68.歪む思いと苦渋の思い
エリーゼとカイゼルが別れたその頃スカイ公爵邸では……
ガシャーーン!!
パリンッ!
ガシャーン!!
サリーが自室で色んな物を壁に投げつけていた。
「おっ…お嬢様!大きな音がしましたが大丈夫ですか?」
部屋の中から物が割れる音がしたのを聞いたサリーの侍女が慌てて部屋の外から尋ねてきた。
「うるさい!あっちに行って!」
サリーは物凄い勢いで侍女へと言葉を吐き捨てた。
「しょ…承知しました…。」
侍女はすぐにサリーの機嫌を察して応えた。
ガシャーーー!
「はぁ…はぁ…はぁ…。」
サリーは息を切らしながらも怒りが湧き上がった表情を浮かべていた。
「どうして…どうしてなの…。」
サリーは表情を歪めながら呟いた。
「エリーゼ様を始末するお願いをする為に王都に出たら…まさか…殿下とエリーゼ様が二人でいるところを目撃するなんて…。エリーゼ様を始末する男達にエリーゼ様の顔を教える手間は省けたけれど…。何故…二人はあんなに楽しそうにしていたの…?まるで…二人はお互いを想い合っている恋人の様にも見えたわ…。」
サリーは更に表情を歪めて言った。
「一体どうなっているの…。エリーゼ様の記憶がないというのに何故殿下はわざわざ王都にまで出られてエリーゼ様との時間を過ごしているの…?意味が分からない…。」
サリーは表情を歪めたままブツブツと言っていた。
「あんな…あんな身分の低い低貴族の分際で殿下の横を歩くなんて…本来殿下の横には私が居るはずだった場所なのよ。許さない…絶対に許さない…。あんな目障りな令嬢なんて早くこの世からいなくなればいいのよ…男達にはエリーゼ様を悲惨に…残酷に…最後の最後まで苦しむ様に始末してもらう様に伝えておかないとね…。」
サリーは表情を歪めたまま言っていたがスーッと不気味な笑みを浮かべて呟いたのだった。
「今に見てなさい…。殿下の横には必ず私が立ってみせるわ…。」
サリーはニヤリと口角をあげながら呟いたのだった。
そして…
サリーは汚れ仕事をする男達へと依頼内容の追加の手紙を書き男達の元へと手紙を届けさせたのだった。
※
アリストンと別れたカイゼルとフェイは王宮へと到着していた。
カイゼルは王宮へ着くなり執務室へ向かい執務をこなしていた。
カイゼルはいつもより上機嫌で執務をこなしたせいか早めに執務を終える事ができたのだった。
「殿下、お茶を淹れましたのでよろしければお飲みください。」
フェイがお茶を淹れてカイゼルの元へと運んできてくれた。
「あぁ。悪いな。ありがとう…。いただくよ。」
カイゼルはフェイにお礼を言うとお茶を一口飲んだ。
「うまない…。」
カイゼルが言った。
「殿下…やはり今日はとても上機嫌でおられますね。」
フェイがカイゼルの表情を見て言った。
「あぁ…。今日は私の今までの人生の中で一番幸せな日かもしれない…。」
カイゼルは幸せそうに微笑みながら言った。
「ははは…そうかもしれませんね…。」
フェイが笑みを溢しながら言った。
「まさか…エリーゼも私の事を慕っていてくれていたとは…未だに現実だという事が嘘のようだ…。」
カイゼルがフッと笑みを浮かべながら言った。
「それについては…私も驚きました…。まさかエリーゼ様がデンカノ事を…。」
フェイが驚いた表情を浮かべながら言った。
「本当…私がエリーゼに想いを伝えれる立場ではないのも分かっていた。しかし…本当にあの時は…あの時のエリーゼを見ていたら自分の気持ちが抑えられなかったのだ…。」
カイゼルは苦渋の表情を浮かべてフェイへと説明した。
「よほど…殿下のエリーゼ様を思うお気持ちがいっぱいだったのですね…。」
フェイは切ない表情を浮かべて言った。
「そうかもしれないな…。エリーゼの記憶が戻ればきっとエリーゼは傷つく…。そう分かっていてもエリーゼも私を好いてくれているという事が嬉しくてどうしようもないのだ…。王太子である私がこの様に感情も制御出来ないなど良くない事もリカイしている…。しかし…今だけは…と思ってしまう自分がいるのだ…。本当に愚かな考えだがな…。」
カイゼルは更に苦渋の表情を浮かべてフェイへと言った。
「殿下…。」
フェイはカイゼルの表情を見て胸が痛みながら呟いた。
(二人を待っているものは残酷な現実に変わりないが…今のお二人を見ているとこのままお二人が幸せでいられる事は出来ないのだろうかと思ってしまうな…。まぁ…そんな上手い話などある訳がないな…。王兄殿下もエリーゼ様に想いを寄せておられるのだからエリーゼ様が傷つく事になるのであれば何かあれば黙ってはいないだろうしな…。)
フェイはカイゼルを見つめながらさんな事を思っていた。
「エリーゼの記憶が戻り私の事を思い出した時…想像しているよりも辛い現実が待っているかもしれない…。ただ…今だけはエリーゼとのこの気持ちと時間を大切にしたい…。この先…私はエリーゼと結ばれる事などないのだからせめて…エリーゼとの思い出だけでも…その思い出があれば私はこの先どんな事があっても乗り越えていける様な気がするのだ。何て…浅はかな自分勝手な思いだがな…。」
カイゼルは胸に手を当てながら苦渋の表情を浮かべて言った。
「殿下…エリーゼ様が少しでも傷つかない様にと行動する事も覚えておいて下さいね…。」
フェイは真剣な表情で言った。
「あぁ…。わかっているさ…。」
カイゼルが切ない表情を浮かべて応えた。
「それと…例の怪しい男ですが…。」
フェイが言った。
「あぁ…。その件についても承知している。絶対にエリーゼを危険な目などに遭わせてたまるか。スカイ公爵が絡んでいるとたら事態は面倒な事になるかもしれないから父上にもこの件については話を耳に入れておく。貴族が関わっているとなると王宮な兵も動かして貰わねばならないからな。エリーゼは私が絶対に守ってみせる!」
カイゼルは真剣な表情で力強く言ったのだった。
この日は…
皆…
それぞれの夜を過ごしたのだった……
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