65.花火大会
エリーゼとカイゼルは街から十五分程歩き丘へと到着した。
丘へ到着すると二人は丘の中間地点程の場所まで登ると花火を見るのに丁度いい場所を見つけた。
「カイさん、ここなら座りながら花火を見ることが出来そうですね。」
エリーゼが中間地点にあった平たい大きめの岩を見てカイゼルへと言った。
「あぁ。そうだな。ここへ登るまでに数人の人を見かけたがここはまだ誰も場所取りなどしてない様だな。」
カイゼルがエリーゼの言葉を聞き少し周りを見渡しながら言った。
(どうやら怪しい男も後をつけてきてはいない様だな…。)
カイゼルはエリーゼに話しながらも怪しい男が周りにいないかを確認しながらそんな事を思っていた。
「岩に直接座ると冷えてしまいますからブランケットを敷いて座りましょう。ブランケットは二枚あるので一枚は岩へと敷いてもう一枚は掛けるのに使いましょう。」
エリーゼがそう言うと鞄の中からブランケットを取り出して一枚を岩へと敷いた。
「すまないな…。ありがとう。助かるよ。」
カイゼルはエリーゼが岩へとブランケットを敷いてくれたなを見ながらエリーゼへとお礼を言った。
「はい。どうぞ…カイさん座って下さい。」
エリーゼは笑みを浮かべながらカイゼルへと言った。
「あぁ…。エリーゼも座るといい…。」
カイゼルがエリーゼへと言った。
「あっ…はい…。それでは…。」
エリーゼはカイゼルに言われてそう言うと岩へと腰をおろした。
エリーゼが座ったのを見てカイゼルもエリーゼの横へと腰をおろしたのだった。
そしてカイゼルは持っていたランプを手元と足元が見えやすい場所へと置いたのだった。
「ほら…。これを飲むと暖まるだろう。」
カイゼルは丘へ登る前に買った飲み物を一つエリーゼへと手渡した。
「ありがとうございます。あっ…カイさんブランケットもどうぞ使って下さい…。」
エリーゼはカイゼルから飲み物を受け取りお礼を言うと鞄からもう一枚のブランケットを取り出してカイゼルへと渡しながら言った。
「いや…俺は大丈夫だ。エリーゼが使うといい。体が冷えてしまうと大変だからな…。」
カイゼルはエリーゼが手渡したブランケット受け取るとそのままエリーゼへへと返し渡しながら言った。
「それだとカイさんの体が冷えてしまいます…。私も本当に大丈夫ですのでカイさんが使ってください…。」
エリーゼはカイゼルにブランケットを返されて困った表情を浮かべながら言うとまたカイゼルへとブランケットを手渡した。
「俺も本当に大丈夫だから…。………。それなら…二人で掛けて使おう。そうすれば…その…二人の体温でより…温まるし二人とも…寒い思いをしなくて済むだろう…。」
カイゼルも困った表情で言うと少し何かを考える様に間をあけてから意を決した様な表情を浮かべながらエリーゼへと言った。
「えっ…?ふっ…二人でいっ!一緒にですか…?!」
エリーゼはカイゼルの言葉に驚きしどろもどろになりながら言った。
(カイさんと二人で同じブランケットを使うなんて…そっそんな…どうしましょう。嬉しいと思うのにとても恥ずかしいわね…。ドキドキしすぎて心臓がおかしくなるかもしれないわ…)
エリーゼは内心今の状況に動揺しつつそんな事を思っていた。
「やは…り…一緒に使うというのは…嫌だよな…。」
カイゼルはエリーゼの反応を見て苦笑いを浮かべながら少し寂しそうに言った。
(さすがに…踏み切りすぎたか…。いくらなんでも同じブランケットを二人で使うなんてエリーゼも嫌だよな…。我ながら思い切って言っておいてこのざまだ…。)
カイゼルは苦笑いを浮かべたままそんな事を思っていた。
「いっ…嫌…ではありません…。その…あの…では…お言葉に甘えて一緒にブランケットを…使いましょう!」
エリーゼはカイゼルの言葉に思わず力を入れた様な声で言うと自分で力強い声に気づきすぐに照れやドキドキしているのを隠すかの様にカイゼルへと言った。
「ほっ…本当か?エリーゼはそれでいいの…か?」
カイゼルはエリーゼの言葉に表情が少しパァっとなり言った。
「はっ…はい。」
エリーゼは頷きながら応えた。
(カイさんとブランケットを一緒に使うのが嫌なわけないわ。ただ…私の心臓の音がうるさいのがカイさんまで聞こえないか心配だわ…)
エリーゼは応えながらそんな事を思っていた。
「そうか…。」
カイゼルはどこかホッとした表情で言った。
(はぁ…。良かった…。)
カイゼルは呟きながらそんな事を思ってホッとしていた。
そして、カイゼルはエリーゼに体を近づけながら持っていたブランケットを自分とエリーゼを覆う様にかけた。
「あっ…。」
エリーゼはブランケットをかけられた瞬間思わず声を漏らした。
エリーゼはブランケットを二人で掛けて使うのはてっきり膝にかけると思っていたのでエリーゼとカイゼル二人を覆う様にかけるとは思っていなく予想外過ぎて思わず驚いて声を漏らしたのだった。
ドキドキ…
ドキドキ…
エリーゼとカイゼルはお互いの体がくっついている事にお互い心臓が音出してドキドキさせていた。
「その…寒くはないか?」
カイゼルがエリーゼへと尋ねた。
「えっ…あっ…はい。大丈夫です。」
エリーゼは慌てて応えた。
「そうか…。それならば良かった。その…距離が近いのが嫌になったらすぐに言ってくれ。すぐに離れるから…。」
カイゼルは少し緊張した面持ちでエリーゼへと言った。
「そんな!あっ…いえ…その嫌とかでは…本当にないので大丈夫です…。」
エリーゼは緊張した様な照れた様な表情でカイゼルへと言った。
「そうか…。」
カイゼルはエリーゼには表情が見えない様にふっと口角を上げながら言った。
(どうしよう…。心臓の音が大きくなる一方だわ。カイさんに私の心臓の音が聞こえないか心配だわ…。でも…緊張してドキドキしるけれど…好きな人とこうしていると嬉しいというか…何というか…とても幸せな気持ちになるわ…。)
エリーゼは自分の心臓の音がカイゼルへと聞こえていないかを心配しながらも笑みを溢しながらそんな事を思って心が満たされていた。
(心臓の音がうるさいな…。エリーゼの体に触れた瞬間から余計にうるさいな…。自分から思い切って行動したがこうして二人で体を密着して暖をとっているだけだが…とても心が満たされるな…。エリーゼが嫌ではないと言った事…エリーゼの一言一言が私の気持ちをかき乱すな…。本当に日々エリーゼへの愛おしさが増してきて仕方ないな…。)
カイゼルもエリーゼに自分の心臓の音が聞こえていないかを心配しつつ染み染みとそんな事を思っていた。
「あっ!カイさん、飲み物が冷めないうちに飲みましょう。」
エリーゼははっと思い出した様にカイゼルへ言った。
「そうだな…。飲むとしよう。」
カイゼルはエリーゼに言われると頷きながら言った。
そして二人は飲み物を飲み始めたのだった。
「もうすぐ花火が打ち上がりますかね?」
エリーゼが飲み物を一口飲んでカイゼルへと尋ねた。
「ん?そうだな。すっかり日も暮れたからそろそろじゃないかとは思うが…。」
カイゼルも飲み物を一口飲んで応えた。
「どんな花火が打ち上がるのか楽しみですね。カイさんは花火を見られた事はあるんですか?」
エリーゼがカイゼルへと尋ねた。
「いや…俺は…花火を見るのは今日が初めてなんだ。」
カイゼルは少しバツが悪そうに応えた。
(花火など生まれてこのかた見たこともないな…。見たいと思った事もなかった。私はあの事件以来力をつける事以外考えなかったからな…。エリーゼの存在は気にはしていたがあの頃は本当に王太子として周りから馬鹿にされない様にと必死だったからな…。そんな私がまさか想いを寄せている女性と花火を見る事になるとはな…)
カイゼルは心の中でそんな事を思っていた。
「そうなのですね…。私も見た事はあるのかもしれませんが見た事も忘れてしまっているので実質…初めて花火を見る様なものなのでカイさんと同じですね。」
エリーゼはカイゼルのバツの悪そうな表情を見て聞いた事を申し訳なさそうに思いながら言ったがすぐに笑顔でカイゼルへと言った。
(今の私の初めての花火を好きな人と一緒に見ることが出来るだなんてとても嬉しいわ。花火を見たことはあるのかもしれないけれど今の記憶に残るこの花火は忘れられない素敵な思い出になるんだもの。)
エリーゼはカイゼルに言いながらもそんな事を思っていた。
「……。ハハ…そうだな。お互い初めての花火か…。では…お互い記念すべき花火を見る日だな。」
カイゼルは優しい笑みを浮かべながら嬉しそうな表情でエリーゼと言った。
(何故…エリーゼはそんなに私が嬉しくなる様な事を言ってくれるのだ…。記憶が戻ればきっと私と共に花火など見る事などないだろうが…今の…今だけは…この二人で初めて花火を見るという時間を思い出として胸に刻んでおくとしよう…。)
カイゼルはエリーゼに言いながらそんな事を思っていた。
「そうですね。記念すべき日になりますね。」
エリーゼは笑顔でカイゼルへと言った。
「そうだ…。この花火大会で花火が打ち上がった際に願い事を願うとその願い事が叶うというジンクスがあるそうだ。」
カイゼルが思い出したかの様にエリーゼに説明した。
「願い事が…ですか?」
エリーゼが不思議そうな表情を浮かべながらカイゼルへ尋ねた。
「あぁ。ここへ来るまでの道中で街の人々が話しているのを聞いたんだよ。」
カイゼルが言った。
「そうなのですね。この花火大会にはその様なジンクスがあるのですね…。では、花火が打ち上がる際に願い事をしないといけないですね。」
エリーゼはうんうんと頷きながら笑みを浮かべて言った。
「そうだな。ジンクスにあやかって願い事をしてみるのもいいかもな。」
カイゼルも頷きながら言った。
「完全に日も暮れたようだし間もなく花火が打ち上がるだろう。」
カイゼルが空を見上げて言った。
「そうですね。」
エリーゼが言った。
(願い事か…。私の願い事は…。)
エリーゼはカイゼルの話を聞いてからそんな事を考えたいた。
(願い事か…。私が願う事は…。)
カイゼルは空を見ながらそんな事を考えたいた。
そして………
バーーン!
パパパパ……
バーーン!!
花火が打ち上がった。
「あっ…カイさん!花火が上がりました。」
エリーゼが打ち上がった花火を見ながら満面の笑みを浮かべながらカイゼルの方を見て言った。
「あぁ…。そうだな。」
カイゼルは嬉しそうなエリーゼを見てフッ…と笑みを浮かべながら応えた。
「わぁ〜きれいですね…。」
エリーゼは打ち上がる花火を見ながら嬉しそうに感動した様な笑みを浮かべながら言った。
(花火…ほんとにとてもきれいだわ…。こんなに綺麗な花火をカイさんと一緒に見る事が出来て良かったわ…。)
エリーゼは花火を見つめながらそんな事を思っていた。
(あっ…そうだわ!願い事をお願いしないと…。私の願いは早く記憶が戻ります様にと…それからいつか…私の想いがカイさんに届きます様に…。)
エリーゼを一瞬目を瞑り花火に向かって願い事を願ったのだった。
カイゼルは、そんなエリーゼを横で見つめていた。
(エリーゼ…嬉しそうだな。花火を見に来て正解だったな…。願い事が叶うジンクスなど信用しかねるが…もし…本当に願いが叶うのなら…私は…エリーゼの記憶が戻ってもエリーゼとこうして共に嬉しい時間楽しい時間幸せな時間を過ごしたい…。いや…ただ…エリーゼに嫌われたくない…が本当に願う事かもしれないな…。)
カイゼルはエリーゼを見つめながらそんな事を思って願っていた。
バーーン!
パパーーン!
バーーン!
「カイさん、今の花火見ましたか?キラキラとした花が散らばった様な花火でとても素敵で綺麗でしたよ。」
エリーゼはとても嬉しそうに満面の笑みを浮かべてカイゼルへ言った。
(エリーゼ…本当に…何と愛おしいのだ…。私はいつの間に…こんなにエリーゼを好きになったのか…。エリーゼが笑っているのを見るたびに愛おしさが増していくばかりだ…)
カイゼルはエリーゼを見て胸が締め付けられる程のエリーゼへと愛おしさが溢れながらそんな事を思っていた。
「カイさん……?」
エリーゼはエリーゼの事をじっと見つめるカイゼルへとどうしたんだろうという表情になり言った。
バーーン!!
バババーン!!
ヒュルルルル…
バババーン!
「好きだ…。」
花火の大きな音と共にカイゼルの口から思わず言葉が出たのだった……
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