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62.幼き頃の記憶

広場に着いたエリーゼとカイゼルは広場にあった少し広めのベンチが空いていたのでそこへ座った。


そして、エリーゼが持ってきた昼食を自分とカイゼルの前へと広げた。


エリーゼが持ってきたものは……


ホットミルクに温かいスープ…

朝焼いたばかりのパンと家の裏で採れた野菜を使ったサラダとチーズ…デザート用のプリンだった。



「簡単な物しか作れなかったのですが…どうぞ召し上がって下さい。寒いのでまずは温かいスープから飲んで下さい。体が温まりますよ。」


エリーゼはスープを注いだカップをカイゼルへと手渡しながら言った。


「ありがとう…。いただくよ…。わざわざこんなに沢山作って持ってきてくれたんだな。どれも美味しそうだ。」


カイゼルはエリーゼからスープの入ったカップを受け取りながら嬉しそうな表情を浮かべてエリーゼへとお礼を言った。


そしてカイゼルとエリーゼは二人で食べ始めたのだった。


「あ〜…スープとても温かくて本当体が暖まるな…。それにとても美味しいよ。」


カイゼルがスープを口にしながら言った。


「お口に合って良かったです。本当に冷えた体がとても温まりますね。ホットミルクもとても体が温まりますよ。ホットミルクもここへ置いておきますね。」


エリーゼはカイゼルの美味しいという言葉が嬉しくて思わず笑みが溢れた。

そして微笑みながらコップにホットミルクを入れてカイゼルの前へと置いた。


(良かったわ…。カイさんのお口に合って。美味しいと言って貰える事がこんなに嬉しいなんて。本当に恋をするというのは今までは何とも思わなかった些細な事でも嬉しかったりドキドキしたりするのね…)


エリーゼはカイゼルへ言いながらそんな事を思っていた。


「ありがとう……。うん。ホットミルクも美味いな。」


カイゼルはエリーゼにお礼を言うとホットミルクを一口飲み微かに笑み溢しながら言った。


(ホットミルク…。こうしてエリーゼと二人でいてホットミルクを飲んでいると本当にあの時の事を鮮明に思い出すな…。初めてエリーゼと出会ったあの日を…。)


カイゼルはホットミルクを口にしながらそんな事を思っていた。


エリーゼはそんなカイゼルを微笑ましく見ていた。


その時だった!!


ツキンッ…


とエリーゼの頭が痛んだかと思ったら頭の中で何かが映り浮かんだのだった。



…もしかして…ホットミルクはお好きではなかったですか?!少し蜂蜜を入れているのでほんのり甘くて美味しいんですけど…


…飲んでみますか?…


…うまいな…



…でしょう?うちのミルクは特別美味しいんですよ。さぁ、沢山飲んでください。身体が温まりますよ…



(これは…子供の頃の私…?と…誰?誰か私より年上?の男の子と一緒にいるの?この光景も私の記憶なの…?男の子は一体誰なの…?顔がぼやけて見えない…)


エリーゼは頭の中に浮かぶ光景を見て必死に思っていた。


「………リゼ!……ゼ!エリーゼ!!」


カイゼルの心配そうにエリーゼを呼ぶ声が聞こえてエリーゼはハッとなった。


「エリーゼ!大丈夫か?!どうした?また頭痛に襲われのか?!まだ頭が痛むのか?!」


カイゼルは血相を変えてエリーゼを心配しながら言った。


「あっ…いっ…いえ…もう頭痛は大丈夫です…。今回の痛みは本当に一瞬でしたので…。」


エリーゼは心配そうにしているカイゼルをみて驚きながらも応えた。


「そっ…そうか…。もう痛みはないのなら良かった…。その…また記憶が?」


カイゼルはエリーゼの言葉を聞いてホッとした表情を浮かべながら言った。

そして恐る恐るエリーゼへと尋ねた。


「はい…。私が子供の頃の記憶の様でした。私と私より恐らく年上だと思うのですが男の子と一緒にいるところでした…。男の子の顔はモヤがかかった様に見えませんでしたがその男の子と一緒にどこだかは分かりませんがホットミルクを飲んでる様でした…。」


エリーゼが自分が見た記憶の断片をカイゼルへと説明した。


(一体、あの男の子は誰だったのかしら…。私には男の子のお友達がいたのかしら…。それとも兄…なのかしら…)


エリーゼはカイゼルに説明しながらそんな事を思っていた。


「子供の頃の記憶…。一緒にホットミルクを飲んでいた…。」


カイゼルがエリーゼの説明を聞き呟いた。


(まさか…私と初めて出会った時の記憶なのか…?やはりエリーゼは着実に記憶が蘇っているのだろうか…。)


カイゼルは呟きながらどこか不安げな表情を浮かべながらそんな事を思っていた。


「はい…。誰なのかは分からないですけどお友達だったのかもしれないですね…。今の私にはそれがお友達がどうかは分かりませんがお友達がいてもおかしくはないと思いますので…。」


エリーゼは考える様な表情を浮かべながら言った。


「そう…だな…。」


カイゼルはそう応えるのが精一杯だった。


(友達か…。そうだったらどんなに良かったか…。エリーゼの記憶が戻ったとしてもあの時の少年が私だとは分からないのだろうな…。)


カイゼルは寂しそうな切なそうな表情を浮かべながらそんな事を思っていた。


「一先ず…頭痛は治まりましたので食事の続きをしましょう。せっかくの温かいものが冷めてしまいますので。」


エリーゼはカイゼルに気を使わせてしまったと思い笑みを浮かべながら言った。


「あぁ…。そう…だな。せっかくエリーゼが作ってきてくれたのだからな。続きを食べるか。」


カイゼルはエリーゼの笑みを見て少しホッとしたのか頷きながら言った。


そして、二人は再び食事を始めたのだった。


(こうしてエリーゼと共に食事をする事があとどれ程出来るのだろうか…。エリーゼの記憶が戻ればもう…二度とこうして共に食事をする事など叶わないだろうからな…。)


カイゼルは食事をしながらそんな事を思っていた…


(何だか…カイさんどこか元気がなくなった気がするけれど気の所為かしら…。)


エリーゼはどこか上の空なカイゼルを見てそんな事を思っていた…


「カイさん…花火の時間まではどうしますか?またスケート場へ戻りますか?」


エリーゼはカイゼルへと尋ねた。


「そうだな…。スケート場へ戻るのもいいが…エリーゼはどこか行きたい場所などはないのか?」


カイゼルはエリーゼへと尋ねた。


「行きたい場所…ですか?ん〜…そうですね…。」


エリーゼはカイゼルに尋ねられると少し考え込む様に言った。


(行きたい場所か…。カイさんと一緒ならどこでもいいのだけれど…。)


エリーゼはそんな事を思っていた。


「あの…どこへ行きたいなどはないのですが…カイさんが良ければ王都の街を歩いて回るのはどうでしょうか?」


エリーゼは照れたのを隠す様にしながらカイゼルへと尋ねた。


(思い切って言ったけれど…カイさんは嫌ではないかしら…)


エリーゼは少し不安を抱えながら思っていた。


「王都の街を…?それは…いいな。普段街を歩いて回る事がないから楽しそうだな。」


カイゼルはエリーゼへ笑みを溢しながら言った。


(エリーゼと共に街を歩いて回るか…。とても良いな…。エリーゼと共に色々と見て回れるなどまさかそんな嬉しい事を言ってきてくれるとはな…。)


カイゼルはエリーゼが言った言葉が嬉しくて思わず笑みを溢してエリーゼ応えつつそんな事を思っていた。


「本当…ですか?では…そうしたいです。」


エリーゼはカイゼルの言葉に嬉しさを隠せず満面の笑みを浮かべて言った。


(良かったわ…。嬉しいわ…。)


エリーゼは心ではそう思っていた。


「あぁ。では、食事が済んだら街を見て回ろう。」


カイゼルも笑みを溢して応えた。


(やはり…エリーゼの笑顔を見るのは何度見ても嬉しくなるな…。)


カイゼルはエリーゼに応えつつ思っていた。


二人はお互い内心で喜びを噛み締めながら食事を進めたのだった……。

ご覧頂きありがとうございます★


連載中の小説が他にもありますので良ければご一緒にどうぞ★


↓↓↓↓

この度、男装令嬢・キャサリンは探偵助手をする事になりました!!

〜探偵様は王子様?!事件も恋も解決お任せ下さい〜


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