74.記憶が戻ったエリーゼ
意識を失っていたエリーゼがゆっくりと目を開けた…
(ここは…。)
エリーゼは目を開けながら思っていた。
「エリーゼ!エリーゼ!気づいたか?!」
エリーゼが薄っすらと目を開けたのを確認したアリストンが焦り心配そうな表情でエリーゼへと声をかけた。
「あっ………。アリ…おじさ…ま…。」
エリーゼは心配そうにしているアリストンへと言った。
「え…?エリーゼ…お前…記憶が…。」
アリストンはエリーゼが自分を呼ぶ言葉に驚いた表情で呟いた。
そんなアリストンの言葉にエリーゼはゆっくりと頷いた。
「「エリーゼ!!」」
アリストンの後ろにいたマイク、ナディア、ブラットがエリーゼへと駆け寄りエリーゼに声をかけた。
アリストンがエリーゼを救出した際にすぐにメディス伯爵家へとエリーゼに起きた出来事を伝えていた為マイク達はすぐにアリストンの家へと駆けつけたのだった。
「お父様…お母様…お兄様…。」
エリーゼは目に涙を浮かべながらマイク達へと言った。
「エリーゼ!!」
「あ〜エリーゼ!エリーゼ!」
「エリーゼ…。」
マイク達三人はエリーゼの記憶が戻ったと確信した瞬間に涙を流しながら言うとエリーゼの手を優しく握ったのだった。
「今まで…忘れてて…心配かけて…ごめんなさい…。」
エリーゼは涙を浮かべながら三人へと伝えた。
「いいんだ…。そんな事気にする事はない…。」
「そうよ…。まったく気にする事なんてないのよ。エリーゼが無事だった事だけで十分なのよ…。」
「そうだよ…。よく無事でいてくれたね…。私の可愛い妹…。」
マイク達三人も涙を流しながらエリーゼの手を握り頭を優しく撫でながらエリーゼへと伝えた。
「本当に…エリーゼが無事で良かった…。私が目を離したせいで…エリーゼに辛く怖く痛い思いをさせて本当にすまなかった…。」
アリストンがエリーゼへと申し訳なさと悔しさの混じった表情を浮かべながらエリーゼへと謝った。
「アリおじさま…謝らないで下さい。私が勝手にアリおじさまから離れてしまったせいなのですから…。それに…記憶をなくした時に…アリおじさまが助けてくれなければ私は今頃どうなっていたか…。アリおじさま…助けてくれてありがとう。」
エリーゼはしょんぼりとするアリストンがこれ以上気に病まない様にと優しく笑みを浮かべながらアリストンへと伝えた。
「エリーゼ…。」
アリストンはそんなエリーゼを見て呟いた。
「お母様…起き上がらせてもらってもいいですか?」
エリーゼがナディアへとお願いした。
「ええ…。いいけれど起き上がって大丈夫なの?あなた頭を打ってるのよ?」
ナディアは心配そうな表情を浮かべながらエリーゼへと言った。
「はい。大丈夫です…。」
エリーゼは応えた。
「わかったわ。」
ナディアはそう言うとエリーゼをそっと起き上がらせた。
「さぁ…これを背中に置いてもたりかかるといいわ…。」
ナディアが起き上がったエリーゼがしんどくならない様にと枕を背中へと入れながら言った。
「お母様…ありがとう。」
エリーゼはナディアへお礼を伝えた。
そして、エリーゼは枕を背中に挟みベッドの枠へと寄りかかって顔を上げた。
顔を上げたエリーゼはとても驚いた表情を浮かべた…。
エリーゼが見た先には…
カイゼルが立っていた。
「あっ…。」
エリーゼはカイゼルの姿を見て思わず声を漏らした。
「エリーゼ……。」
カイゼルは何とも言えない様な表情を浮かべながらエリーゼの名を呟いた。
ビクリッッ!!
記憶の戻ったエリーゼはカイゼルに名前を呼ばれると身体が反射的にビクリとカイゼルに怯える様に小刻みに震えていた。
そんなエリーゼを見てカイゼルは今にも泣いてしまうのではないかという程切なく苦しそうな表情を浮かべていた。
「あっ…あ…あの…で…殿下…た…助けて頂き…あ…ありがとう…ござい…ました…。」
エリーゼは上手くカイゼルを直視出来ないまま声を震わせながらカイゼルへとお礼を伝えた。
「………。あぁ…。頭や…体や…傷の痛みは…大丈夫か…?」
カイゼルは上手くエリーゼを見れないままエリーゼへと尋ねた。
「あっ…はい…。大丈夫で…す…。」
エリーゼは声を震わせたまま応えた。
「そうか…。………。ならば…俺は帰るよ…。」
カイゼルはエリーゼの顔を見ないまま言った。
「わかり…ました…。」
エリーゼが応えた。
エリーゼが言うとカイゼルはグッと拳を握りしめながら部屋から出ていったのだった。
「殿下…。」
部屋の外で待っていたフェイが辛そうな表情を浮かべてカイゼルへと声をかけた。
「フェイ…帰るぞ…。」
カイゼルは下を向いたままフェイへと言った。
「承知しました。」
フェイが応えた。
カイゼルとフェイが一階に下りてアリストンの家から出ようとした時…
「殿下!」
マイクが急ぎ下りてきてカイゼルとフェイを見送りに来たのだった。
「殿下…エリーゼを…娘を救出して下さりありがとうございました。」
マイクが頭を深々と下げながらカイゼルへとお礼を言った。
「……。気にするな…。私がエリーゼを絶対に助けたかった…ただ…それだけだ…。」
カイゼルはマイクの方を見ることなくただ下を向いて声を震わせながら言った。
そして…そのままアリストンの家から出ていったのだった。
「殿下…。」
閉まった扉を見つめながらマイクが呟いた。
カイゼルはアリストンの家を出ると足早に歩いた。
ただ…ひたすら下を向いたまま歩いた…。
そして馬を停めている場所へと着いた。
カイゼルが馬の手綱を持ち馬に乗りかかろうとした時だった…
カイゼルの目に入ったのは割れない様にと隠し置いていた運命の花を咲かせた鉢植えだった。
「やはり…運命の花なんて…当てにはならないな…。花が咲いたとて…エリーゼの記憶が戻った途端…まるで…魔法が解けてしまった様にエリーゼは私を見て…身体を震わせる程に怯えていたじゃないか…。」
カイゼルは運命の花の咲いた鉢植えを見つめながら声震わせて言った。
「でっ…殿下…。」
フェイは今にも崩れてしまうのではないかというカイゼルを見て心配そうに言った。
「元はと言えば…私の自分勝手な行動でエリーゼの記憶がなくなってしまった…。エリーゼの記憶が戻る為に力になろうと思い行動していたのに…いざ…記憶が戻り…記憶が戻った時のエリーゼの態度など想像出来ていたのに…いざ…目の当たりにすると…結構堪えるな…。」
カイゼルは更に声を震わせながら言った。
「もう…二度と…エリーゼと楽しく笑い合いながら話をしたり出来ないのだな…。もう…二度と…エリーゼに好きと伝えて笑いかけてくれる事も…エリーゼが私に…想いを伝えてくれる事もないのだな…。」
カイゼルは目から一粒の涙をポロリと流しながら言った。
「殿下………。殿下、一先ず…王宮へ戻りましょう。陛下にも今回の件をお伝えしなければなりませんので…。」
フェイはカイゼルが心配で切ない表情を浮かべるもグッと拳を握りしめながらカイゼルへと伝えた。
「あぁ…。分かっている…。王宮へ…戻ろう。」
カイゼルは頷きながら応えると鉢植えを馬の手綱に結びつけていた麻袋へと入れると馬へと跨がった。
そして…
カイゼルとフェイは馬に乗り王宮へと戻って行ったのだった。
その頃、アリストンの家ではマイク達が邸へと帰る支度をしていた。
「では、エリーゼ…今日は私達はこれで帰るよ。」
マイクがエリーゼへと言った。
「今日は無理せずゆっくり休むのよ…。」
ナディアがエリーゼの手を握りながら言った。
「また…明日な。」
ブラットはエリーゼの頭を撫でながら言った。
「はい…。」
エリーゼは三人に頷きながら応えた。
「では…伯爵…明日、私が責任を持ってメディス伯爵邸までエリーゼを連れて帰るから。」
アリストンがマイクへと言った。
「はい。よろしくお願いします。」
マイクが頭を下げながらアリストンへと言った。
マイクに続いてナディアとブラットもアリストンへと頭を下げた。
「あぁ。」
アリストンは笑みを浮かべながら応えた。
そうしてマイク達は帰って行った。
「エリーゼ…今日はゆっくり寝て休むんだぞ…。どこか痛むとこはあるか?」
アリストンが心配そうな表情を浮かべながらエリーゼへと言った。
「うん。ありがとう…アリおじさま。痛いところも大丈夫だよ。」
エリーゼは笑みを浮かべながらアリストンへと言った。
「そうか…。それなら良かった…。荷物は明日出かける前にでもまとめる事ができるしエリーゼの身一つでメディス伯爵邸へと行っても後で私が荷物だけ届けてやる事も出来るからな。」
アリストンがエリーゼへと言った。
「うん。ありがとう…。」
エリーゼは頷きながら笑みを浮かべながら言った。
「じゃぁ…ゆっくり休めな。」
アリストンはエリーゼの頭をポンポンと撫でながら言った。
「うん…。」
エリーゼが応えた。
そんなエリーゼを見てアリストンを笑みを浮かべながら部屋を出ていこうとした。
「あの…アリおじさま…。」
エリーゼは部屋を出ていこうとしたアリストンへと戸惑いながら声をかけた。
「ん?何だ?」
アリストンはエリーゼへと尋ねた。
「あっ…ううん…。何でもないわ…。おやすみなさい…。」
エリーゼは少し迷ったが笑顔で何でもないと言うとアリストンへと寝る挨拶をした。
「……。あぁ…おやすみ。」
アリストンは優しい笑みを浮かべながらエリーゼへと言った。
エリーゼはアリストンが部屋から出ていくとふと窓際を見た。
「あっ…。」
エリーゼは窓際を見つめながら大きく目を見開いて驚いた表情を浮かべながら思わず呟いた。
エリーゼが目にしたのは窓際に置いていた運命の花の鉢植えに花が咲いていたのだった。
「運命の花が…咲いてる…。」
エリーゼは咲いた花を見て呟いた。
「はは…何で…花が咲いてるの…?カイさん…殿下との間に運命なんてないのに…。」
エリーゼは目に涙を浮かべながら呟いた。
「殿下は…どうして…私をあんなに罵倒したのに…私の前に現れたの…?私が記憶なくしたから罪滅ぼし…?私を可哀想だと思い…思ってもなく…私を好きだと…殿下…カイさんとして過ごした日々は…全て…私に対する罪滅ぼしで…全て…嘘だったの…?」
エリーゼは目からはポロポロと大粒の涙を流しながら声を震わせながら言った。
「私が願っていた…未来なんて…最初からなかったんだわ…。」
エリーゼは更に涙を流しながら言った。
その日の夜エリーゼは…
涙が枯れるまで涙を流しながらいつの間にか泣き疲れて眠ってしまっていたのだった……
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