・・・、俺の様に、虚無のエネルギーにより大気を満たしたのだろうか・・・と。
そうこうしている内に、ヒュドラがやってきた。
ヒュドラは、妖鬼族が準備した肉をたいらげ、俺と妖鬼族1人、ゴブリン2匹(1匹はゴブノン)とともに岩塩の洞窟へ向かった。
岩塩の洞窟へ到着すると、ヒュドラに、悪魔の軍勢10万からの襲撃を受けることになるので仲間になってくれる知り合いの竜種がいないか教えて欲しいと依頼し、また明日、早朝から来てもらうように伝え、岩塩の採取を開始する。
今回は目標は皮袋15袋である。あまり沢山あるとヒュドラも運べないと言い出すかもしれないが、その時は過剰な分は置いていくことにしよう。何せ、命の危機なのである。武器や資金を充実させる必要がある。
夜までかかったが、目標の皮袋15袋を採取した。俺達は、焚火をして干し肉を炙って食べる。
今回は、上位悪魔対策として、ヘパイストスとトールは町の防衛のため置いてきている。
ここでは下位悪魔が出てくれば戦うことになるが、俺と妖鬼族が居れば大丈夫であろう。
しかし、最近、上位悪魔やら下位魔将やらの話があるので、ここでは出会いたくないものである。
俺達は、躰を休める。そして、無事に朝を迎えたのであった。
ヒュドラの背に2人と2匹、それに15袋の岩塩を乗せてドワーフの街へ向かう。ヒュドラも飛び上がるのに多少苦労したようであるが、何とか飛び立ったのであった。
ドワーフの街の入り口の洞窟へ到着すると、妖鬼族とゴブリン2匹には市場で岩塩を1袋あたり金貨70~80枚で売ってくるように指示し、俺はアンドヴァリの家へ急ぐ。
暫くすると街の活気がある場所からは少し離れた場所にある、熱した金属を叩く音が響き渡る石造りの建物へ着いた。
(やぁ、アンドヴァリ、久しぶりだな。ブロックとエイトリは町づくりにとても貢献してくれているよ。)
(おお、ゼドか。この前、弟達が来た時に話していた人員の追加の件だが、すまないが、まだ王に会うことが出来ていないんだ。)
(実は、先日急な知らせがあって、俺の町からドワーフの王へ使者を出したんだ。俺が来たと王に伝えてくれれば謁見が可能かもしれない。取り合ってもらえないか?)
(どんな急な知らせだったんだ?)
(実は、俺達の町に上位悪魔が現れて、撃退には成功したんだが、拘束した1体の上位悪魔が言うには、1年以内に10万の悪魔の軍勢が攻めてくるらしいんだ。
それで、至急ドワーフの王へ使者を送ったという訳なんだ。)
(・・・、そうか。それならば王への謁見が必要だな。一緒に行くとしよう。)
こうして、アンドヴァリと共に王への謁見を申し出に向かったのだった。
通路の両脇に、均等な幅で並び立つ彫刻。
天井に彩られた鮮やかな細工。
大理石で敷き詰められた白色の王宮へ続く静寂な道。
そして、道に沿って灯された明かり。
それらが洞窟の中の空間に存在している。
以前と同じ景色だが、心情はかなり異なる。
前回来たときは、この世界のことなんて右も左も判っていなかった。
今は、この世界の命運が掛かっているかのような気持である。
アンドヴァリが衛兵に対して、王への謁見を願い出ている。
どうやら謁見は可能なようである。
俺達は、王の間の手前で王を待つ・・・。