9.あっという間に終わった王宮生活
翌日、エリーゼは朝から庭の手入れをしていたロイの元へ訪れていた。
「ロイさん、おはようございます。今少しお時間よろしいですか?」
「エリーゼ様…おはようございます。何用でございますか?」
エリーゼは、ロイの姿を見つけ笑顔で声をかけた。
ロイは、エリーゼに声をかけりて笑顔で応えた。
「少しお花を分けて頂きたいのですがよろしいですか?」
「花ですか?構いませんよ。こちらに咲いている花であれば好きなだけ摘んで頂いて大丈夫ですよ。」
エリーゼは、花の方を指差しながらロイに尋ねた。
ロイは、摘んでもいい花の方を指差しながらエリーゼへと応えた。
「本当ですか?ありがとうございます。では、少し摘ませてもらいますね。」
「はい。好きなだけ摘んでいって下さい。」
エリーゼは、満面の笑みを浮かべながらロイにお礼を言った。
ロイも、エリーゼの笑みにつられる様に笑みを浮かべながら応えた。
(これとこれとこれだと色合いも良いわね。部屋に飾っていても目立ち過ぎず、でも落ち着く雰囲気が出るわね。)
エリーゼは、そんな事を考えながら花を一本一本丁寧に摘んでいった。
そして、エリーゼは花を摘み終えたらロイへお礼を言って庭にあるベンチへと移動した。
そして、持ってきたカゴの中から包装用の紙を取り出し摘んだ花を色合いよくまとめて包装した。
(うん。こんな感じでいいわね。)
エリーゼは、包装した花束を見て頷かながら微笑んだ。
「エリーゼ様、こちらにいらしたのですね。」
花束を作っていたエリーゼの元へフェイがやって来てエリーゼに声をかけた。
「フェイ様?おはようございます。どうかされましたか?」
エリーゼは、急に現れたフェイに驚いた表情を浮かべながら尋ねた。
「はい。殿下のご帰宅が一日早まりまして、本日ご帰宅される事となりましたのでお伝えに来ました。エリーゼ様は朝早くからこちらで何を?」
「そうなのですか?お伝え頂きありがとうございます。朝ならロイ様にお願いしてお花を摘ませて頂いて今ちょうど小さな花束を作っていたのです…」
フェイは、カイゼルの帰宅が早まった事を伝える為にエリーゼを探していた様だった。
そして、朝早くから庭にいるエリーゼを不思議に思い尋ねた。
エリーゼは、言伝を伝えに来てくれたフェイにお礼を言うと庭に来ていた理由を説明した。
「花束でございますか?」
「はい…殿下があまり休息が出来ていないとフェイ様からお聞きしたので。こちらの花束をお部屋に飾って頂いて少しでもお部屋の雰囲気を良くして気持ちが少しでも安らいだらと思いまして…フェイ様にお願いして明日の殿下がご帰宅される前にお部屋の方に飾って頂こうと思っていたのです…」
フェイが、不思議に思い尋ねた。
フェイに尋ねられたエリーゼは、ほんの少し笑みを浮かべながらフェイに説明をした。
「殿下にでございますか?でしたらこの様に朝早くからエリーゼ様が来られなくてもロイにお願いして作って貰ったら良かったのですよ。」
「ロイ様にお願いしてしまったら、ロイ様のお仕事が増えてしまいますし…それに、私は花を摘んだりするのが好きですし。殿下にお渡しするのであれば渡す本人が摘むのが一番心がこもると思ったので…」
フェイは、令嬢自ら行動したエリーゼに対して驚いた様に言った。
フェイに言われたエリーゼは、自分が思う事を伝えたのだった。
「エリーゼ様は、本当に…マイペースというか…王太子妃候補として入宮したというのに…」
「ふふ…昔から兄にもよく私はマイペースだと言われていました。何だかフェイ様は兄の様ですわ…あっ…申し訳ありません。そんな事言われても困りますよね…」
フェイは、拍子抜けした様な表情でエリーゼへと言った。
エリーゼは、フェイに言われてクスクスと笑みを浮かべながら言った。
しかし、すぐにハッとなりしょんぼりとした表情でフェイに謝った。
「はは…エリーゼ様のようなマイペースな妹がいたら兄は大変でしょうね。エリーゼ様のお兄様は大変な事でしょう。」
「ふふ…幼い頃から兄は私のマイペースさに振り回されていたかもしれません。幼い頃は何度もこっそり王都へ行って兄が迎えに来てくれていました。」
フェイは、エリーゼに兄みたいと言われて思わず笑いが溢しながら言った。
エリーゼも、つられて笑みを溢しながら言った……
そんな、二人がベンチに座り話をしている姿を見ていた人物がいた。
王宮へと戻ったばかりの王太子カイゼルだった…
「殿下…あの様にここ数日、いつもエリーゼ様はフェイ様にあの様に近づきフェイ様に取り入ろうとされているのです…私とビリー様は、エリーゼ様にその様な事はやめておいた方がいいとご忠告したのですが…王太子妃になる為に殿下の側近であるフェイ様にあの様に近づき取り入ろうとされている様なのです…」
カイゼルの横にいてカイゼルへと話しかけていたのは、スカイ公爵家のサリーだった。
カイゼルは、王宮へと戻るなり父であるガストンと母であるアイリーンに挨拶を済ませるとフェイの姿が見当たらないのでフェイを探していた。
フェイを探していたカイゼルは新しいドレス作るために針子の元へ向かっていたサリーと遭遇した。
「殿下…お戻りになられたのですね。お帰りなさいませ。ご公務お疲れ様でした…」
「サリー嬢…あぁ。ありがとう。」
「どなかを探されている様ですが…」
「あぁ…フェイを探しているのだが。」
「フェイ様でしたら、先程見かけましたわ。ご案内いたしますわ。」
「………。あぁ、ではお願いする。」
カイゼルと遭遇した、サリーはカーテシーをしながらカイゼルに挨拶をした。
カイゼルは、サリーの挨拶に当たり障りなく応えた。
サリーは、カイゼルが誰かを探していると察して尋ねた。
そして、カイゼルがフェイを探していると聞くとサリーはニヤリと微笑みながら自分がフェイの居場所を知っていると言いカイゼルをその場まで案内すると言った。
そして、カイゼルはサリーの誘導の元庭へと出た。
庭へ出て少し歩いたところでサリーは、指を指した。
「殿下、あそこでございますわ。」
サリーは、フェイがいる場所を指差しながらカイゼルへと言った。
サリーの指差した先を見てカイゼルは目を見開き驚いた。
(フェイが、何故エリーゼ嬢とあの様な場所で話をしているのだ…?)
カイゼルは、エリーゼとフェイの姿を見て不思議に思った。
カイゼルがそんな事を思っているとサリーから二人がその場にいる理由を聞いた。
サリーの話を聞いたカイゼルは、一気に頭に血が上り顔を歪ませながらその場を去ったのだった…
カイゼルが戻って来た事を知らずにいた、エリーゼとフェイは庭で別れた。
フェイは、エリーゼから花束を受け取り庭から王太子の執務室へと向かった。
フェイと別れたエリーゼは、部屋へ戻ろうと部屋へと向かっていた。
ちょうど庭から王宮内に入ろうとした所でエリーゼはカイゼルと遭遇した。
そして、エリーゼはその場でカイゼルに訳も分からぬまま罵倒の言葉を投げつけられ王宮から追放される事となったのだった……