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78.正直な気持ちを…

エリーゼはカイゼルに手を取られるままにカイゼルに連れられ中庭へと出てきた。


中庭に出るとあるベンチの前でカイゼルの足が止まった。


そのベンチはエリーゼが王太子妃候補として王宮生活をしていた際にフェイにカイゼルにと花束を手渡しながらフェイと話をしていたベンチだった。


「その…一先ず…座ってくれ…。」


カイゼルはエリーゼの顔を見る事が出来ないままエリーゼへと声をかけた。


「えっ…?あっ…はい…。」


エリーゼはカイゼルに言われて慌てて応えた。


そして、二人はベンチへと腰掛けた。

二人は微妙な間隔を空けて座った。


ベンチへと座った二人の間に少しの沈黙が続いた。


(殿下は…一体何をお考えなのかしら…。)


エリーゼは横にいるカイゼルに緊張しながらそんな事を思っていた。


「ここで…。」


沈黙を破りカイゼルが呟いた。


「はい?」


エリーゼは少しビクリっとなりながら言った。


「ここで…エリーゼとフェイが楽しそうに笑いながら…話をしているのを見たんだ…。」


カイゼルが俯いたままボソボソと言った。


「えっ…?私と…フェイ様…ですか?」


エリーゼはカイゼルの言葉を聞いて首を傾げながら言った。


「あぁ…私は…人伝にエリーゼがフェイに色目を使っていると聞いたんだ…その後に二人の楽しそうな姿を見て…私は…エリーゼはそういう人間なのだと思い込み…エリーゼに…あの様はひどい仕打ちをしたのだ…。」


カイゼルは心苦しそうな表情を浮かべながらエリーゼへと伝えた。


「私は…フェイさんにその様な事は一度も…。」


エリーゼはカイゼルの言葉を聞いて悲しそうな表情を浮かべながら言った。


「分かっている…。エリーゼがその様な事をする人ではないことを…。ただ…あの時は自分の感情にまかせてあの様に酷い言葉を投げてしまったのだ…。」


カイゼルは更に苦しそうな表情で言った。


「だが…エリーゼが王宮から出た後にフェイに怒られてしまったよ…。その時に物凄く後悔したよ。後悔した時には既に遅く…エリーゼは襲われた上に記憶喪失になっていたからな…。」


カイゼルは更に続けて言った。


「今更…本当に今更だが…酷い言葉を投げつけた事も…そのせいでエリーゼが傷つき更に記憶喪失にまでなってしまった事…それから…正体を隠して…エリーゼに会いにいき正体を隠したまま…更にエリーゼを傷つける結果になってしまい…本当に…申し訳なかった…。」


カイゼルはとても苦しそうな辛そうな表情を浮かべながらエリーゼへと頭を下げて謝罪した。


だが…エリーゼは応えず沈黙が続いた。


(やはり…エリーゼは私を許してはくれないみたいだな…。仕方ないな…。それ程…私はエリーゼを傷つけたのだからな…。)


カイゼルは黙ったままのエリーゼを前にそんな事を思っていた。


「私を…好きだと…言ってくれたのも…私に酷い事をしたという…ことからの罪滅ぼしで…言ったのです…か……?」


沈黙を破りエリーゼが目に涙を浮かべながらとても悲しそうな表情を浮かべながらカイゼルへと尋ねた。


「違う!あれは…嘘ではない!私の本心から…。」


カイゼルはエリーゼの言葉を聞き勢いよく顔を上げながら必死に言った。

言葉の続きを言う前にエリーゼの表情を見て思わず言葉が途切れた。


「エリーゼ…泣かないでくれ…。頼む…。」


カイゼルは今すぐエリーゼを抱きしめてやりたい気持ちをグッと抑えながら辛そうな表情を浮かべながらエリーゼへと言った。


「エリーゼへの想いは本心だ…。王太子としても…カイとしても…。」


カイゼルは真剣な表情を浮かべながらエリーゼへと言った。


「ですが……。」


エリーゼは涙を流しながら辛そうな表情を浮かべながら言った。


「私は…エリーゼが記憶喪失になったと聞き…最初はエリーゼの記憶が戻るのであれば罪滅ぼしの意味もあり力になりたいと思ったのは事実だ…。エリーゼと過ごすうちにどんどんエリーゼへと惹かれていく自分の気持ちを抑える事が出来なくなったのだ…。エリーゼが私に笑ってくれるのが嬉しくなり…エリーゼが楽しそうにしていると私まで嬉しくなり…とにかくエリーゼと過ごす時間が何よりも幸せで仕方なかったのだ。」


カイゼルは涙を流すエリーゼへと自分の気持ちを伝え始めた。


「だが…いつか…エリーゼの記憶が戻った時には…きっと…私は…拒絶されると思うと怖くてたまらなかった…。自分のせいでエリーゼに辛く悲しい気持ち思いをさせ記憶喪失にまでにさせた私にそんな事を怖がる資格などないというのは痛いほど理解していた。いつからか…いっそのことエリーゼの記憶がこのまま戻らなければと愚かな考えまで浮かんだ程だ…。」


カイゼルは続けて自分の気持ちをエリーゼへと伝えた。


「エリーゼの記憶が戻り…エリーゼが私を拒絶したとしても仕方のない事だと自分に言い聞かせていたが…いざ、エリーゼの記憶が戻り…私を見た時のエリーゼの態度と顔を見た時に…私の覚悟などまったく意味のないものだと痛感したのだ…。」


カイゼルがどこか悲しそうな表情で続けた。


「もう…これからはエリーゼの事を想うことは許される事ではないと何度も自分に言い聞かせた…。だが…何度言い聞かせてもこの気持ちを消すこと出来そうにないのだ…。アリさん…いや、叔父上がエリーゼに求婚する事実を知って…叔父上がエリーゼに触れる事が許せなくて…つい…外へと連れ出してしまったのだ…。」


カイゼルは続けてエリーゼへと言った。


「私の…エリーゼに対する気持ちは…本当に嘘などではないんだ…。」


カイゼルはエリーゼの目を見て真剣に言った。


「では…殿下は…本当に…私の事を…?」


エリーゼは恐る恐るカイゼルへと声を震わせながら尋ねた。


「あぁ…。もちろんだ…。」


カイゼルは頷きながらエリーゼへと言った。


「では…私は…殿下を想う気持ちを…忘れなくてもいいのですか…?」


エリーゼはまた涙を目にいっぱい浮かべながらカイゼルへと尋ねた。


エリーゼのその言葉を聞いてカイゼルは迷わずエリーゼを自分の方へと引き寄せて思い切り抱きしめた。


「あぁ…。あぁ。忘れないでくれ…。」


カイゼルはエリーゼを抱きしめたまま言った。


「はい…。」


エリーゼは涙を流しながら応えた。


「本当に…今でも…私を…私が王太子だと思い出した今でも…私を想ってくれているのか?」


カイゼルは信じられないという表情を浮かべながらエリーゼへと尋ねた。


「はい…。」


エリーゼは頷きながら応えた。


「ありがとう…。ありがとう…。エリーゼ…。」


カイゼルはエリーゼを強く抱きしめながら言った。


「私…記憶が戻ってからずっと不安だったのです。何故…殿下は私を王宮から追放する程だったのに私を好きだなんて言ったのか…。罪滅ぼしで私に同情して言ったのか…。それともただの…気まぐれなのか…。殿下が何を考えているのかわからず不安ばかり頭を過ぎっていました…。」


エリーゼは自分の気持ちをカイゼルへと話し始めた。


「いっそのこと…記憶なんて戻らなければ良かったと…そんな酷い事まで思いました…。いずれ…殿下は私ではない…どなたかを王太子妃として迎える日が来ると…その時が来たときに私は…きちんと殿下への気持ちを忘れて祝福出来るのだろうかと…。」


エリーゼは続けて言った。


「私とて…同じだった…。自分はいつか何の感情も持てない相手を王太子妃に迎え入れ…エリーゼはいつか私ではない他の別の誰かを好きになり結婚をするのだろうと…そう謂うだけで胸が張り裂けそうだったのだ…。」


カイゼルはエリーゼの話を聞いて自分も同じ気持ちだった事をエリーゼへと伝えた。


「殿下もですか…?」


エリーゼはカイゼルの話を聞き驚いた表情を浮かべながら尋ねた。


「あぁ…。私達は同じ様に考えていたのだな…。」


カイゼルは頷きながら言った。


「これからも…殿下とは会う事が出来るのでしょうか…?」


エリーゼは少し不安そうにカイゼルへと尋ねた。


「あぁ…。もちろんだ。私に任せておけ。私から父上やメディス伯爵には話をきちんとするつもりだからな…。」


カイゼルはエリーゼを抱きしめながら優しくエリーゼが安心する様に言った。


「はい…。」


エリーゼはカイゼルの言葉を聞いて安心した様は表情を浮かべながら言った。



そんな二人の様子を柱の陰からアリストンとフェイが見ていた。


「王兄殿下もお人が悪いですね…。このように手の込んだ演出をなさるとは…。しかも…私まで秘密にしていたとは…。」


フェイが少し不貞腐れた様な表情を浮かべながらアリストンへと言った。


「はは…悪いな。お前に伝えては緊張感に欠けると思ってな。この事は…ガストンとアイリーンとメディス伯爵夫婦にしか伝えていなかったのだ。」


アリストンは笑いながらフェイへと言った。


「殿下もエリーゼ様もまさかアリさんが王兄殿下な事に見事に驚いてましたね。あっ…ブラット様も知らなかったのですか?ブラット様も呆気にとられた表情をされてましたので…。」


フェイが言った。


「ん?あぁ。ブラットにも私の正体は言った事がなかったのだ。言うタイミングを逃していたんだ。カイゼルは特に驚いていたな。」


アリストンが言った。


「殿下に関しては色々な意味で血の気が引いてましたよ…。」


フェイは呆れた表情を浮かべながら言った。


「はは…そうか?」


アリストンは笑いながら言った。


「そうですよ。……。しかし…本当に良かったのですか?エリーゼ様をお嫁に貰わなくて…。」


フェイはアリストンの顔をチラリと見ながら言った。


「あぁ…。もちろんだとも。お前はずっと勘違いをしている様だが…私はエリーゼの事を娘の様にしか思っていないぞ?」


アリストンはニヤリと笑みを浮かべながらフェイへと言った。


「え?ですが…エリーゼ様を見つめる目が…。」


フェイはアリストンの予想外の言葉に驚いた表情を浮かべながら言った。


「それは…お前が勝手に思い込んだだけだろう?私はエリーゼの事を一度も異性の女性としては見ていないさ。小さな頃からのエリーゼを知っているから本当に娘の様に思っているんだよ。」


アリストンは笑みを浮かべながら言った。


「そうだったのですか?!私はてっきり…。何だ…私の勘違いだったのか…。そうとも知らずに私は王兄殿下がエリーゼ様にキスしようとした姿を見て手に汗握ったというのに…。」


フェイは困った表情を浮かべながらアリストンへと言った。


「あぁでもしないとカイゼルの奴が行動に出ないと思ってな。だが、案の定私の思っていた通りカイゼルが行動しただろう?」


アリストンは自信満々にフェイへと言った。


「はい…。殿下の行動には驚きましたが結果としてエリーゼ様との関係が上手くいった様で安心しました。」 


フェイは頷きながらカイゼルとエリーゼを見ながらホッとした表情を浮かべながら言った。


「そうだな…。」


アリストンもカイゼルとエリーゼのを見つながら言った。


「王兄殿下は何だかんだ言って殿下の事も考えておいでなのですね。」


フェイは微笑みながらアリストンへと言った。


「そうだな…。一緒に過ごした時間は少ないとはいえ幼い頃から見てきた甥だからな…。可愛い甥のカイゼルと可愛い娘の様なエリーゼが幸せになってくれるのであればこれほど喜ばしい事はないだろう?」


アリストンは嬉しそうに言った。


「はい。そうですね。」


フェイも嬉しそうに応えたのだった…


ご覧頂きありがとうございます★


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ブックマーク&評価の方ありがとうございます★

とても励みになってます★

最後までお付き頂けると幸いです★



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