72.誕生日当日
そして…
二日後…
エリーゼの誕生日の当日がやって来た。
王宮では王都へと出かける支度をしていたカイゼルがフェイを呼んでいた。
「フェイ!フェイ!」
カイゼルは慌てる様にフェイを呼んだ。
「はい!殿下!何事でしょうか?何かありましたか?!」
フェイは慌てるカイゼルの声を聞き急いでカイゼルの部屋へと訪れた。
「あぁ。見てくれ…。」
カイゼルは部屋に訪れたフェイへと鉢植えを見せながら言った。
「あっ…それは…。」
フェイはカイゼルが見せてくれた鉢植えを見て驚いた表情を浮かべながら言った。
「あぁ。咲いたんだよ。花が…。」
カイゼルは興奮混じりの嬉しそうな表情でフェイへと言った。
「本当ですね…。花が咲いてますね…。」
フェイは驚いた表情のまま言った。
「これは…エリーゼに見せてやらなければ!」
カイゼルは嬉しそうな表情を浮かべながら言った。
「そっ…そうですね。エリーゼ様も驚かれますね。きっと…。」
フェイは頷きながら言った。
「そうだろうな…。エリーゼの鉢植えはどうなっているだろうか…。一先ずエリーゼとアリさんが午後から出かけるのならば今から急いでアリさんの家へと向かわなければ。」
カイゼルはフェイへと言った。
「そうですね。アリさんには午前中に少しだけご自宅へお伺いすると伝えてありますので。」
フェイが言った。
「あぁ。では…すぐに支度を済ませて出かけよう!」
カイゼルは嬉しさを隠せないという表情で言った。
「はい!承知いたしました。」
フェイが応えた。
そして、カイゼルとフェイは少しでも早くアリストンの家に行く為にこの日は馬車ではなく馬を走らせて王都へと向かったのだった……
※
カイゼルが王宮を出たその頃…
エリーゼとアリストンは王都の街にある花屋へと訪れていた。
「エリーゼすまないな…。私一人ではどんな花を選んで花束にしたらいいか分からなくてな…。」
アリストンは申し訳なさそうにエリーゼへと言った。
(本当はエリーゼのお祝いに渡す花束だからエリーゼがどんな花が良いか聞きたかったんだがな。)
アリストンはエリーゼに言いつつそんな事を思っていた。
「いえ。大丈夫ですよ。それより私が本当に選んでもいいんですか?」
エリーゼはアリストンへと尋ねた。
「あぁ。もちろんだとも。」
アリストンは笑顔で応えた。
「そうですか?では…選ばせてもらいますね。」
エリーゼは頷きながら笑みを浮かべて花を選び始めた。
「選んだ花を花束にしてもらったら一度家に戻ってから再度出かけよう。あと…出かける前に少しカイとフェイがうちに寄るらしいしな。」
アリストンは花を選んでいるエリーゼへと伝えた。
「えっ?カイさんとフェイさんが来られるのですか…?」
エリーゼはアリストンの言葉に驚きながら言った。
「あぁ。その様だ。我々が出かけるからそれまでの少しの間だがな…。」
アリストンは笑みを浮かべながら言った。
(急にカイゼルが会いに来ると言うので驚いたが…これでエリーゼとまともに会えるのが最後からもしれないと思うと断れなかったな…。)
アリストンは内心ではいたたまれない気持ちになりながらそんな事を思っていた。
「そうなのですね…。」
エリーゼはアリストンの言葉を聞き嬉しそうな表情を浮かべながら言った。
「さぁ…先にカイ達が家に着いてしまうに花束を作って帰ろう!」
アリストンは嬉しそうにするエリーゼを見ながら笑顔で言った。
「はい。」
エリーゼも笑顔で応えた。
そして、エリーゼは何種類かの花を選んだ。
アリストンはエリーゼから受け取った花を店員に花束にしてもらう様にと頼んだのだった。
アリストンは店員とどの様な感じの花束にするかと話をしていた。
アリストンを待っていたエリーゼがふと花屋の近くで子供が泣いているのに気づいた。
(あの子…どうしたのかしら…)
エリーゼは泣いてる子供を見て思った。
そして、エリーゼはアリストンの方を向くとアリストンが店員と話をしていたので邪魔してはいけないと思いアリストンに声をかけないまま泣いている子供の方へと小走りでかけつけた。
「ぼく…どうしたの?迷子になったのかな?お母さんはどこかな?」
エリーゼは泣いて子供へ優しく声をかけた。
「ひっく…ひっく…ママと…はぐれて…ひっく…。」
子供はエリーゼに声をかけられると泣きながら応えた。
「あら…そうなの?迷子なのね…。もう泣かないでね。心配しなくてもお姉ちゃんも一緒にお母さんを探してあげるわね。」
エリーゼは優しく微笑みながら子供へ言った。
エリーゼの言葉を聞いた子供はコクリと頷いた。
その時…
「リト!リトー!」
女性が一生懸命誰かの名前を呼んでいた。
「あっ、ママー!」
エリーゼと一緒にいた子供がその女性を見て叫んだ。
「リト!」
女性が子供に気づき小走りでエリーゼ達の元へとやって来た。
「あの…この子のお母さんですか?」
エリーゼがかけつけた女性へと尋ねた。
「はい…。」
女性は頷きながら応えた。
「そうですか…。良かった…。」
エリーゼは女性が子供の母親だと聞きホッとしながら言った。
「ぼく…良かったね。お母さん見つかって。」
エリーゼは子供に優しく微笑みながら言った。
「うん!」
子供は嬉しそうに頷きながら言った。
そして、親子はエリーゼにお礼を言いながらその場を去っていたのだった。
(良かったわ。お母さんが見つかって。)
エリーゼは去っていく二人を優しく微笑みながら見つめて思っていた。
そしてエリーゼはアリストンの元へと戻ろうとしたその時だった………
ガバッ!!
エリーゼは何者かに後ろから手を回され口元を抑えられた。
「ンヴ…ンンン…」
エリーゼは必死に声を出そうとした。
「大人しくしろ…。」
エリーゼの耳元で男が低い声で言うとナイフをエリーゼの背中へと突き付けた。
「ッ!!」
エリーゼは自分の背中に何か鋭い物が押さえつけられてる事に気づくと声を出そうとするのをやめた。
(この人は誰…?何…?何が起こっているの…?背中には…ナイフ…の様な物が押えられてるわ…。)
エリーゼは自分がおかれている状況を必死に考えていた。
「大人しくついてこい…。」
男はそう言うとエリーゼの体を掴んだまま人気のない道の脇の方へと歩き出した。
(アリさん…カイさん…。)
エリーゼは男に連れて行かれながら心の中で叫んだのだった。
その時、花屋にいたアリストンがエリーゼが居ない事に気いた。
「エリーゼ!エリーゼ!どこだ!エリーゼ!」
アリストンは慌ててエリーゼの名前を叫んだ。
(エリーゼ…どこだ…。私が店員と話をしていてエリーゼから少し目を離してしまった…エリーゼ!エリーゼ!)
アリストンは心の中でそんな事を思いながら辺りを見渡した。
「エリーゼ!エリーゼ!」
アリストンはひたらすらエリーゼの名前を呼んだ。
「アリさん?エリーゼがどうかしたんですか?!」
アリストンはエリーゼの名前を呼んでいたらガバッと肩を掴まれた。
掴んだのはカイゼルだった。
カイゼルは慌てているアリストンを見て咄嗟に声をかけたのだった。
「カイ?」
アリストンはカイゼルを見て言った。
「エリーゼがどうしたんですか?!エリーゼに何かあったのですか?!」
カイゼルは焦った表情を浮かべてアリストンへと尋ねた。
「エリーゼが居なくなったんだ…。花屋で花束を作って貰っている間に居なくなった…。」
アリストンは悔しそうな表情を浮かべて言った。
「何ですって?!エリーゼが?!」
カイゼルは焦った表情でものすごい剣幕で言った。
「あぁ。先程から周辺を見ているが見当たらない…。」
アリストンは焦りながら言った。
「チッ!」
カイゼルは舌打ちをした。
「早くエリーゼを見つけなければ!」
カイゼルはそう言うと周辺を見渡しながら探した。
アリストンとフェイも周辺を探した。
「エリーゼ!!エリーゼどこだー!エリーゼ!」
カイゼルは必死の面持ちで大声でエリーゼの名前を叫んだ。
すると、カイゼルは地面に落ちているハンカチが目に入った。
「これは…エリーゼのハンカチ。」
カイゼルはハンカチを手に取り見ると呟いた。
そして、辺りを見渡した。
(エリーゼ!エリーゼ!どこにいる!)
カイゼルは辺りを見渡したながら心の中で何度もエリーゼの名前呼んだ。
「カイ!エリーゼはいたか?」
アリストンがカイゼルの方へと走ってきてカイゼルへと尋ねた。
「いえ…ただこのハンカチ。エリーゼのハンカチです。ここに落ちていました。」
カイゼルは焦る表情のままアリストンへと言った。
「ここにハンカチが落ちているという事は…何者かに連れ去られたのは間違いなさそうだな…。」
アリストンは悔しい表情を浮かべながら言った。
「はい…。恐らくそうでしょう…。」
カイゼルも悔しそうな表情を浮かべ拳を握りしめながら言った。
その時…
「あの…先程ここにいた女性のお知り合いですか?」
子連れの女性がカイゼル達へと声をかけてきた。
「ええ…。そうですが…。あなは…?」
カイゼルが女性へと尋ねた。
「あっ…はい。私は少し前に息子とはぐれてしまったのですがその女性が息子が泣いているところに声をかけて下さったんですが…。息子と合流出来てその女性にお礼を言って帰ろうとしたんですが息子がふと振り返るとその女性が男性に声をかけられた後にその男性と人気のないとあちらの方へと行ったと…。」
女性は困った表情を浮かべながらカイゼル達へと説明した。
「あちらの道ですか?」
カイゼルは女性の話を聞くと道の方を指さして尋ねた。
「はい。息子が言うにはその様です。」
女性は頷きながら応えた。
女性の話を聞くとカイゼルとアリストンとフェイの三人は顔を見合わせて頷ずいた。
「ありがとうございます。教えて頂き助かりました。」
カイゼルは丁寧に女性へと言った。
そしてその親子は帰って行ったのだった。
「一刻を争うので俺はこの道を辿ります。アリさんはこの道を先回り出来そうな道へと行ってもらってもいいですか?」
カイゼルは真剣な表情でアリストンへと言った。
「あぁ。わかった。馬を借りてすぐに向かう。」
アリストンは頷きながら言った。
そして、すぐにその場を離れて馬を借りに走ったのだった。
「フェイ!お前はすぐにこの事を父上に報告してくれ!レオンにもこの事を伝えてくれ!レオンにはスカ公爵邸へ行きスカイ公爵とサリー嬢の拘束をする様に指示をしておいてく!フェイは報告が終わり次第こちらへ向かってくれ!私はエリーゼを追う。」
カイゼルは真剣な表情でフェイへと指示を出した。
「承知しました。」
フェイは応えるとすぐさま行動に移した。
そして、カイゼルは馬を停めておいた場所に割れない様に鉢植えを隠してから馬に乗りエリーゼと男が歩いていったであろう道を辿ってエリーゼ達を追いかけたのだった。
(待っていろ!エリーゼ!必ず私がエリーゼを助けに行くから!)
カイゼルはそんな事を思いながら馬のスピードを上げたのだった。
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