71.その日の夜…
エリーゼは自室の窓際に鉢植えを置いた。
「運命の花か…。本当に咲くのかしら…。花一つに運命なんてって思うところもあるけれどつい咲いてほしいと思ってしまうわね…。」
エリーゼは置いた鉢植えを見つめながら呟いた。
「この花が咲いたらカイさんが運命の人なのかもしれないと期待してしまう自分がいるのよね…。もしも願うならカイさんとこれからもずっと一緒に過ごせるといいな…。」
エリーゼが更に鉢植えを見つめながら呟いた。
そんなエリーゼの事をアリストンがこっそりと覗いていた。
(はぁ…エリーゼはカイゼルの事を心の底から想っているのだな…。カイゼルもそうだが…エリーゼとカイゼルの気持ちを思うとメディス伯爵がエリーゼに話をする日が近づくにつれてやるせない思いになるな…。やはり…二人には二人が思い描いている未来は訪れないのだろうか…。)
アリストンは鉢植えを見つめるエリーゼを見て切ない表情を浮かべてそんな事を思っていた。
そして…そっと扉を閉めたのだった。
同じ頃…
王宮では…
「殿下、その鉢植えは何なのですか?」
フェイがカイゼルの持ち帰った鉢植えを見て呟いた。
「あぁ…これか…。これは今日エリーゼと出かけた際に物売りから購入した物だ…。運命の花が咲くという鉢植えらいし…。」
カイゼルは鉢植えを見つめながら応えた。
「運命の花ですか…?」
フェイは首を傾げながら尋ねた。
「あぁ…。物売りが鉢植えを購入した者同士の鉢植えに二三日の間に花が咲けばその二人は運命の相手だと…。もし…咲かなければ二人は運命の相手ではないと言っていた。」
カイゼルがフェイに説明した。
「そういう意味ですか…。しかし…えらく胡散臭い鉢植えですね。」
フェイは困った表情を浮かべて言った。
「あぁ…。私も胡散臭いとは思ったんだが…何故か購入してしまってな。もしも…この花が咲けばエリーゼの記憶が戻ってもエリーゼとの関係は続けれるのではないかと自分本位な考えを思ってしまってな…。」
カイゼルはとても切ない表情を浮かべながらフェイへと言った。
「殿下…。」
フェイはやり切れない表情で呟いた。
(殿下の気持ちが痛い程伝わってくるな…。しかし…今日の王兄殿下の話だと二日後にはメディス伯爵がエリーゼ様に記憶をなくす以前の事をお話される様だが…。思ったよりも早くエリーゼ様はカイさんが王太子殿下だという事を知る事になるだろう…。たとえ記憶が戻らなくともカイさんが殿下だという事実だけでもショックは大きいだろうからな…。この事はとても殿下にはお話出来ないな…。王兄殿下の方から殿下にお話される様だが…。まさか…運命の花が咲くとやらの鉢植えを買った今日が二人で過ごす最後の日になるかもしれないと思うとやり切れないな…。せめて…二日後がエリーゼ様のお誕生日だという事くらいはお伝えしておいてあげよう…。)
フェイは切ない表情のカイゼルを見ながらそんな事を思っていた。
「そうだ…。殿下!今日アリさんからお聞きしたのですが二日後の明後日はエリーゼ様のお誕生日だそうですよ。」
フェイは空気を変えようと笑顔でカイゼルへと言った。
「何?エリーゼの?」
カイゼルは言った。
「はい。午後からはアリさんとお出かけになる様ですが午前中でしたらご自宅におられるでしょうし少し会いに行かれてはどうですか?エリーゼ様ご本人にはお誕生日だという事をお話されていない様ですが…。」
フェイがカイゼルへと説明した。
「そうか…。エリーゼの誕生日か…。本人には伝えていないのならばプレゼントなどは渡せないが…そうだな…。少し顔を見に行こう。急に行ってもアリさんは大丈夫だろうか?」
カイゼルは少し表情を緩めながら言った。
「アリさんには私の方から手紙の方をお出ししておきます。」
フェイは笑顔でカイゼルへと言った。
「そうか。では頼んだ。」
カイゼルが言った。
「はい。承知いたしました。」
フェイが応えた。
(そうか…。エリーゼの誕生日か…。記憶がないのでお祝いなどは出来ないが花束くらいなら普通にあげてもいいだろうか…。あっ…花か…。それまでに鉢植えの花が咲けばそれをエリーゼに見せてやれるのだが…。)
カイゼルは鉢植えを見ながらそんな事を考えていたのだった。
また同じ頃…
スカイ公爵邸では…
「お父様…二日後に決行が決まりました…。」
サリーがスカイ公爵の書斎でスカイ公爵へと話をしていた。
「そうか…。二日後か…。抜け目なく話を進めたんだろうな?」
スカイ公爵はサリーへと言った。
「もちろんです…。エリーゼ様が今住んでいる場所も家主にバレない様に突き止めてある様ですので…。」
サリーはニヤリと不気味に笑みを浮かべながら言った。
「そうか…。やはりあの者達の仕事ぶりは驚くほど抜け目がないな。」
スカイ公爵は頷きながら感心しながら言った。
「えぇ…。お陰でエリーゼ様を私の希望通りに始末してくれそうです。エリーゼ様にはとても…苦しんで悲しみにくれながら死んで欲しいですからね…。私の居場所である殿下の横に立ったことを後悔させてやりますわ…。」
サリーは憎しみのこもった表情を浮かべながら言った。
「まったく…サリーの考える事は冷酷だな…。ははは…これでメディス伯爵もどん底に落ちるだろう…。これからはあの者たちのどこか気に喰わない態度を見なくて済むと思ったら清々する。」
スカイ公爵は笑みを浮かべながら言った。
「えぇ。そして、王太子妃の座は必ず私が勝ち取ってみせます。そうすればお父様は王太子妃…将来の王妃の父ですわ。」
サリーはニヤリと笑みを浮かべながら言った。
「あぁ…。そうだな。王族の後ろ盾を手に入れれば怖いものなどないからな…。」
スカイ公爵もニヤリと笑みを浮かべながら言った。
「もうすぐ私達がすべてを手にする日がやって来ますわ…。」
サリーは悪い笑みを浮かべながら言ったのだった。
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