最終話.普通の幸せを願う伯爵令嬢の幸せ
最終話になります!!
ここまで読んで頂いた皆様ありがとうございます…
王宮へと戻ってきたエリーゼとカイゼルはお互いの鉢植えを見せる為にカイゼルがエリーゼの部屋へと訪れていた。
エリーゼもカイゼルもどこか緊張気味にソファーへ腰掛けていた。
「殿下…こちらが私の鉢植えです。」
緊張で押しつぶされそうになったエリーゼが立ち上がり窓際に置いていた鉢植えを持ってきてカイゼルの前へと置いた。
「これが…。とても綺麗に花が咲いているな。」
カイゼルは目の前に置かれた鉢植えの花を見て言った。
「はい…。あのおじさんが言った様に本当に綺麗な赤い花が咲きました。」
エリーゼは嬉しそうに笑みを浮かべながら言った。
「そうだな…。私の鉢植えはこれだ…。」
カイゼルは応えると自分の鉢植えをエリーゼの前へと置いた。
「わぁ…。殿下の鉢植えの花もとても綺麗に咲いてますね…。」
エリーゼはカイゼルの鉢植えを見て目を見開いて感心した表情を浮かべながら言った。
「あぁ。そうだろう?最初に咲いた頃より色が鮮やかになった気もするのだ…。」
カイゼルが鉢植えの花を見ながら言った。
「色もですが…花が咲いてから随分経ちますが驚く事に花が衰えず綺麗に咲き誇ってますよね。」
エリーゼは両方の鉢植えの花を見ながら言った。
「あぁ。確かに…そう言われてみればそうだな。花には詳しくないから気にもしていなかったが…。」
カイゼルはエリーゼの言葉を納得したかの様に頷きながら言った。
「普通の花ならば数ヶ月経つとやはり衰えてくるものですから…。この鉢植えの花は特別なのかもしれません…。もしくは…。」
エリーゼは花を見つめながら言った。
「もしくは…何だ?」
カイゼルはエリーゼへと尋ねた。
「殿下と私が…今…こうして共に過ごせる事を祝福してくれているのかな……なんて思ったりもして…。なんて…そんなはずないですね…。」
エリーゼは照れながら頬を赤らめて言うと自分が言ったことが急に恥ずかしくなり苦笑いを浮かべながら言った。
そんな恥ずかしそうなエリーゼを見たカイゼルは…
ガバッ!!
カイゼルがエリーゼを思い切り抱きしめた。
「えっ…と…殿下?!」
エリーゼは急に抱きしめられて驚いて言った。
「どうして…君はそんなに私が嬉しくなる様な事をそんな可愛い表情で言うのだ…。愛おしくてたまらなくなるだろう…。」
カイゼルはエリーゼの肩に顔を埋める様な仕草をしながらエリーゼへと言った。
「わっ…わざとではありません…。」
エリーゼは慌てて言った。
「分かっている…。だからこそ困るのだ…。無意識に私を煽る様な事を言うから…私は…耐えられたくなってしまいそうだ…。」
カイゼルは更にエリーゼの方へと顔を埋めてモゴモゴと言った。
「え?で…殿下…私は何か殿下が耐えられなくなる様な事をしてしまっているのですか…?」
エリーゼはカイゼルの話を聞き自分が何かカイゼルにしてしまっているのではないかと不安になりながら慌てて言った。
「エリーゼ…君と言う人は…。」
カイゼルは顔を上げると頭を抱えながら言った。
そして…
カイゼルはエリーゼに優しくキスをしたのだった……。
「え………。」
エリーゼは突然の事に目を見開いて驚きながら言った。
「耐えられないというのは…こういう事だ…。」
カイゼルは照れた表情を浮かべながら言った。
「こういう事…ですか?」
エリーゼは訳が分からないという表情を浮かべながら驚きを隠せないまま言った。
「……。つまり…エリーゼに触れたい…と思う気持ちが耐えられなくなると言っているんだ…。」
カイゼルはバツが悪そうな表情を浮かべながらもぞもぞと言った。
「え……。えっと……。その…。」
エリーゼはカイゼルに言われた事をようやく理解し顔を真っ赤にして照れた様に混乱した表情で言った。
「急に…この様な事を言われても困るな…。今の言葉は忘れてくれ…。私のただの我儘だからな…。」
カイゼルはエリーゼの反応を見て誤魔化す様に言った。
「あっ…あの…驚きましたけれど…その…困ってはいません…。その…私はおかしいのかもしれませんが…殿下が私にそんな風に思って下っているのが…その嬉しいと思ってしまったのです…。その…私も殿下と共に過ごしていると…その…殿下の手に触れても大丈夫だろうか…殿下にもう少し近づいてもいいのだろうなどと思っていましたので…その…殿下も私と同じ様に思っていたのかと思うとホッとしたといいますか…。」
エリーゼは頬を真っ赤に赤らめながらとても恥ずかしそうにカイゼルへと言った。
ガバッ!!
カイゼルは再度エリーゼを抱きしめた。
「はぁ…本当に…この様に幸せな気持ちになる様な事ばかり言われてはこれから心臓がいくつあっても足りないな…。これからは…我慢せずエリーゼに触れても良いか?」
カイゼルはエリーゼを抱きしめながら言った。
「……。はい…。もちろんです…。私も殿下の…手に触れたくなったら触れてもいいですか?」
エリーゼは恥ずかしそうに頷くと自分もカイゼルへと言った。
「あぁ…もちろんだ。飽きるまで触るといい。」
カイゼルは笑みを浮かべながら応えた。
「ふふ…。はい…。そうします。」
エリーゼも笑みを浮かべながら言った。
そして、カイゼルはエリーゼを腕の中から離すとエリーゼの頬を優しく撫でなからそっと顔を近づけてエリーゼの唇に優しくキスをしたのだった……。
カイゼルが唇を離すとお互い頬を赤らめていた。
「キス…というのは初めてですが…こんなにも幸せで満たされる気持ちになるのですね…。」
エリーゼは照れながらも幸せなに笑いながら言った。
「あぁ…。そうだな…。本当に今とても幸せな気持ちだ…。」
カイゼルも幸せそうな笑みを浮かべながら言った。
そして、二人は見つめあいながらもう一度キスをすると二人で顔を見合わせてとても幸せそうな笑みを浮かべながら笑いあったのだった……。
※
それから二ヶ月後…
エリーゼが正式に王太子妃とした事が国王からの国民へと発表されたのだった。
メディス伯爵家のエリーゼが王太子妃となった事で国民の間では祝福の声で溢れかえっていた。
メディス伯爵家は貴族でありながら優しさが溢れていて贅沢を好まない上に、平民に対しても隔たりなく接する事で知られていた。
それに加え、エリーゼは幼い頃より手作りパンや領地で採れた野菜やミルクなどを王都へ販売しに通っていたため王都では"王都の天使"と呼ばれるほど国民からは人気な存在だった。
そのエリーゼが王太子妃になったという事で国民は祝福せずにはいられなかったのだ。
国民に心からの祝福を受けたエリーゼはホッとしたと同時にとても嬉しく思っていたのだった。
その日の夜…
エリーゼを正式に王太子妃として迎えたと国民へと伝えた為、この日からエリーゼとカイゼルは同じ寝室で寝ることになっていた。
その寝室でカイゼルは不貞腐れていた。
「あの…殿下?何故その様に拗ねておられるのですか?」
エリーゼはカイゼルの表情を見て少し焦りながら尋ねた。
「別に…拗ねてはない…。」
カイゼルは不貞腐れたまま言った。
「どう見ても…拗ねてますよ?せっかく今日は国民の皆さんに声明も無事に出せて…その…一緒の寝室で過ごす事になったというのに…殿下が拗ねておられるなら…私は…自室に戻っていましょうか…?」
エリーゼはあからさまに不貞腐れているのにそれを認めないカイゼルに困りながら言った。
「いっ…いや…違っ…行くな!ここに居てくれ…。」
エリーゼが部屋から困りながらもカイゼルに気を使う様に部屋から出ようとしたのでカイゼルは慌ててエリーゼの手を掴み止めた。
「嫌だったのだ…。」
カイゼルが下を向いてぼそりと呟いた。
「嫌…?何が嫌だったのですか?」
エリーゼは??という表情を浮かべながら尋ねた。
「国民達が…エリーゼが王太子妃になった事を心から祝福していたので…何だかエリーゼを国民達に取られてしまいそうで嫌だったのだ…。祝福される事はとても良い事だと分かっているのに…エリーゼが国民達にばかり気に留めてしまうのではないかと…。」
カイゼルは俯いたままボソボソと言った。
「………。」
エリーゼはカイゼルの話を聞いて驚いた表情を浮かべた。
フワッ……
エリーゼが俯いたままのカイゼルをふんわり優しく抱きしめた。
「エ…エリーゼ?!」
突然抱きしめられたのでカイゼルは思わず顔を上げて驚いた表情で言った。
「殿下…。心配しすぎです…。私はどんな事があっても殿下の横に居ますわ…。」
エリーゼは優しくカイゼルへと言った。
「今も…これからも…ずっと私は…殿下の手を離す事はありませんから安心して下さい。」
エリーゼはカイゼルの不安な気持ちを吹き飛ばすかの様に優しい笑みを浮かべながら言った。
「本当か…?」
カイゼルはエリーゼを見て言った。
「はい…。本当ですよ。」
エリーゼは笑みを浮かべながら言った。
そんなエリーゼをカイゼルは強く抱きしめた。
「エリーゼ…。愛してる…。これからもずっと…愛してる…。」
カイゼルはエリーゼを強く抱きしめながら言った。
「……。はい…。殿下…。私も…この先もずっと…殿下だけを愛しています…。」
エリーゼはカイゼルの言葉を聞いて心が熱くなるのを感じながらも嬉しくて幸せでたまらなくなりながらカイゼルへと言った。
そんな二人は…
この夜…
初めて身体を重ねたのだった……
※
それから二ヶ月が過ぎ…
エリーゼとカイゼルの結婚式まで半年という頃だった…
この日、カイゼルは焦った表情を浮かべながら馬を飛ばしメディス伯爵邸へと向かっていた。
公務に出ていたカイゼルは王宮に帰ってくると同時に母であるアイリーンからエリーゼがメディス伯爵邸へと帰郷している間に体調を崩したと聞いたのだった。
カイゼルはエリーゼが体調を崩したと聞いた瞬間…アイリーンの話を最後まで聞かず王宮を飛び出して急いでメディス伯爵邸へと向かったのだった。
カイゼルがメディス伯爵邸に着くと不安な表情を浮かべながらエリーゼの部屋へとやってきた。
「エリーゼ!!」
カイゼルは慌ててエリーゼの部屋へと入ってきた。
「え?で…殿下?」
エリーゼは急に部屋に入ってきたカイゼルに驚き言った。
「エリーゼ!母上から体調を崩したと聞いた!どうした?大丈夫なのか?」
カイゼルは血相を変えてエリーゼへと言った。
「あっ…はい…。大丈夫です。今は落ち着きましたので。その…王妃様からお話を聞いたのですよね?」
エリーゼはカイゼルへと尋ねた。
「え?あぁ…。母上からエリーゼが体調を崩したとな…。それで不安になり話を最後まで聞かずにここへ急いで来たのだ…。」
カイゼルは焦った表情で言った。
クスクス…
クスクス……
エリーゼの部屋にいた侍女のマリアと母であるナディアは焦るカイゼルを見て我慢出来ずに笑いを溢していた。
「な…何故…笑うのだ…。」
カイゼルは笑われている事を少し不快に思いムッとした表情でマリア達へと言った。
「殿下……。お母様とマリアは殿下が王妃様の話を聞かず慌てて飛び出して来られて状況を理解していない様なので笑ってしまったんですよ…。」
エリーゼがカイゼルへと笑みを溢しながら説明した。
「状況を理解していない…?どういう事だ…?」
カイゼルは意味が分からずエリーゼへと尋ねた。
「確かに…体調は悪くなったのですが…悪い意味の体調不良ではありませんから…。」
エリーゼは困り笑顔を浮かべながらカイゼルへと言った。
「体調不良に良しも悪しもないだろう…。」
カイゼルは意味が分からないという表情を浮かべながら言った。
「唯一あるでしょう…?」
エリーゼは困っているカイゼルを見て笑みを溢しながら言うと自分のお腹へと手を当てた。
「まさ…か………。」
カイゼルはエリーゼの仕草でようやく意味を理解して言った。
「はい…。そのまさかです。殿下と私の赤ちゃんがここにいる様なのです…。」
エリーゼが嬉しそうに優しい笑みを浮かべながらカイゼルへと言った。
「何ということだ…。エリーゼ!」
カイゼルは喜びと驚きと色々と感情が入り交じった表情を浮かべながら言うとエリーゼを優しく抱きしめた。
「体調が優れなかったのでまさかとは思いましたが…とても嬉しい事が起きました。」
エリーゼはカイゼルに抱きしめられながら笑顔で言った。
「あぁ…。あぁ。エリーゼ…。こんなに嬉しい事はない。私とエリーゼの子だ…。」
カイゼルは嬉しそうに笑みを浮かべながら言った。
「はい。殿下と私の子です。」
エリーゼも嬉しそうに笑みを浮かべながら言った。
「名前を決めなければならないな…。子供部屋も作らねば…。」
カイゼルは目を輝かせながら言った。
「ふふ…殿下…気が早いですよ。まだ性別も判っていませんのに…。」
エリーゼは嬉しそうなカイゼルを見てクスクスと笑いながら言った。
「そ…そうか。ははは…そうだな。とにかくエリーゼは無理をせずゆっくりしているのだぞ?」
カイゼルはエリーゼに言われて苦笑いを浮かべたがすぐにエリーゼの身体を気遣う様に言った。
「はい。ありがとうございます。休める時には休ませて頂きますね…。」
エリーゼは頷きながら笑顔で応えた。
「私とエリーゼの子か…。生まれてくるのが今から楽しみだ…。」
カイゼルはエリーゼのお腹を優しく触りながら言った。
「はい。そうですね。元気に生まれてきてくれる様に毎日願うことに致します。」
エリーゼは笑顔で言った。
「そうだな。」
カイゼルも笑顔で言った。
そんな二人をナディアもマリアも微笑ましく見守っていたのだった。
※
エリーゼの妊娠が判明してからあっという間に半年が経った。
カイゼルとエリーゼはもちろん国民もこの日を待ちに待っていたのだった。
この日はエリーゼとカイゼルの結婚式の日だった。
代々伝わる王家のしきたり通りに結婚式を終えたエリーゼとカイゼルは結婚の報告を国民へと伝えた。
この日は国民達へ結婚の報告を国王が直接報告する為に結婚式を終えた後に王宮の一角を開放して国民達が入れる様になっていた。
開放した場所には一目エリーゼとカイゼルの姿を見ようと沢山の人々が集まっていた。
その沢山の国民を前に国王…王妃、王太子…王太子妃の順で挨拶と感謝の意を伝えたのだった。
国民達が盛大に祝福を叫ぶ中…
同時にエリーゼのお腹には新しい命が宿っている事も報告した。
国民達は心から二人の結婚も新しい命の誕生も祝福したのだった。
こうしてエリーゼとカイゼルは結婚式は無事に終えたのだった…
結婚式を終えた一ヶ月後…
王宮内に赤ちゃんの産声が鳴り響いた。
オギャーオギャーオギャー!
「生まれた!!」
エリーゼの部屋の外でソワソワしながら待っていたカイゼルが叫んだ。
ガチャ…
しばらくするとエリーゼの部屋の扉が開き中からマリアが出てきた。
「おめでとうございます。王子殿下のご誕生でございます。」
マリアは満面の笑みでカイゼルへと言った。
「エリーゼ妃の後処理が終わりましたので殿下…中にお入り頂けます。」
マリアは笑顔でカイゼルへと伝えた。
「あ…あぁ。」
カイゼルは頷きながら言うと部屋に入り生まれたばかりの子供を抱いたエリーゼの元へと行った。
「殿下…。元気な王子です。」
エリーゼは笑みを浮かべながらカイゼルへと言った。
「あぁ。とても元気そうだ。エリーゼ…元気な子を産んでくれてありがとう。」
カイゼルは目に涙を浮かべながらエリーゼへと感謝の言葉を伝えた。
「殿下が外で見守っていると思うと安心してお産する事ができました。」
エリーゼはにこりと微笑みながら言った。
「さぁ…殿下、抱いてあげて下さい。」
エリーゼは笑みを浮かべながら言うとカイゼルへ王子を手渡した。
「あ…あぁ。あぁ…小さいな…。小さいのにとても強い力で私の指を掴んでいる…。」
カイゼルはエリーゼから王子を受け取ると恐る恐る抱っこしながら王子の手に指を乗せながら言った。
「はい。きっと殿下に似て立派な王子になりますね。」
エリーゼは嬉しそうに笑みを浮かべながら言った。
「いや…エリーゼに似た優しい王子になるだろう…。」
カイゼルは王子を見つめながら言った。
「ふふ…どちらに似ても元気に健康な子に育ってくれるといいですね。」
エリーゼはクスクスと笑いながら言った。
「あぁ。」
カイゼルは頷きながら言った。
「これからは…これまで以上にエリーゼと王子を守るからな。」
カイゼルはエリーゼの方を見つめながら言った。
「はい…。」
エリーゼは笑顔を浮かべながら応えた。
※
それからエリーゼとカイゼルの間にはこの時に生まれた王子を含め三人の子宝に恵まれたのだった。
普通の幸せを願う伯爵令嬢は苦悩を乗り越えて…
普通の幸せよりもより多くの幸せや愛を手にしていつまでも末永く幸せに過ごしたのであった………
【完】
最後まで読んで頂きありがとうございます★
本編はこの回で終了となります。
時間を見つけて番外編などが書けましたら書けたらなと思っています………
誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
助かっております。
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この度、男装令嬢・キャサリンは探偵助手をする事になりました!!
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公爵令嬢シャーロットは、3度目の人生を生き抜くと決意しました!!
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