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53.メディス伯爵邸にて…

エリーゼとブラットが出かけた日から四日後……


王都でブラットと待ち合わせをしていたマリア、ユーリ、ロイはメディス伯爵邸へ訪れていた。


「いらっしゃい。よく来て下さいましたね。」


「いらっしゃい。さぁどうぞこちらへ。」


マリア達がメディス伯爵邸に到着すると玄関先でマイクとナディアが出迎えをしたのだった。


「こんにちは。初めまして。王宮でメイドをしておりますマリアと申します。この度はお招き頂きありがとうございます。」


「こんにちは。初めまして…。王宮で料理長をしておりますユーリと申します。本日はお招き下さりありがとうございます。」


「こんにちは。初めまして。王宮で庭師をしておりますロイと申します。本日はお忙しい中お招き頂きありがとうございます。」


マリア、ユーリ、ロイは出迎えをしてくれたマイクとナディアへと丁寧に挨拶をして自己紹介をした。


「ご丁寧にありがとうございます。客間にお茶とお菓子をご用意していますのでどうぞ。」


マイクがにこりと微笑みを浮かべながら三人へと言った。


「「「ありがとうございます。」」」


三人は頭を下げて礼をしながらマイクへとお礼を言った。


そして、三人はマイク達へに客間へと案内されたのだった。

客間に着くとマイク、ナディア、ブラットも…

マリア、ユーリ、ロイも椅子へと腰を下ろしたのだった。


「本日は足を運んで下さりありがとうございます。ブラットから話を聞き皆様に会えるのをとても楽しみにしておりました。」


「王宮ではエリーゼがお世話になった様で、親の私共からもお礼を申し上げます。今日は王宮でのエリーゼのお話を沢山聞かせて下さいね。」


マイクは、優しい笑みを浮かべながら三人へと言った。

マイクに続いてナディアもまた優しい笑みを浮かべながら三人へとお礼と共に言った。


「そっ…そんな…私達の方こそお招き頂き嬉しく思っています。」


「エリーゼ様が育った邸に伺う事が出来て本当に感謝しています。」


「本日は本当に私共の様な者をお招き下さりありがとうございます。」


マイクとナディアがあまりにも丁寧に優しく言った事でマリア、ユーリ、ロイの三人は慌てて二人へと言った。


「まぁ…そんなに緊張はしなくても大丈夫ですよ。我が家はご覧の通り最低限の使用人と我々家族でひっそりと暮らしているのですから。貴族さにかける貴族ですからね。」


マイクが優しく微笑みながら三人へと言った。


そんなマイクの優しさに三人はほっとする様な感覚になり緊張が緩んだのだった。


「我が家はご覧の通り自分の出来る事は自分でやる。使用人達も使用人というよりは家族の様な関係を築くという我が家のスタンス故に侍女という者おりません。ですからエリーゼが入宮する際も侍女をつけずの入宮でした。ブラットの話によればマリアさんが王宮ではエリーゼの侍女をして下さったと聞きました。」


ナディアは、優しい口調で言った。


「はい!私がエリーゼ様の侍女をさせて頂きました。一介のメイドがご令嬢の侍女をするという事でとても不安で緊張していたのですが…エリーゼ様はそんな私にとても優しくして下さいました。侍女としてではなくお友達として接してくれると嬉しいと…。エリーゼ様は自分には侍女という者が居なかったからと仰いましたがきっと緊張で不安を隠せなかった私の事を察して仰って下さったのだと思います。」


マリアは、ナディアに尋ねられるとエリーゼと初めて会った時の事を思い出すかの様にマイクとナディアとブラットへと説明した。


「そう…。ふふ…エリーゼらしいわね。あの子はいつも自分の事より人の事を考えているの。」


ナディアは、マリアの話を聞くとくすくすと笑みを浮かべながら言った。


「本当に…エリーゼ様は王宮にいらっしゃる間は私達の使用人にも気を使い優しく接して下さいました。」


マリアがほんの少し涙ぐみながら言った。


「エリーゼ様は、他のご令嬢とは全く違った優しい心をお持ちの方でした。私は自分で言うのも何なのですが気難しい所があるのです…。しかし…エリーゼ様はそんな私にも何の隔たりもなく接して下さいました…。」


ユーリもエリーゼとの出来事を思い出すかの様にマイク達へと説明した。


「そうですか…。逆にエリーゼが厨房などに現れてユーリさんのお邪魔などしていないかひやひやしましたわ。ふふ…」


ナディアがユーリの話を聞くとクスりと笑みを溢しながら言った。


「邪魔どころかエリーゼ様があの『王都の天使』だと知り驚きました。エリーゼ様は王宮では使用人以外は近づきもしない厨房で楽しそうにパンを焼いておられました。それにそのパンは使用人皆の為に焼いて下さいました。」


ユーリは嬉しそうに口元を緩ませながら説明した。


「え?ユーリさんは王都の天使をご存知だったのですか?」


ユーリの話を聞いてブラットは驚いた表情を浮かべながらユーリへと尋ねた。


「はい。私はパンが好きでして休みの日は王都へよくパンを買いに行くのです。その時にエリーゼ様の焼くパンに出会い『王都の天使』を知りすっかり『王都の天使』の焼くパンにハマってしまったのです。」


ユーリは笑みを浮かべながら嬉しそうにブラットへと言った。


「そうだったのですね…。私はいつもエリーゼに付き添って王都へパンを売りに行っていたのです。まさかエリーゼの焼いたパンを好いて食べて下さってる方と王宮で遭遇するなんて偶然があるのですね。」


ブラットは笑みを浮かべながら言った。


「私も本当に驚きました。」


ユーリが言った。


「私はいつもユーリから『王都の天使』のパンを分けてもらい食べていたのですが、エリーゼ様が『王都の天使』と知りそう呼ばれている事に納得しました。本当に天使の様なお方でしたら。」


ユーリの横にいたロイも笑みを浮かべながら言った。


「エリーゼは幼い頃からパン作りが好きでね…。何度失敗しても諦めず皆の喜ぶ笑顔が見たいからと頑張っていたんですよ。」


「ふふ…変なところは負けず嫌いな所があるんですよ。」


ユーリやロイの話を聞いて、マイクとナディアは笑みを浮かべながら三人へと言った。


「何だが想像がつきます。」


マリアがクスりと笑みを溢しながら言った。


「エリーゼはきっと入宮時はとても不安だったと思います。我々もとても心配していたのですが皆様のお陰で王宮では寂しい思いはする事なく済んだ様ですね…。改めて皆様には感謝致します。」


「エリーゼと仲良くして下さりありがとうございます。」


マイクとナディアはどこか切ない表情を浮かべながらも三人へと感謝を告げた。


「本当に…どうかその様に仰らないで下さい。感謝をしているのは私達の方なのですから…」


「マリアの言うとおりです。我々の様な使用人にも優しく接して下さり本当にエリーゼ様には感謝しております。」


「エリーゼ様がいつも笑顔で笑って下さったお陰で使用人達が明るくなりました。エリーゼ様がいなければきっとその様にはなりませんでした。本当にエリーゼ様には感謝してもしきれません…。」


マイクとナディアの言葉を聞き三人は慌てて言った。


「嬉しいお言葉ありがとうございます。皆様から王宮でのエリーゼの様子を伺う事が出来て良かったです。今は…ブラットからお聞きになってご存知かと思いますがエリーゼは皆様の事を一切覚えていません。その為皆様にもブラットに話を合わせて頂いた様で…。」


マイクがどこか辛そうな表情を浮かべながら三人へと言った。


「はい…ブラット様から聞いた時は本当に驚きました…。ですがエリーゼ様が元気でおられる姿を見れただけで本当に良かったと思いました。」


「記憶喪失だと聞いたときはショックでしたが、エリーゼ様が生きて元気にしておられるだけで我々は安心したのです。」


「記憶がいつお戻りになるかは分かりませんが我々に協力出来る事があるのであれば喜んで協力させて頂きますので。」


マイクの話を聞いた三人は真剣な表情でそれぞれ言った。


「嬉しい…お言葉ありがとうございます…。」


マイクが言葉を詰まらせながら三人へお礼を言った。


「あの…ところで…一つお聞きしたい事があるのですが…。」


マリアがボソリと言った。


「??何でしょうか?」


マリアの言葉にマイクが不思議そうな表情を浮かべながら言った。


「実は…王都で何度か王太子殿下をお見かけしたのですが…王太子殿下が王都へ出られているのはエリーゼ様と何か関係があるのでしょうか……?エリーゼ様が今の様な状況に陥られたのも元はといえば王太子殿下がエリーゼ様を王宮から追放なさったのが原因ですので…私の様なメイドが王太子殿下の事をその様に言うなど許されない事なのですがどうしても気になっていたもので…。」


マリアは少し気まずそうにバツが悪そうにマイクへと言った。


「………。王太子殿下をお見かけしたのですね…。確かにマリアさんの仰る通り王太子殿下がエリーゼを王宮から追放した事で今回の様な事が起きました。正直、我々も初めは王太子殿下を許せませんでした…。しかし…その後色々と訳があり…この件に関しての詳しいお話は出来ませんが…一つ言えるのはエリーゼが傷つく様な事にはならない様にしているとだけお伝えしておきます。」


マイクは、少し考え込んだ後にマリアへと応えた。


「……。何か色々と事情がおありのは分かりました。これ以上は詮索などしませんのでご安心下さい。」


「ご理解頂きありがとうございます。」


マリアは、マイクの話を聞いて空気を読み応えた。

そんなマリアにマイクはお礼を言った。


「あの…私からも一つよろしいでしょうか?」


ユーリが言った。


「どうぞ……仰って下さい。」


マリアが応えた。


「はい…。先日、我々がブラット様にお会いしてエリーゼ様の元へと戻られた際にエリーゼ様が女性の方とお話されていた件でございます。」


ユーリが思い切って言った。


「?!その女性に何か心当たりでもあるのですか?」


ユーリの話を聞きブラットが驚き尋ねた。


「はい…。ただ…一瞬見ただけなので確実とは言えませんが…その女性は…エリーゼ様と共に王太子妃候補として入宮されていたスカイ公爵家のサリー様ではないかと…。」


ユーリは、少し困った様な表情で説明した。


「スカイ公爵家のサリー様…ですか…?」


「はい…。王都へ用事がおありなのか何度かサリー様を王都でお見かけした事があるのですが王都に出るには少し派手な洋服を着られていましたので印象に残っていたのです…。先日も以前見たサリー様が着ていた洋服に似ていた気がしましたのでサリー様じゃないかと思ったのです。」


ブラットが眉間にシワを寄せ眉をひそめながら呟いた。

すると、ユーリは頷きながらサリーじゃないかと思う根拠を説明した。


「……。そうですか…。ユーリ様の言う様にそのスカイ公爵家のサリー様の可能性は高いかもしれないですね。父上…いかがしましょう…?」


「うむ……。一先ずこの件に関してはアリさんにもすぐに手紙で報告するとしよう…。ユーリさん…教えて頂きありがとうございます。とても貴重な情報でした。」


ブラットは眉間にしわを寄せたまま言うとマイクの方へと向いてマイクへと尋ねた。

するとマイクは少し悩む様な表情を浮かべながら言った。

そして、ユーリの方を見てユーリにお礼を言った。


「いっ…いえ…確実とは言えませんがお役に立つ事なのであれば幸いです…。」


マイクに言われたユーリは慌てて応えた。


「あの…私達の様な身分の者が言うのは良くないと解っていますが……。サリー様は王宮に滞在されている間、何かとエリーゼ様を目の敵にしておいででした…。ですので…もしも先日の女性がサリー様なのでしたらと思うと不安になってしまうのです…。」


マリアが横から言いにくそうな表情を浮かべながらも思い切って言った。


「サリー様がエリーゼの事を…。教えて頂きありがとうございます。エリーゼを預かって頂いている方にもお伝えしておきますね。」


マイクはマリアの話を聞いて真剣な表情で言った。


サリーの話を出してからその場に間が出来る程静まった。


「今度は是非エリーゼが我が家へ遊びに来る際にご都合が合えば皆様もおいで下さい。記憶はありませんが優しいエリーゼのままですので皆様も一緒に楽しく過ごしましょう。」


マイクが場の静まりを打ち消すの様に笑顔を浮かべながらマリア達へ言った。


「よろしいのですか?」


「こんなに嬉しいお誘いはありません。」


「ありがとうございます。」


マイクの言葉を聞いた三人は一気に笑顔が戻り嬉しいそうに言ったのだった。


「もちろんですよ。本日は…本当にエリーゼのお話を聞かせて頂きありがとうございました。王宮で過していたエリーゼの事は全く分からなかったので聞ける事が出来て良かったです。」


「本当にありがとうございます。」


マイクとナディアが改めてマリア達へとお礼を言った。


「いえ…私達の方こそ伯爵様、伯爵夫人、ブラット様にエリーゼ様のお話をする事が出来て良かったです。」


マリアがマイクとナディアへ少し笑みを浮かべながら言った。


この後、お茶とお菓子を口にしながら夕方まで皆で雑談をしながら楽しい時間を過ごしたのだった。


そして、マリア達三人はマイクの好意で伯爵家の馬車で王都まで帰って行ったのだった。


マリア達が帰った後の伯爵邸では……


「父上、すぐにアリさんへ手紙を出す必要がありそうですね…。」


「あぁ…その様だな…。マリアさん達の話を聞く限り先日ブラットが見た女性はスカイ公爵家のサリー様だろう…。」


「王宮でエリーゼを目の敵にしていたのであればエリーゼに近づかれたら何をされるか分かりませんわ…。」


「あぁ…絶対にエリーゼが傷つかない様に動かねばならないな…。すぐにアリさんへと手紙を書くとするよ。」


ブラットが真剣な表情を浮かべながらマイクとナディアへと言った。

マイクも真剣な表情を浮かべながら言った。

ナディアはとても心配そうな表情を浮かべながら言った。

そんなナディアを見てマイクが頷きながら言った。


その後すぐにマイクはアリストン宛へ手紙を書いたのだった…。

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