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58.王宮でのカイゼルは…

エリーゼが皆と雑談しているその頃王宮にある王太子の執務室ではカイゼルとフェイが話をしていた………。


「殿下、いよいよ明日ですね。エリーゼ様とお二人でお出かけになれるのは。」


フェイはニヤニヤした表情を浮かべながらカイゼルへと言った。


「あぁ…。そうだな…。」


カイゼルはどこか浮かない表情を浮かべながら応えた。


「殿下…どうされたのですか?エリーゼ様とのお出かけ嬉しいのではないのですか?」


フェイはカイゼルの表情を見て尋ねた。


「そんな訳ないだろう!!楽しみに決まっている!!」


カイゼルは思わず声をあげてフェイへと言った。


「はい…。それは…そうでしょうね…。」


フェイはニヤニヤとしながらカイゼルへと言った。


「フェイ…お前…。」


カイゼルはフェイの表情を見て少しムスっとした表情で言った。


「楽しみにしてらしているのに何故微妙に浮かない顔をされているのですか?」


フェイはカイゼルの表情を疑問に思いながら尋ねた。


「それは………。エリーゼと二人きりで出かけるのは楽しみで仕方ないしエリーゼが了承してくれたのも嬉しくて仕方ない…。だが…私は上手くエリーゼをエスコートできるのか不安でな…。私は今まで王太子として社交場に参加はしているがどのご令嬢へもエスコートなどした事がないからな…。今まで女性が喜ぶ事が何なのかなど考えた事すらなかったしな…。」


カイゼルは少々不安そうな表情を浮かべながらフェイへと言った。


「確かに…殿下は今までに女性に対して何かをするという事などありませんでしたからね…。いつも公務と執務や剣の稽古などばなりに明け暮れておられましたからね…。エリーゼ様の事もずっと探されていただけで特に何かをするという訳でもありませんでしたしね…。」


フェイは少し困った様な渋い様な表情を浮かべながら言った。


「そこまではっきり言わなくても解っている…。一体どうしたら上手くエリーゼをエスコート出来るのだろうか…。エリーゼには楽しい一日を過ごして欲しいのだ…。」


カイゼルはフェイに言われて少し不満そうな表情を浮かべながら言うと悩む様な表情に変わり呟く様に言った。


「そうですね…。どうしたらと考えても当日に上手く出来るかも分かりませんしね…。それでしたらあえて深く考えなくとも当日、その場その時に殿下が対応された方が良いのではないかと思います。」


フェイは少し考え込む様な表情を浮かべた後にカイゼルへと言った。


「その場その時か…。確かに公務と違い全く先が読めない状況ばかりになりそうだからな…。そうだな…。フェイの言うように当日、その時々で状況判断するとしよう…。とにかくエリーゼに楽しんでもらえる様にするさ。」


カイゼルはフェイに言われて少し悩む表情を見せたがすぐに頷きながらフェイの提案に賛同して言った。


「はい。そうして下さい。殿下にとっても楽しい一日になると良いですね。」


フェイはカイゼルの言葉を聞いて笑顔で言った。


(後は…王兄殿下が仰っていたサリー嬢の件だな…。さすがに殿下とエリーゼ様が出かけられている際に鉢合うとは考えにくいが本当に例の女性がサリー嬢なのであれば何をされるか分からないのが正直なところだからな…。まぁ…殿下がエリーゼ様を守ってくださるだろうからな…。)


フェイはカイゼルに話しながらも内心ではそんな心配事を思っていた。


「あぁ…。そうだな…。それはそうと……気になるのがアリさんが言っていたエリーゼに声をかけてきた女性の事だが…。アリさんの話を聞いてその女性はスカイ公爵家のサリー嬢もしくは…バッハ公爵家のビリー嬢ではないかと思ったのだ…。」


カイゼルが応えると気になっていた事を難しそうな表情をしてフェイへと言った。


「サリー様とビリー様…ですか?」


フェイは驚いた表情を浮かべながら言った。


(驚いたな…殿下…鋭いな…。まさか王兄殿下の話を聞いてサリー様とビリー様を思い浮かべるとは…。さすが王太子だな。)


フェイはカイゼルに言いながらそんな事を思っていた。


「あぁ…。エリーゼは伯爵令嬢だがメディス伯爵家は贅沢を好まない貴族で有名だ。王宮にて催される社交会などにも強制参加ではない限り顔をほとんど出さないくらいだ…。となるとエリーゼは貴族の令嬢などと仲良くなる機会などほとんどない訳だ…。そうなるとエリーゼが接触したエリーゼの事をよく知っている令嬢は王宮にて共に過ごしたサリー嬢とビリー嬢だけという訳だ…。」


カイゼルが真剣な表情を浮かべながらフェイへと説明した。


「なるほど…。確かに殿下の仰る通りメディス伯爵家は他の貴族との関わり合いが極端に少ない様ですので一理あるかもしれません…。」


フェイはカイゼルの説明を聞くと真剣な表情で頷きながら応えた。


(本当に鋭いな…。まさかそこまで考えての推測とは…。)


フェイはカイゼルに応えたながら内心感心しながら思っていた。


「エリーゼが王宮から出て間もなくあの二人に王太子妃候補から外すと通達した。その後も納得いかないと王宮まで足を運ぶか手紙を送ってくる程だ…。特にスカイ公爵とサリー嬢は今も尚しつこくもう一度サリー嬢を王太子妃候補にと言ってきている程だ。もし、偶然エリーゼを見かけたのであれば自分達が王太子妃候補から外されたのはエリーゼのせいではないかと思いそれを問いただそうとする可能性も否定出来ない。エリーゼの連れの者を見てその場から去ったのもやましい下心があったからなのではないかと考えているのだが…。」


カイゼルは真剣な表情でフェイへと詳しく説明した。


「もしも…殿下の仰る事が合っているとしたらその女性はまた街でエリーゼ様に接触してくる可能性が否定出来ませんね…。」


フェイは目を細める様な表情でカイゼルへと言った。


(恐らく女性はビリー様ではなくサリー様の可能性が高い…。スカイ公爵家は当主の公爵もあまりよい噂を聞かない程の傲慢な公爵だ…メディス伯爵の事もあまり良くは思っていないという話も耳にした事がある…。となると親子でよからぬ事を考えないとは言い切れないからな…。)


フェイはカイゼルに話しながらもそんな事を考えていた。


「あぁ…。それを懸念しているのだ…。エリーゼは一人で出かける事はないが少しの油断も許されないな…。」


カイゼルが険しい表情を浮かべながら言った。


「はい。常に周りを警戒する必要はありそうですね…。」


フェイも真剣な表情を浮かべながら応えた。


「相手が誰であろうとエリーゼに手を出す者は私が絶対に許さない…。何があってもエリーゼは私が守ってやるつもりだ…。」


カイゼルは強い意志を持った表情で言った。


「はい…。殿下がしっかりエリーゼ様を守って下さいませ…。」


フェイは頷きながら少し表情を柔らかく崩しながら言った。


「??何故…少し笑みを溢すのだ?」


カイゼルはフェイの表情を見て尋ねた。


「いやですね…殿下は本当に変わられたのと思いまして…。嬉しくなったのですよ。」


フェイは笑みを浮かべながら応えた。


「私が変わったのか?」


カイゼルはフェイの言葉に首を傾げながら尋ねた。


「はい…。殿下は幼い頃の事件の事もあり信用出来る者以外に対しては常に分厚い壁の様な物がありました。しかし…エリーゼ様の元で過ごされる様になり以前より表情も豊かになりましたし相手の事を思い行動される事が増えました。王太子としても一つご成長された様にも思えてとても嬉しいのです。」 


フェイは笑顔でカイゼルへと話をした。


「フェイ…。ふっ…。確かにエリーゼと過ごす様になり自分でも経験した事ない感情が溢れたり状況に遭遇した…。もし、私が変わったのだとするならば紛れもなくエリーゼのお陰だな…。本当に昔も今もエリーゼの存在は私の中ではなくてはならないものだな…。」


カイゼルはふっ…と笑みを溢しながらフェイへと言った。


「まぁ…そんなエリーゼを傷つけてしまったのだがな…。エリーゼの記憶が戻り私の事を思い出した時…きっと私はエリーゼに拒絶されるであろう…。エリーゼの記憶は戻って欲しいがいざ戻るかもという今の状況に怯えている自分がいる…。もしも…拒絶されたその時はフェイ…慰めてくれ…。」


カイゼルは続けて苦笑いを浮かべながらどこか切ない表情を浮かべながら冗談混じりにフェイへと言った。


「殿下……。」


フェイはそんなカイゼルを見てどこか心配そうな表情で言った。


「だが…エリーゼの記憶が戻るまでは全力でエリーゼを守るがな。」


カイゼルは切ない笑みを浮かべながら言った。


「……。はい。一先ず明日はエリーゼ様と楽しい一日をお過ごし下さいね。」


フェイはそんなカイゼルを見て切なく思ったがすぐに笑顔を浮かべながら言った。


「あぁ…。そうだな。」


カイゼルは言った。



その後…

カイゼルは自室へと戻っていったのだった…。


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