70.運命の花
エリーゼの誕生日まで残り二日と迫った日……
この日、エリーゼとカイゼルは午前中にアリストンの仕事を手伝った後にアリストンから許可を貰い午後から二人で王都の街を歩いていた。
アリストンが出かけるのを許可したのは、マイクがエリーゼへと話をする日が近づいている事もありカイゼルがエリーゼと今の様に過ごせる日が残り少ない事を知っているからこその叔父としての優しさだったのだ…。
「ダラスさんお元気そうでしたね。奥様のランさんも初めましてでしたがとても気さくで優しい方でしたね。」
エリーゼはカイゼルの横を歩きながらカイゼルへと笑顔を浮かべながら言った。
「あぁ。久しぶりに会ったがダラスさんが元気そうで何よりだったな。奥さんもダラスさんの奥さんって感じの人だったな。それにダラスさんの手伝いをするのも久しぶりだったな。」
カイゼルも軽く微笑みながら応えた。
「はい。久しぶりのお手伝いでしたね。二回目ですが鶏の卵を採るのはやっぱり大変でしたね。」
エリーゼはくすくすと笑みを溢しながら言った。
「本当だな…。あれは何度挑戦しても大変さは変わらないだろうな。エリーゼは前回も今回も鶏に群がられていたな。」
カイゼルも笑み浮かべながら言った。
(動物にすら好かれるとは…エリーゼの人の良さは本当に滲み出ているんだろうな…。)
カイゼルはエリーゼに話しながらそんな事を思っていた。
「何故だか群がられて…。群がられると余計に卵を回収するのが大変でした。」
エリーゼは困った表情を浮かべながら言った。
「はは…見ているこっちにまで伝わる程大変そうだったな。」
カイゼル笑いながら言った。
「あっ…そうだ!鶏で思い出したのですがテオは元気にしていますか?初めてテオに会って以来テオを連れてこられていないので…。」
エリーゼはハッと思い出した様にカイゼルへと言った。
「あぁ。テオは変わらず元気にしているさ。寒さが増してきたせいか暖かい場所ばかりにいるからか外にあまり出たがらないんだよ…。」
カイゼルは少しバツが悪そうな表情で応えた。
(テオが寒さを億劫に思っているののは事実だが…本当はテオをエリーゼの元へ連れてくるとテオがエリーゼの元を離れないからエリーゼもテオに構ってばかりいるからそれを私がいい気がしないのだ…なんて事言える訳ないよな…。)
カイゼルはエリーゼに話しながら内心はそんな事を思いながら苦笑いしていた。
「そうなのですね…。それは残念ですね…。もう少し寒さがましになって機会があればまたテオを連れて来て下さいね。」
エリーゼは少し残念そうな表情を浮かべながら言ったがすぐに笑顔を浮かべてカイゼルへと言った。
「あぁ…。また連れてくるよ。」
カイゼルはふっと…笑みを浮かべながら応えた。
「はい。よろしくお願いします。」
エリーゼは笑顔で言った。
グゥ~………
突然カイゼルのお腹の音がなった。
自分のお腹の音が鳴った事にカイゼルは気まずそうに恥ずかしそうに苦笑いを浮かべた。
「ふふふ…。もうお昼時ですもんね。今日はダラスさんのお手伝いをして体力も使いましたし…。」
エリーゼは堪え笑いを浮かべながらカイゼルへと優しく言った。
(ふふ…カイさん可愛いわね…。カイさんでもお腹が鳴るのね。ふふふ…。)
エリーゼは恥しそうに気まずそうにしているカイゼルを見ながらそんな事を思っていた。
「そっ…そうだな…。」
カイゼルは恥ずかしそうに苦笑いを浮かべたまま言った。
「何か食べましょう。すぐに食べれそうなものがいいですね…。あっ!!」
エリーゼは恥ずかしそうにしているカイゼルを愛おしそうに見つめながら優しく言うあるものが目に入った。
「どうした?」
カイゼルがエリーゼへと尋ねた。
「カイさん、あれを食べませんか?クレープというんですけど。」
エリーゼがクレープ屋を指差しながらカイゼルへと言った。
エリーゼの目に入ったのは前に兄のブラットが食べさせてくれたクレープ屋だったのだ。
「クレープ?とは…何だ?」
カイゼルがエリーゼへと尋ねた。
「カイさんは食べた事ないですか?では、尚更食べましょう。とても美味しいんですよ。」
エリーゼは満面の笑みでカイゼルへと言った。
「そうなのか…?では、食べてみようか。」
カイゼルが頷きながら言った。
「はい。」
エリーゼが応えた。
そして、二人はクレープ屋へと行くとクレープと暖かい飲み物を購入した。
そして、近くのベンチへと腰かけてクレープを食べ始めた。
「うん…。それは美味いな。初めて食べたが生地がもちもちしていて手軽に食べられるのもいいな。」
カイゼルはクレープを食べて驚きながら言った。
(エリーゼは記憶がなくとも美味しものを知っているだな。アリさんが連れてやったのだろうな。)
カイゼルはエリーゼと話しながらそんな事を思っていた。
「そうでしょ?前にもここのクレープ屋さんのクレープを食べたんですけどカイさんにも食べてもらう事が出来て良かったです。」
エリーゼは嬉しそうに笑いながらカイゼルへと言った。
「アリさんが連れて来てくれたのか?」
カイゼルは何気なしにエリーゼへ尋ねた。
「いえ、アリさんの知り合いの方の息子さんのブラットさんです。」
エリーゼが応えた。
「ブラットさんだ…と?!」
カイゼルは驚きの表情を浮かべながら少し声を張って言った。
「はい…。そうですけど…。」
カイゼルが声を張ったのでそれに驚いた表情を浮かべながらエリーゼは言った。
「そうか……。」
カイゼルは明らかに拗ねた様な表情を浮かべながら少し下を向いて呟いた。
(前に…フェイと王都へ出てきた際にエリーゼと男が一緒にいたところを見たが…あの時の男に違いないな…。アリさんの知り合いの息子と言っていたかが見かけた時は二人は楽しそうに話をしていたと思ったが…。その男はエリーゼに気があるのだろうか…。)
カイゼルは呟きながらもモヤモヤしながらそんな事を考えていた。
そんなカイゼルをエリーゼがじっと見ていた。
そして……
「違っていたら…ごめんなさい…。もしかして…カイさん…ブラットさんに嫉妬してるんですか…?」
エリーゼが下を向いているカイゼルへ向かってモゴモゴ言いながら尋ねた。
「なっ……!そんな事は……………ある……。そうだ…。俺は…そのブラットとやらに嫉妬したんだ…。」
エリーゼに尋ねられたカイゼルはバッと上を向きエリーゼの方を見ながら驚いた表情を浮かべて言葉を詰まらせたが観念したかの様にバツが悪そうな表情を浮かべて言った。
「っ!!」
エリーゼはそんなカイゼルの言葉に驚き思わず口を手で押さえた。
「かっこ…悪いと思っただろ…。たが…俺の知らない時にエリーゼとその男が楽しく過ごしたのかと思うといい気はしなくてな…。」
カイゼルはバツが悪そうな表情のまま言った。
「かっこ悪いなんて…思いません。むしろ…それだけカイさんが私の事を想ってくれているんだな…と思いました。」
エリーゼは少し照れた様な表情で言った。
「本当に…。かっこ悪いと思ってないのか…?」
カイゼルはエリーゼの方を向いて尋ねた。
「はい…。それに私も逆にカイさんから知らない女の人の名前を聞いたら焼きもちを焼いてしまうかもしれません…。」
エリーゼはもじもじとしながら言った。
「エリーゼ…君はまったく…。」
カイゼルはエリーゼの反応を嬉しいと思い何ともいえない笑みを浮かべながら呟いた。
そんなカイゼルを見たエリーゼは照れ笑いを浮かべたのだった。
「おやおや…そこのお二人さん。初々しいのなぁ。」
エリーゼとカイゼルがそんなやり取りをしていると急に一人の中年男性に声をかけられた。
エリーゼとカイゼルは声をかけてきた中年男性の方を見た。
「誰だ…?」
カイゼルはすぐに警戒して中年男性へと尋ねた。
「あぁ…これはすまないね。急に声をかけたら驚くよな…。俺は物売りなんだよ。あんたら二人へぴったりな物があったから思わず声をかけてしまったんだよ。」
中年男性はエリーゼとカイゼルへ笑いながら説明した。
「私達にぴったりな物ですか?」
エリーゼは不思議そうに中年男性へと尋ねた。
「あぁ。これなんだがな…。」
中年男性はそう言うと二人の前に二つの鉢植えを差し出した。
「これは…?」
カイゼルは警戒心を持ったまま尋ねた。
(この男から殺気は感じないが…エリーゼを狙って声をかけてきた訳ではなさそうだな…。)
カイゼルは内心はそんな事を思っていた。
「あぁ。これは…運命の鉢植えと言われている鉢植えなんだよ。」
中年男性は二人へと鉢植えを見せながら説明した。
「運命の鉢植え…ですか?」
エリーゼは尋ねた。
「そうだ。鉢植えをそれぞれ一つづつ持って帰り窓際に鉢植えを置き毎日水をやるんだ。もしも…二人が運命の相手であるのなら早ければ翌日…もしくは二三日でお互いの鉢植えの蕾が開き綺麗な赤い花が咲くだろう。何日も花が咲かず…もしくはすぐに枯れてしまえば二人は運命の相手ではないという事だ。」
中年男性は二人へ更に説明した。
「花が咲けば運命の相手で…花が咲かなければ運命の相手ではない…。」
エリーゼが説明を鉢植えを見つめながら聞き呟いた。
「……。エリーゼ…この鉢植えを欲しいのか?」
カイゼルは鉢植えを見つめるエリーゼへと尋ねた。
「えっ…?あっ…えっと…。」
エリーゼはカイゼルへ尋ねられて慌てて言った。
(欲しいけど…怖いな…。もしも…花が咲かなかったらと思うと…。)
エリーゼは応えながらそんな事を思っていた。
「この鉢植え二つ買うよ。」
カイゼルが中年男性へと言った。
「えっ?カイさん?」
エリーゼは驚きカイゼルへと言った。
「胡散臭い話ではあるが試しに買ってみてもいいんじゃないかと思ってな…。こんな事で運命などわかるわけないが…。」
カイゼルはエリーゼの顔を見ながらどこか切ない表情を浮かべながら言った。
(胡散臭いと思いながらもこんな鉢植えにすら希望を持ってしまう自分がいるなど情けない話だな…。だが…この花が咲けばもしかしたら…エリーゼの記憶が戻ってからもエリーゼとこの関係を続けられるかもしれない…。そんな希望が持てるかもしれない…。)
カイゼルはエリーゼに話しながらそんな事を思っていた。
「……。分かりました。買いましょう。買ってお水をあげてみましょう…。」
エリーゼは頷きながらカイゼルへと言った。
「お買い上げありがとうございます。早速帰ったら水をあげてやってくれ。」
中年男性はそう言うと鉢植えをそれぞれ包み袋に入れながら二人へと言った。
そして、二人は中年男性からそれぞれ鉢植えを受け取ったのだった。
「二人の未来に幸あれ…!」
中年男性は二人へとそう言うとその場を離れてどこかへ行ったのだった。
そして、あっという間に帰る時間になりエリーゼとカイゼルはアリストンの家へと向かった。
「花…咲きますかね…。運命なんて…花一つで決まるものではないと思いますが何だか緊張します…。」
エリーゼは歩きながら少し心配そうな不安そうな表情を浮かべながら呟いた。
「そうだな…。あの中年男性の商売文句の様なものだろうが…緊張する気持ちは分からない事はないな…。」
カイゼルが応えた。
(本当は…私も不安で仕方ないな…。商売文句だったにせよエリーゼの記憶が戻ったらの事を思うとこんな鉢植え一つにも敏感になってしまいそうだ…。)
カイゼルは話しながらそんな事を思っていた。
話しをしていたらあっという間にアリストンの家に着いた。
「カイさん…もし…この鉢植えの花が咲いたらお互いの花を見せ合いませんか?」
エリーゼがアリストンの家の扉を叩く前に笑みを浮かべながらカイゼルへと言った。
(花が咲いたら…カイさんと一緒に喜びたいもの。)
エリーゼはカイゼルに話しながらそんな事を思っていた。
「あぁ…。もちろんだ。そうしよう…。」
カイゼルも笑みを浮かべながら応えた。
二人はそんな約束をしたのだった。
今日は節分ですね…
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