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69.傷つけたくない思い…

エリーゼとカイゼルが出かけた翌日…


エリーゼは馬に跨がるアリストンの後ろへと乗っていた。


(あの…夢は…一体何だったのかしら…。ふり返った見えた顔はカイさんだった…。それも見たこともない程の冷たい目をした怖い顔だったわ…。確かに初めは表情も堅く少し怖そうな人だなって思ったけれど…それでもあんなにも冷たい目をしたカイさんを見たことなんて一度もないわ…。冷たいどころか…不器用ながら優しさが垣間見える人だもの…。だから私は…そんなカイさんにいつの間にか惹かれていたんだもの…。じゃぁ…何故…私は…あんな怖いカイさんの夢を見たの…?記憶をなくす前からカイさんは私を知っていた…?でも…カイさんはアリさんのお仕事の知り合いだものね…。前から私を知っているとしたらアリさんも嘘をついているという事になるものね…。でも…アリさんが嘘をついている様には思えないしな…。)


エリーゼはアリストンにしっかり捕まりながらも昨夜見た夢の事を頭を悩ませながら考えていた。


そして…


「あの…アリさん…。一つ聞いてもいいですか?」


エリーゼは迷ったあげく思い切ってアリストンへと尋ねた。


「ん?何だ?」


アリストンは急なエリーゼからの質問を不思議に思って言った。


「……。あの…カイさんはアリさんのお仕事でのお知り合いなんですよね?」


エリーゼはアリストンへと尋ねた。


「ん?あぁ…。そうだが…。それがどうかしたのか?」


アリストンがエリーゼへと尋ね返した。


「あっ…いえ…。特に何もないんですけど…カイさんは前から私の事など知ってるなんて事はないですよね?」


エリーゼは更に思い切ってアリストンへと尋ねた。


「……。そうだな…。そんな話は聞いていないし私が知る限りでもカイがエリーゼの事を前から知っていたとは思えないが…。」


アリストンは前を向いたまま応えた。


「そうです…よね。」


エリーゼは言った。


(やっぱりそうよね…。そもそも前から私を知っているなら最初に私に会った時に知合いだって話すはずだのね…。やっぱり私の考えすぎみたいね…。あの夢に出てきたカイさんの表情は気になるけど気にしても仕方ないかもしれないわね…。)


エリーゼはアリストンの応えを聞くと返事をしながらそんな事を考えていた。


「しかし…何故急にそんな事を?」


アリストンがエリーゼへと尋ねた。


「あっ…いえ…。特に理由はないんです。すいません…。急におかしな事を聞いてしまって。気にしないで下さい。」


エリーゼはアリストンに言われて慌てて応えた。


「そう…なのか?まぁ…いい。気にしないでおくよ。」


アリストンはエリーゼへとそう言った。


しかし…

アリストンはそう言いながらも何かを考える様な難しい表情を浮かべていたのだった。




エリーゼとアリストンが乗った馬はメディス伯爵家の領地へと到着した。


この日はマリア、ユーリ、ロイの休みが重なる日だったのでそれを知ったマイクが気を利かせてくれてエリーゼと過ごす時間を設けてくれたのだった。


今のエリーゼは以前に王都で少しだけ会ったマリア達の事をブラットの知合いだと思っているのでこの日もブラットの所へと遊びに来たという設定になっていた。


領地に着くなりエリーゼはブラット、マリア、ユーリ、ロイと共に野菜を採ったり牛からミルクを搾ったりと楽しい時間を過ごしていた。


五人が楽しそうにしている様子を見たアリストンがマイクとナディアをに話があるといい三人は小屋へと入っていった。


「王兄殿下、お話というのは?」


マイクがアリストンへと尋ねた。


「あぁ。昨日は事前に話していた通りエリーゼとカイゼルが出かけた。私とフェイは念の為に二人の後をこっそりとつけてにた。まあ…カイゼルには気づかれていた様だがな。それで、二人が王都の街へと出て少し経ったぐらいから怪しい男が一人二人の後をつけていてな…。」


アリストンが昨日の事をマイクとナディアへと説明報告した。


「怪しい男ですか?!」


マイクが表情を険しくさせながらアリストンへと尋ねた。


「あぁ…。見たところ王都で汚れ仕事を受ける裏の人間だろうと思う…。」


アリストンは頷きながら言った。


「裏の汚れ仕事といいますと…殺人をも受ける者…という事ですね…。」


マイクは表情を歪めながら言った。


「そんな…。」


横にいたナディアは口元を両手で覆い驚いた表情を浮かべながら呟いた。


「あぁ…そうだ。足跡を残さない事から捕まえる事も困難な状況で仕事をこなす事から貴族達もその者達に仕事依頼をする事も珍しくないと聞く…。」


アリストンは険しい表情を浮かべながら説明した。


「貴族…ですか?という事は…まさか…!」


マイクが驚いた表情を浮かべながら言った。


「あぁ…。そのまさかだ。あくまで仮定での話だがスカイ公爵経由で娘のサリー嬢がエリーゼの件を依頼した可能性が高い。」


アリストンは表情を歪ませながら言った。


「やはり…スカイ公爵絡みですか…。」


マイクは表情を歪ませながら言った。


「仮定だが…恐らくその可能性が高いだろう。怪しい男については勿論カイゼルも気づいていた。カイゼルもその男が自分ではなくエリーゼの後をつけていたとすぐに確信した様だ。私とフェイ、カイゼルも用心しながらその男の様子を見ていたが途中エリーゼが少し体調を崩してしまった際にどこかへ消えて行ったのだ。」


アリストンがマイクとナディアへと説明した。


「エリーゼの体調は大丈夫だったのですか?!」


ナディアが慌ててアリストンへと尋ねた。


「あぁ。すぐにカイゼルが休める場所まで運び少し休んだら大丈夫な様だった。恐らくまた記憶が戻り始めている前兆の頭痛だと思われる。」


アリストンがナディアとマイクを安心させる様に言った。


「そうですか…。」


ナディアはアリストンの言葉を聞いてホッとした表情を浮かべながら呟いた。


「裏の汚れ仕事をする者が動き始めたのであればこれまで以上に警戒を強めなければならない。エリーゼを一人で行動させる事はまずないがエリーゼが一人で行動していないとしても相手はその手の仕事のプロだ。絶対に油断は許されない。」


アリストンは真剣な表情を浮かべながらマイク達へと説明した。


「はい。承知しております。何があろうとエリーゼを危険な目には遭わせません!」


マイクは真剣な表情で応えた。


「あぁ。ガストンへと既にこの事については手紙を出してある。いざとなったら王宮の兵もすぐに動かせる様にしてくれるだろう。」


アリストンが説明した。


「王兄殿下と陛下のお心遣い感謝致します。」


マイクが頭を下げながらアリストンへとお礼を言った。


「本当に感謝致します。」


ナディアも頭を下げながらアリストンへとお礼を言った。


「二人共気にするな。エリーゼは私にとっても娘の様なものだ。それに命の恩人であるナディア伯爵家の為ならこれくらいはお安い御用だ。」


アリストンは笑顔でマイクとナディアへと言った。


(まぁ…約一名…フェイは私がエリーゼの事を異性として好いていると勘違いしている様だがな…。)


アリストンはマイク達に話しながらそんな事を思っていた。


「「ありがとうございます。」」


マイクとナディアは同時にお礼を言った。


「それと…あと二つ程報告があるのだ。」


アリストンはまた難しそうな表情を浮かべながらマイク達へと言った。


「それは…。」


マイクが尋ねた。


「あぁ。一つはエリーゼの記憶が思ったよりも戻り始めているのかもしれない…。先程、ここへくる途中で急にカイゼルは私の仕事の知り合いなのかを改めて聞いてきた上に、カイゼルは前から自分の事を知っているのか?と尋ねてきたのだ…。」


アリストンがマイク達へと説明した。


「?!エリーゼが殿下の事を思い出したという事でしょうか?」


マイクはアリストンの話を聞いて慌てて尋ねた。


「いや…それはないようだ…。ただ…少なくとも記憶が頭の中を過る際にカイゼルの顔も過ぎったのではないかと推測している…。きっとエリーゼも今のカイゼルではないカイゼルが頭の中を過ぎったから私に尋ねてきたのではないかと…。」


アリストンが説明した。


「なるほど…。しかし…そうなると殿下の事を殿下と思い出し自分が殿下にどの様な仕打ちをされたのかを思い出すのは時間の問題の様な気がしてなりません…。そうなるとエリーゼはとても傷つくでしょう…。それならば殿下には申し訳ありませんがエリーゼと距離を置いて頂かなければ…。」


マイクは困った様な悩む様な表情を浮かべながらアリストンへと言った。


「あぁ…。メディス伯爵の言うとおりなのだが…。ここで二つ目の報告が絡んでくるとなかなかの悩みの種なのだ…。」


アリストンは困った表情を浮かべながら言った。


「と…いいますと…?」


マイクは意味がわからないという表情を浮かべながらアリストンへと尋ねた。


「それがだな…二つ目の報告というのは…昨日聞いたばかりの事なのだがどうやらエリーゼとカイゼルはお互いに想い合っている様なんだ…。」


アリストンは困った表情を浮かべたままマイクとナディアへと説明した。


「なっ…なんでと?!」


マイクは思わず目を見開きながら驚き言った。


「それは…本当なのですか?」


ナディアも思わず驚いた表情で言った。


「はぁ…。どうやら本当の話の様だ…。」


アリストンはため息混じりに応えた。


「そんな…まさか…そんな事が起きていたなど…。」


マイクはどうしたらいいかわからないという表情を浮かべて頭をかかえながら言った。


「あぁ…。どうしたらいいのでしょう…。まさか殿下とエリーゼが想い合う事になるとは…。エリーゼが想いを寄せているのは今の殿下…。きっと記憶が戻った時にエリーゼは更に傷つく事になってしまいます…。エリーゼにそんな思いはこれ以上して欲しくありません…。」


ナディアは娘を思う気持ちから涙を浮かべながら言った。


「私もこの事実には頭を抱えている…。カイゼルも自分にはエリーゼを想い気持ちを伝える資格もないという事は理解していた様だがどうにも気持ちが抑えきれなかった様だ…。エリーゼの方もカイゼルと自分の気持ちが同じだという事を知りとても喜んでいる様だった。二人の雰囲気を見ていれば一目瞭然だった…。」


アリストンも頭を抱えながら説明した。


「王兄殿下…エリーゼは今嬉しくて幸せ気持ちなのかもしれません…。しかし…その先に待っているものがあまりにも残酷なものです。親としては娘がこれ以上傷つくのは見たくありません…。ですので少しでも傷が浅くする為にもエリーゼへ私達から記憶がなくなる前の事を話させて頂きたいのです…。エリーゼが私達メディス伯爵家の娘だという事…エリーゼが王太子妃候補で入宮した事…そして殿下との事…。エリーゼにしてみたらその様な事を聞かされるのは辛い事かもしれませんが記憶が戻りかけているのならばその事がきっかけに記憶を取り戻すかもしれません。今まではエリーゼのペースでと思っていましたが今の話を聞いてしまってはやはりこの決断をせざるおえません…。」


マイクは苦渋の表情を浮かべ拳を握りながらアリストンへと言った。


「メディス伯爵…。」


アリストンはマイクの表情を見て切ない表情を浮かべながら呟いた。


「……。分かった…。私もエリーゼが傷つき傷が深くなるのは辛い…。親であるメディス伯爵と夫人はもっと辛いだろう…。親である二人がそう思うのであれば二人の意見を尊重しよう…。カイゼルは私にとっては甥だが元はと言えばカイゼルが原因なのだから仕方あるまい…。」


アリストンは悩んだ末にマイクの意見を了承したのだった。


「ありがとうございます…。感謝致します。」


マイクは頭を下げてアリストンへとお礼を言った。


「ありがとうございます…。」


ナディアも頭を下げてアリストンへとお礼を言った。


「エリーゼへ話をするのはいつにするのだ?」


アリストンが尋ねた。


「はい。もうすぐエリーゼの誕生日なのです…。ですので誕生日にエリーゼを我が邸に呼び我々、マリアさん達…で誕生日を祝った後に話をしようかと思います…。」


マイクはアリストンへと説明した。


「そうか…。分かった。もし良ければ私もアリとして行ってもよいか?」


アリストンがマイクへと尋ねた。


「ええ。それは構いません。エリーゼも喜ぶでしょうから。」


マイクは笑顔で応えた。


「ありがとう。ただ…先程カイゼルの事聞かれたが知らないと応えたからエリーゼには嘘つき呼ばわりされてしまうかもしれないな…。」


アリストンは少し寂しそうに言った。


「大丈夫です。エリーゼはその様な事を言って責めるような子ではありませんから。」


ナディアが笑顔でアリストンへと言った。


「はは…ありがとう。」


アリストンは笑みを溢しながら言った。


「では…その日は私がエリーゼをメディス伯爵邸へと連れて行くとしよう。」


アリストンが言った。


「「よろしくお願い致します。」」


マイクとナディアがアリストンへとお礼を言った。


三人の話が終わった頃にちょうどエリーゼ達が小屋へと戻ってきたのでその後皆で仲良く昼食を取りながら笑いが絶えない楽しい時間を過ごしたのだった。



この時…

エリーゼを始め…

ここにいた全員がまさかエリーゼの誕生日の日に悲劇が起こるなど想像もしていなかったのだった……。

ご覧頂きありがとうございます★


他にも連載中の小説がありますのでよろしければご一緒にご覧下さい★


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この度、男装令嬢・キャサリンは探偵助手をする事になりました!!

〜探偵様は王子様?!事件も恋も解決お任せ下さい〜


公爵令嬢シャーロットは、3度目の人生を生き抜くと決意しました!!



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