57.気付いた感情の正体…
あっという間にエリーゼとカイゼルが出かける日の前日を迎えていた。
アリストンのエリーゼ部屋では…
部屋の中にはエリーゼとナディアがいた。
エリーゼが出かける洋服をどうしようか悩んでいたらアリストンが気を利かせてナディアに相談をして呼んでくれていたのだった。
相談されたナディアは嬉しそうに了承してくれ伯爵邸からエリーゼが以前使用していた洋服を何枚か持ってきてくれていたのだった。
ナディアと共にマイクとブラットもアリストンの家へと訪れていた。
「ナディアさん…わざわざ洋服を持ってきて下さりありがとうありがとうございます。こんなに沢山の洋服を…持ってくるまで大変でしたよね…。それに…この洋服は…娘さんの物ではないのですか?私が使ってもいいのですか?」
エリーゼは少し申し訳なさそうな表情を浮かべながらナディアへとお礼を言うと更に申し訳なさそうにナディアへと尋ねた。
「気にしなくていいのよ。こんな事大変でも何でもないわ。むしろ私は相談されて嬉しかったもの。何だか娘と…いるみたいで楽しいもの。それに…娘の洋服は気にせず使ってくれていいのよ。今はもう使っていなかったからね。逆に娘の物ではあまり良い気はしないかしら?」
ナディアが嬉しそうな切なそうな表情を浮かべながらエリーゼへと言った。
「そんなっ!良い気はをしないなど…そんな事はまったくありたせん。むしろ本当にありがたいですし嬉しいで。ナディアさんが快くこうして持ってきてくれた事が嬉しくて本当に感謝してます。」
エリーゼは慌ててナディアへと応えた。
「そう?それなら良かったわ。」
ナディアは笑顔でエリーゼへと言った。
「はい…。私も何だがナディアさんの事を勝手に母の様に感じていますし…。」
エリーゼは少し照れたような表情を浮かべながらナディアへと言った。
「ふふ…ありがとう。そんな風に言ってもらえてとても嬉しいわ。」
ナディアはエリーゼの言葉に一瞬驚いたがすぐに満面の笑みを浮かべながら言った。
そして、ほんの少し目に涙を溜めていた事はエリーゼには気づかれなかった様でナディアはホッとしていた。
「はい。それで…明日は何を着ていけばいいのか本当に悩んでしまってて…」
エリーゼは洋服を見つめながら少し困った表情を浮かべながらナディアへと言った。
「明日はどこへ出かける予定でいるの?」
ナディアがエリーゼへと尋ねた。
「はい。明日はスケートに行った後に街で開催される花火を見る予定です。」
エリーゼがナディアへ応えた。
「スケートと花火ね…。」
ナディアが呟いた。
そして…少し考えた後に口を開いた。
「これなんて…どうかしら?」
ナディアは一着の洋服を手に取ってエリーゼへと見せながら言った。
「わぁ〜!可愛い…。」
エリーゼはナディアが見せてくれた洋服を見て思わず呟いた。
「ふふふ…そうでしょう?スケートをするにもあまりスカートが広がり過ぎずだしそれでいて地味すぎないデザインになっているの。それに淡いピンク色が花火の光できれいに映えるわ…。エリーゼにとてもよく似合うと思うわよ?」
ナディアは嬉しそうな表情を浮かべながらエリーゼへと説明しながら言った。
「とてもきれいなピンク色ですね…。私…記憶喪失になる前は分かりませんが今はこの様に落ち着いた色合いの物がとても好みなのです。デザインも落ち着いていてとても素敵です。」
エリーゼは嬉しそうに笑みを浮かべながらナディアへと言った。
「そうなの?では…これがぴったりだわね。着てみてもいいわよ?」
ナディアが笑みを浮かべながら言った。
(エリーゼ…あなたは記憶がなくなる前もこの一着が大のお気に入りだったわよ…。やはり記憶がなくとも本能が覚えているのね…。またこうしてあなたがこれを着る姿が見れるなんて私は嬉しいわ…。)
ナディアはエリーゼに話しながらもそんな事をしんみりとしながら思っていた。
「いいのですか…?では…お言葉に甘えて…着てみたいです。」
エリーゼが少し照れた様に遠慮がちにナディアへと言った。
「ええ。では…着てみてちょうだい。」
ナディアは優しい笑みを浮かべながらエリーゼへと言った。
「はい。」
エリーゼは応えると早速ナディアに手渡された洋服に着替え始めたのだった。
そして…
数分後……
「どうでしょうか……?」
着替えたエリーゼがナディアへと照れながら言った。
「ええ…。とてもよく似合っているわ…。もう…本当に…。」
ナディアが笑みを浮かべながらエリーゼへと言った。
(本当に…とてもよく似合っているわ…。あの頃のエリーゼが戻ってきた様よ…。)
ナディアはエリーゼに言いながらそんな事を思っていた。
「本当ですか…?良かったです。驚く程にぴったりでした。着心地もとても良いし思った通りとても落ち着きがあって良いです。」
エリーゼは少し照れながらもナディアの言葉を聞いて嬉しそうに言った。
「では…髪の毛も洋服に合わせて結い方を教えておくわね。」
ナディアが笑顔で言った。
「はい。よろしくお願いします。」
エリーゼも笑顔で言った。
その後、ナディアはエリーゼへ髪の毛を結いながら結い方は優しく丁寧に教えたのだった。
エリーゼは真剣な表情で結い方を覚えていた。
そんなエリーゼを見てナディアはとても懐かしそうな表情を浮かべながらエリーゼの髪の毛を結っていたのだった。
(エリーゼが幼い頃もこうして沢山結い方を教えたものね…。エリーゼは幼い頃から手先が器用な子だったから結い方をすぐに覚えていたわね…。懐かしいわ。この時間がとても楽しいわ…。)
ナディアはそんな事を思っていた。
「さぁ…これで完成よ?どう?結い方自体は難しいものではないでしょう?それでいて洋服に合ったまとまり方になるでしょう?」
ナディアが鏡越しにエリーゼへと言った。
「はい。思っていたより簡単で私にも出来そうです。それに本当にこんな短時間でこんなにきれいにまとめる事が出来るのですね。いつも簡単にまとめていたのでこれだけでとても特別に感じます。ナディアさんありがとうございます。」
エリーゼは鏡に映る自分のまとまった髪の毛を見て嬉しそうに言うとナディアへとお礼を言った。
(これなら明日カイさんと出かけるのにカイさんに恥をかかせなくて済みそうだわ……。カイさん洋服とか髪型とかいつもと違う事に気づいてくれたりするかしら…。気づいてもらえると嬉しいわ…。)
エリーゼはナディアと話しながらそんな事を思っていた。
「いいえ…私の方こそありがとう。とても楽しい時間を過ごせているわ。」
ナディアは優しく微笑みながらエリーゼへ言った。
「これで…明日はどうにかなりそうです。」
エリーゼはホッとした表情を浮かべながらナディアへと言った。
「そう?それなら良かったわ。何だかエリーゼとこうしていると昔の自分を思い出すわ。」
ナディアが微笑みながら言った。
「昔のナディアさん…ですか?」
エリーゼは??とした表情を浮かべながらナディアへ尋ねた。
「えぇ…。私も今のエリーゼ程の歳の時に主人と…マイクと出かける前にはこうして何を着ていこうかだったり何を話そうだったりとを考えたものよ。」
ナディアは微笑みながらどこか懐かしそうにエリーゼへと話をした。
「ナディアさんはマイクさんと出かけるのをよほど楽しみにされていたのですね。」
エリーゼはナディアの話を聞いて笑顔で言った。
「そうね…。ふふ…恥ずかしくて本人には言えないけれどマイクと会う回数を重ねるうちにいつの間にかマイクに恋をしていたの…。だからね…マイクと会う日は私の中で特別だったしとても楽しみでありとてもドキドキしていたのよ。」
ナディアは少し照れた様に笑いながらエリーゼへと言った。
「恋ですか…。恋に落ちるとはどんな感情や感覚なのですか?」
エリーゼはナディアの話を聞いてふと気になり尋ねた。
「恋に落ちる……。そうね〜…説明が難しいのだけれど…私の場合は…こぅ…マイクを目の前にすると急に心臓の鼓動が早くなったり…マイクを前にするとドキドキして緊張してしまったり…マイクと話をしているととても落ち着く様な…温かい気持ちになる様な…自分の中で今まで経験した事のない感情に襲われたのよ…。私ったらどこか体でもおかしくなったのかしらと悩んでいたら母にそれはきっとマイクに恋をしているのよと言われて何だがす〜っと悩んでいた事が腑に落ちたのよ…。」
ナディアは昔を懐かしむ様な表情を浮かべながらエリーゼへと説明した。
「……………。」
ナディアの話を聞いてエリーゼは何かに気づいた様な表情で急に口元を手で塞いだのだった。
「エリーゼ……?どうかしたの?急に口元を押えるなんてどこか体調でも悪いの?!」
ナディアは急に黙り込み口元を手で覆うエリーゼを見て慌てて言った。
「あっ…いえ…大丈夫です…。ナディアさんのお話を聞いて素敵だなと思わず感動…してしまっただけなので…。」
エリーゼは慌てたナディアに急いで誤魔化すかの様に大丈夫だと伝えた。
「そっ…そう?急に体調でも悪くなったかと思って驚いたわ…。でも…私の話を聞いて感動してくれるなんて何だが恥ずかしわね…。」
ナディアはエリーゼの言葉を聞いてホッとした様な表情で言うと少し恥ずかしそうな表情を浮かべながら言った。
「ふふふ…。」
エリーゼは恥ずかしそうにしているナディアを見て笑みを溢した。
「一先ず、明日の着て行く洋服と髪型は決まったからそこは一安心しね。私は先に下にいるマイク達の所へ下りているからエリーゼも着替えが済んだら下りてらっしゃいね。少しだけれどクッキーを焼いてきたからお茶でも飲みましょう。あっ…先程の話はマイクには内緒ね。」
ナディアが笑顔でエリーゼへ言うと思い出したかの様にシーっというポーズを取りながらくすりと笑いながら言った。
「ふふ…はい。分かりました。先程のお話は内緒にしておきますね。すぐに着替えて下りますね。」
エリーゼはナディアの言葉にクスりと笑いながら言った。
そしてナディアは先に部屋から出て下へと下りて行ったのだった。
ナディアが部屋から出て下に向かうとエリーゼは部屋で一人になり口元を手で覆った。
「私…カイさんに…恋をしているんだわ…。ナディアさんの話を聞いて最近の自分の不思議な感情が何かが腑に落ちたわ…。いつの間に…カイさんに恋をしてしまったのかしら…。どうしよう…。こんな気持ちは初めてだからどうしたらいいのか分からないわ…。それに…明日カイさんにどんな顔で会えばいいのかしら…。」
エリーゼは一人自分がカイゼルに恋をしたのだと自覚した事に慌てていた。
初めて芽生えた感情にエリーゼはどうしたら良いのかわからず部屋をウロウロしていたのだった。
「こんなどうしたらいいのか分からないのに…でも…カイさんに会えるのを楽しみに思っている自分の感情にまた戸惑うばかりだわ…。」
エリーゼは一人ぶつぶつと呟いたのだった。
「恋をするというのは…こういう感情なのね……。」
エリーゼは小さく呟いた。
エリーゼが一人悩んでいる時一階では…
エリーゼとナディアがエリーゼの部屋にいる間にアリストンがエリーゼとカイゼルが二人で出かける話を手紙でも知らせていたが改めてマイクとブラットにしていたのだった。
マイクもブラットも複雑そうな表情をしていたがアリストンが大丈夫だと判断し許可した事と当日はアリストンとフェイがこっそりと二人の様子を伺える距離にいるという事でマイクとブラット、下りてきて軽く話を聞いたナディアは納得したのだった。
「去年までは毎度ずっと私と一緒に街の花火を見に行っていたのに…」
とブラットはぶつぶつと言いながら臍を曲げていたのでそれを見たアリストンとマイクとナディアはくすくすと笑っていたのだった。
そうこうしているとエリーゼが下に下りてきてナディアが持ってきてくれたクッキーとナディアが淹れてくれたお茶を飲みながら五人は楽しく雑談を始めて楽しい時間を過ごしたのだった……。
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