表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/83

54.久々の再会とお土産と手袋

カイゼルとフェイが公務から戻る日がやって来た……。


カイゼルは帰り道にあった路面店が目に入った。


「フェイ…あの小さな店が並んでいるのは何だ?」


カイゼルがフェイへと路面店を指差しながら尋ねた。


「路面店の事ですか?月に数回隣国から商人が来てあの様に路面に即席の店を構えて商品を売っているのですよ。食品から装飾品まで色々な店がある様ですよ。」


フェイがカイゼルの指差す先を見てカイゼルへと路面店の説明をした。


「そうなのか…。」


「時間に余裕がありますし少し覗いていかれますか?」


カイゼルは物珍しそうな表情で言った。

そんなカイゼルを見たフェイがカイゼルへと提案した。


「ん〜…そうだな。色々な事を知る良い機会でもあるから少し見ていこう。」


「はい。承知しました。」


カイゼルは少し悩んだが、すぐに頷きながら言った。

そんなカイゼルにフェイは笑顔で応えた。


カイゼルとフェイは近くに馬を繋いでおけそうな場所を見つけて馬を繋ぎ止めた。

そして路面店の端の方から見て回った。


路面店は小規模の店が多かったが賑わっていた。

この場所の住民達は皆楽しそうに色々と店を見て回っていた。


「よっ!いらっしゃい!お兄さん達良かったら見て行って下さいな!今日は特にいい物が揃ってますぜ!」


カイゼルとフェイが歩いていると直ぐ側の店の店主らしき男性がカイゼル達へと声をかけてきた。


カイゼルとフェイは声をかけてきた男性の店を覗いてみたのだった。


その店は装飾品を扱っている店だった。


「ほぅ…装飾品か…。」


カイゼルは店の商品を見ながら言った。


「隣国の品物だけあって我が国のデザインとはまた違ったデザインの物を沢山置いてありますね。」


フェイが店に並んでいるの装飾品を見て感心した表情を浮かべながら言った。


「そうなのか?フェイは女性物の装飾品に詳しいのだな。私は女性物の装飾品には疎いからな…。」


「ハハハ…詳しい程でもありませんが…。」


カイゼルはフェイの事を感心しながら見て言った。

カイゼルに言われたフェイは笑いながら応えた。


すると……


「これは…。」


カイゼルがふと目についたネックレスを手に取った。


カイゼルが手にしたネックレスはシルバーのチェーンに果物のオレンジの花の形をしたチャームがついているネックレスだった。

チャームは控えめの大きさだがとても可愛いらしい物だった。


「殿下…そちらのネックレスがどうかしましたか?」


フェイは突然カイゼルがネックレスを手に取って見たのに驚きながら言った。


「ん?あぁ…このデザインのネックレスがエリーゼに似合うだろうなと思ったのでな…。」


カイゼルはボソボソと言った。


「……。エリーゼ様へお土産にとプレゼントされてはいかがですか…?きっとお喜びになられますよ。」


フェイはカイゼルの言葉を聞きニヤニヤとしながらカイゼルへと言った。


「なっ…!……………。お土産としてか…。………。そう…だな……。エリーゼのお土産にするとしよう…。」


カイゼルはフェイに言われると一瞬驚いた表情を見せたが少し考え込み考えた後で言った。


「はい。そういたしましょう。」


フェイはカイゼルへ笑顔を浮かべながら言った。


「店主…こちらを貰おう。包んでくれ。」


カイゼルが店の店主の男へと言った。


「はい!お買い上げありがとうございます。」


店主がカイゼルに言われると笑顔で言った。


そして、店主はネックレスを梱包してカイゼルへと手渡しのだった。


(エリーゼは…私からのお土産など喜んでくれるのだろうか…。受け取って貰えるだろうか…。)


カイゼルは店主からネックレスを受け取るとそれを見つめながら思っていた。


そして、その後アリストンへとお土産としてワインを購入して王宮へと向かったのだった。




カイゼル達が王宮へと戻っている同じ頃………


アリストンの家では……


アリストンが仕事で留守にしていたのでエリーゼは家事や庭裏の畑仕事を終えて二階の部屋にいた。


「よし!出来たわ!これで完成よ!」


エリーゼはやり切ったと言う様な声で言った。


エリーゼがカイゼルの為にと編んでいた手袋が完成したのだ。


「カイさんが次に来られ時までにどうにか間に合ったわ…。良かった…。これで次にカイさんに会った時に渡す事が出来るわね。」


エリーゼは手袋を見つめながら呟いた。


「完成したのはいいけれど…いざ完成して渡すとなると何だが急に受け取って貰えるか不安になってきたわ…既製品ではないしね…。本当に大丈夫かしら…。」


エリーゼは急に不安そうな表情を浮かべながら呟いた。


「………。アリさんもブラットさんもあぁ言ってくれたのだから大丈夫よね!うん!きっと大丈夫。さぁ…手袋を包装しないとだわ。」


エリーゼは、少し考えるとよしと頷きながら言った。


そして、手袋を紙袋の中へ入れ丁寧に紙袋を梱包したのだった…。


梱包した紙袋をじっと見つめたエリーゼは自分でも気づかない程にとても優しそうな愛しそうな表情を浮かべて微笑んでいたのだった。




カイゼルが公務を終えて王宮へと戻ってきてから二日後…


カイゼルは王宮へ帰ってきた日に公務での報告や執務を猛スピードで済ませていたのだった。


昼前に王宮を出発したカイゼルとフェイはアリストンの家へと向かっていた。


「……。一週間と少し会わないだけでエリーゼに会うのを緊張してしまうな…。」


「緊張ですか?ふっ…本当に殿下はエリーゼ様の事が大好きなのでございますね。」


歩きながらカイゼルはどこか緊張に満ちた表情で呟いた。

カイゼルの言葉を聞いたフェイはクスっと笑いながらカイゼルへ言った。


「なっ…フェイ!お前!何を!」


「しかし、本当の事でしょう?別に私も殿下のエリーゼ様に対するお気持ちは知っているのですしその様に慌てる事はありませんよ。」


「主君に向かって随分な言いようだな…。」


「そうですか?ハハハ…」


カイゼルはフェイに言われて慌てて言った。

すると、フェイはきょとんとした表情を浮かべて淡々と言った。

そんなフェイにカイゼルは少し眉間にしわを寄せながら言った。

そんなカイゼルを見てフェイはニヤニヤとしながら言うと声に出して笑ったのだった。


「殿下、エリーゼ様へお土産を渡す時に二人でお出かけになる件をお話するのですよ?」


「分かっている!分かっているさ…。」


フェイがカイゼルへ年を押すように言うと、カイゼルは少しあたふたした様に慌てて声を張って言った。


「左様ですか…。それは失礼いたしました。」


フェイはクスっとなりながらカイゼルへ言った。


二人が話しているうちにアリストンの家に到着した。

フェイが扉を叩いた。


「はい!」


「おはようございます。カイとフェイです。」


中からアリストンの声がした。

カイゼルが中にいるアリストンへ言った。


すると、扉が開いて中からアリストンが出てきた。


「おぉ!おはよう。二人共久しぶりだな。」


「はい。お久しぶりです。」


「おはようございます。お久しぶりです。」


アリストンがカイゼルとフェイを見て言うと二人も応えた。


「一先ず中へ入れ。」


「「はい。失礼します。」」


アリストンが言うと二人が同時に応えた。


そして、カイゼルとフェイは家の中に入った。


「あっ!カイさんフェイさん、おはようございます。お二人共お久しぶりですね。」


カイゼルとフェイが中にはいるとエリーゼが二人に気づき笑顔で言った。


「あっ…あぁ…。おはようエリーゼ…。久しぶりだな。元気にしていたか?体調はあれから悪くなったりしなかったか?」


「はい。お陰様で。カイさんも体調など崩されてはいませんか?」


「あぁ…大丈夫だ…。」


カイゼルはエリーゼに声をかけられて慌てて応えた。

すると、エリーゼもカイゼルへと尋ねた。

カイゼルは少し下向きになりながら応えた。


「エリーゼさん、おはようございます。また今日からお世話になります。」


「はい。こちらこそよろしくお願いしますね。」


フェイがエリーゼと声をかけるとエリーゼは笑顔で応えた。


「あっ…そうだ。アリさん、大したものではないのですがこれを…。お土産のワインです。」


「おっ!土産を買ってきてくれたのか?しかもワインか!ありがとう。私はワイン好きだからな。ありがたく受け取るよ。」


カイゼルがあっ!と思い出した様にアリストンの元へと行きアリストンへお土産のワインを渡しながら言った。

ワインを受け取ったアリストンは笑顔でカイゼルとフェイへお礼を言った。


「フェイ!ワインを庭にある小屋へ持っていき保管しておくから手伝ってくれ!」


「はい。わかりました。」


アリストンがフェイの方を向いてフェイへと言った。

フェイはすぐに応えた。


アリストンとフェイが庭へと出ていく途中フェイがカイゼルの方をチラリと見た。


『きちんとエリーゼ様にお土産とお出かけの話をしてくださいね。』


『わかっている!』


フェイがカイゼルへと目で訴えた。

カイゼルは少しムスっとした表情を浮かべてフェイへと目で訴えた。


家の中にはエリーゼとカイゼルだけになった。


二人になった二人はどこか緊張した表情を浮かべていた。


「あ〜…土産はエリーゼにもあるんだ…。これなんだが…。」


「え?私にもですか?何だか…気を使って頂いて…。」


「いや…気などは使っていない…。エリーゼに……似合うだろうと思い買ったもの…だからな…。ほら…。」


思い切ってカイゼルがエリーゼへと言った。

エリーゼは予想外の事に驚き言った。

しかしカイゼルはそんなエリーゼに少し照れた様な緊張している様な表情で言いながらネックレスの入った紙袋をエリーゼへと渡した。


「あっ…ありがとうごまざいます。あの…開けてみてもいいですか?」


「あっ…あぁ…。」


エリーゼは少し緊張した面持ちで受け取るとカイゼルへお礼を言った。

そして、開けてみても大丈夫かとカイゼルへ尋ねた。

カイゼルは頷きながら言った。


(土産を渡すのがこの様に緊張するとは…心臓鼓動がうるさいな…。)


カイゼルはエリーゼに応えながらもそんな事を思っていた。


そしてエリーゼが紙袋を開けて中からネックレスを取り出した。


「わぁ〜……。可愛い……。とても可愛いです。ありがとうございます。」


エリーゼはネックレスを見た瞬間に目を見開いて呟いた。

そして、満面の笑みを浮かべながらカイゼルへとお礼を言ったのだった…


「いっ…いや…気に入ってくれて良かったよ。」


カイゼルは一瞬驚いた表情を浮かべたがすぐに表情を柔らかくして少し笑みを浮かべながら言った。


(心臓が苦しいな…まさか…こんなにエリーゼが喜んでくれるとはな。受け取ってくれるのか心配したが…心配して損した様だな…)


カイゼルは胸元を少しギュッと掴みながら喜びに満ちながらそんな事を思っていたのだった………


「あの…早速つけてみてもいいですか?」


「あぁ。」


エリーゼは少し照れながらカイゼルへと尋ねた。

カイゼルは応えた。


エリーゼはカイゼルの言葉を聞くとネックレスを首元へと着けた。


「どう…ですか?」


「……。似合っている…。」


「あっ…ありがとうございます。」


エリーゼはカイゼルへと尋ねた。

カイゼルは少し照れながら応えた。

そんなカイゼルにエリーゼも照れながら御礼を言った。


(やはり…私の思った通りだ…。エリーゼにとても似合っているな…)


カイゼルはエリーゼを見ながらそんな事を思っていた。


「あっ…そうだ。私もカイさんにお渡ししたい物があるのです。」


「俺に…?渡したい物?」


「はい。これです。」


エリーゼがハッと思い出した様にカイゼルへと言った。

カイゼルは不思議そうな表情を浮かべながら言った。

そんなカイゼルへエリーゼは応えながらも手袋の入った紙袋を渡した。


「開けてもいいか?」


「はい…。」


カイゼルは手渡された紙袋を見てエリーゼへと尋ねた。

エリーゼは頷きながら応えた。


カイゼルが紙袋の中から手袋を取り出した。

そして取り出した手袋を黙って見つめていた。


(カイさん手袋を見つめたまま黙っているわね…。やっぱり手作りの物なんて迷惑だったかしら…)


エリーゼはカイゼルの反応を見て不安になりながら思っていた。


「これは…エリーゼが編んでくれたの……か……?」


「え?あっ…はい…。私が編みました…。」


黙っていたカイゼルが手袋を見つめたままエリーゼへ尋ねた。

エリーゼはカイゼルに尋ねられて慌てて応えた。


「あの…やっぱり手編みの手袋など…お渡しするのは…失礼でした…よね…?」


エリーゼは恐る恐る不安な表情を浮かべながらカイゼルへと言った。


「……。いや…とても嬉しいよ…。俺の為にわざわざ編んでくれたのだろう?嫌な訳がないさ。ありがとう。」


カイゼルは優しい表情を浮かべて優しい笑みを浮かべながらエリーゼへお礼を言った。


そんなカイゼルの笑顔を見てエリーゼの心臓が飛び跳ねた。

鼓動が激しくなったのだ。


「本当ですか…?喜んで貰えたのであれば良かったです…。カイさんはいつも手袋をされていなかったので気になっていたのもありますが…以前、体調が悪くなった時に助けて頂いたお礼も兼ねてです。」


エリーゼは、心臓の鼓動の激しさに少し動揺しながらも平然を装う様にカイゼルへと言った。


「とても…丁寧に編んでくれたのだな。とても温かそうだ…。本当にありがとう。これからはこの手袋を使わせてもらうよ。」


カイゼルはとても嬉しそうな表情を浮かべながらエリーゼへと言った。


「はっ…はい…。」


エリーゼは精一杯応えた。


(カイさん…なんて嬉しそうな表情をされるのかしら…。そんなに嬉しそうにされると…私までとても嬉しくなるし編んで良かったわ…。受け取ってもらえなかったらどうしようと心配していなのがバカみたいに思えるほどだわ…。本当に喜んで貰えて良かった…)


エリーゼは、自分で気づかない程の嬉しそうな笑みを浮かべてカイゼルに応えながらそんな事を思っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ