50.接触と再会
エリーゼは目の前に立っているサリーを不思議そうな表情で見つめていた。
「エリーゼ様…お久しぶりぶりですね…。この様な場所でお会いするなんて…。」
サリーは、不思議そうにサリーを見ているエリーゼに作り笑顔を浮かべながら言った。
「……??えっと…どちら様でしょうか……?」
エリーゼは、サリーをきょとんとした表情で見つめがらサリーへと言った。
「…。はい…?どちら様ですか…ですって…?エリーゼ様は私を馬鹿にされてるのですか?」
サリーは、エリーゼの言っている事に腹を立てた様な表情でエリーゼへと言った。
(この方は何を言っているの?!殿下とお会いしているからといって私を馬鹿にしているの?だから私を知らないふり?……。本当に…腹立たしい方…。)
サリーは、エリーゼに話しかけながら心の中では苛立ちながらそんな事を思っていた。
「あっ…いえ…馬鹿になどしておりません…。ご気分を悪くしてしまったのなら謝ります…。あの…私今…事情がありまして…少し前からそれまでの記憶を失ってしまっていまして…。」
エリーゼは、サリーがあからさまに機嫌を害しているのを察して慌てて自分の名前を知っていたサリーへと自分の置かれている状況をサリーへと説明した。
「記憶喪失…ですって…?」
「はい…。私自信も突然の出来事でしたので…。」
サリーは、目を細めながら呟く様に言った。
そんなサリーを見てエリーゼは少し気まずそうな表情でサリーへと言った。
「では…記憶喪失のせいで私の事は覚えていないと…?」
「はい…。申し訳ありません…。それよりも…何故…私の名前をご存知なのですか…?私の名前は記憶がなくなってからつけてもらった名前なのですがそれ以降であなた様にお会いした事はなかったと思うのですが…」
サリーは、顔を少し引きつらせながらエリーゼへと尋ねた。
エリーゼは、申し訳なさそうな表情でサリーへと謝るとふと会話の途中で不思議に思っていた事を言った。
「何の偶然かは知りませんが、あなたが記憶喪失になる前の名前もエリーゼでしたの。その…名前をつけて下さった方が偶然にも記憶喪失前と同じお名前をつけられたのね…。」
サリーはエリーゼへと説明した。
「えっ…?私の本当に名前もエリーゼなのですか…?まさか…こんな偶然があるだなんて…。」
エリーゼはサリーの言葉を聞き驚いた表情を浮かべて呟いた。
「まぁ…偶然など珍しい事ではありませんわ…。それよりあなたにお聞きしたい事があるのですけど…。」
「その様なものなのでしょうか…。あっ…はい。私に聞きたい事とは何でしょうか?」
サリーは、目を細めながらエリーゼへと言った。
エリーゼは、偶然な事もあるんだなと不思議そうな表情を浮かべながらは言うとサリーに聞きたい事があると言われ慌てて応えた。
「先日も…エリーゼ様をお見かけしたのですがその時に男性の方と歩かれていましたがその方とはどの様なご関係なのですか?」
サリーは、何となく探るようにエリーゼへと尋ねた。
「先日…ですか…?男性……。あっ…私が先日一緒に歩いていた男性でしたらなんでも屋をしておられる方です。私が記憶喪失になった際に助けて頂いて今…家へと置いてくださってる方のお知りいの方なのです…。ですが…その方が何か…?」
エリーゼは、サリーに尋ねられて少し考えた。
そして、思い出した様にカイゼルの事だと思いサリーへと説明した。
(なんでも屋の方ですって…?あれはどう見ても殿下だったわ。でも…エリーゼ様は殿下の事は忘れてしまっている様だわね。でも、だとしたら余計に殿下とエリーゼ様が一緒にいる意味がわからないわ…。エリーゼ様のお話を聞く限りエリーゼ様はメディス伯爵邸にはお帰りになられてない様だしね…。)
サリーは、エリーゼの話を聞き考え込む様な表情を浮かべながら頭の中で考えていた。
「いえ…エリーゼ様といらした男性の方が私の知り合いの方に似ていたもので…。ですが私の知り合いはなんでも屋などしている方ではありませんので人違いだった様です。」
「そう…なのですね。」
サリーは誤魔化す様にエリーゼへと言った。
エリーゼは複雑そうな気まずい様な表情を浮かべながら言った。
「あの…記憶喪失になる前の私をご存知なのですよね?」
「え?えぇ…。知ってますわ。」
エリーゼはサリーの顔を見ながら尋ねた。
サリーは頷きながら応えた。
「あの…もし宜しければなのですが私が何者なのか教えて頂いてもよろしいでしょうか…?もしかすると記憶が戻る手助けになるかと思いますので…。」
エリーゼは、恐る恐るサリーへと尋ねた。
(ここで私がエリーゼ様の素性を話すべきなの?いえ…話してしまってエリーゼ様の記憶が戻った方が私には不都合だわ。記憶喪失のままでいてもらった方が邪魔なエリーゼ様を排除しやすいかもしれないわね…。記憶喪失だろうが殿下と会っているなんて許せる訳がないもの…。)
サリーはエリーゼから尋ねられるとどうするべきかを頭の中で考えていた。
「……。記憶を失くす前のエリーゼ様は……。」
サリーがエリーゼに何かを話そうとした瞬間……
「エリーゼ!!」
ブラットが、向こうの方から歩きながらエリーゼが誰かと一緒にいるのを見て声をかけた。
ブラットがエリーゼを呼んだ事でサリーがブラットの方をチラりと見た。
(あれは誰かしら…殿下の他に別の男性とも一緒に出かけてるというの?ん?あの男性と一緒にいる者達…どこがで見た様な…。)
サリーはブラットと一緒にいる三人に何となく見覚えがあったと思いながら考えていた。
(あっ…あれは王宮でエリーゼ様の侍女をしていたメイドだわ。まずいわね。私がエリーゼ様と話しているのを見られたら色々と動きにくくなるわ。)
サリーは、マリアを見てハッと思い出したのだった。
そして、サリーはマリアにバレる前に足早にその場から去ったのだった…。
「あっ…あの…お名前だけでも…」
エリーゼは、足早に去っていくサリーへ声をかけた。
しかし、サリーはエリーゼの声など無視して行ったのだった。
「せっかく…何か記憶を思い出す手かがりが掴めそうだったのに…あっ…そういえば名前を聞くのを忘れていたわ…。」
エリーゼが去っていったサリーの方を見つめながらボソリと呟いたのだった。
「エリーゼ!今…ここへ誰かいなかったか?女性と話をしている様に見えたが…。」
ブラットが、焦った様に急いでエリーゼへと近づきエリーゼへと尋ねた。
「ブラットさん…お帰りなさい。うん…。急に声をかけられたんだけど……どうやら記憶がなくなる前の私の事を知ってる方のようだったの…。」
エリーゼはブラットに尋ねられると少し困った様な表情を浮かべながらサリーに声をかけられた事を説明した。
「何だって?!エリーゼの記憶喪失より以前のエリーゼを知ってるだって?!」
「えっ?うん…。私の事をエリーゼと呼んでいたの。どうやら偶然にも記憶喪失になる前の名前だったみたいで…。」
ブラットがエリーゼの説明を聞き驚きのあまり少し声を大きくして言った。
エリーゼはブラットの声が少し大きかったので一瞬驚いたがすぐにブラットへと説明をした。
「その女性が…記憶喪失になる前のエリーゼの名前はエリーゼと教えてくれたのかい?他には何か聞いたのかい?」
「うん…。記憶喪失になってから会った事のない方だったのに私の名前を知っていたから不思議に思って聞いたら教えてくれたの…。記憶が戻すのに記憶喪失になる前の事を聞けば何か変わるかと思って聞こうとしたのだけど聞く前に…急にどこかへと足早に行かれてしまったのよ…。」
ブラットは、エリーゼの記憶喪失になる前のという言葉に一瞬息を呑み恐る恐るエリーゼに他に何か聞いたかを尋ねた。
すると、エリーゼは少し困った様な表情を浮かべながらブラットへと説明した。
「そう…なんだね。何か聞けたら記憶が戻る手助けになったかもしれなかったね…。」
ブラットはエリーゼの言葉を聞いてどこかホッとした表情を浮かべながら言った。
(エリーゼの記憶は戻って欲しいが下手に情報を聞くことで逆にエリーゼが傷つかないとも限らないから今回は何も聞けなかったという形で良かったのかもしれないな…しかし…あの女性は一体誰だったのだろう…。)
ブラットは、エリーゼに話しながらそんな事を考えていた。
「うん…。だけど仕方ないわよね…。」
エリーゼは少し残念そうな表情を浮かべながら言った。
「それで…その女性は何という名前だったんだい?」
「それが…名前を聞くのを忘れてしまったの。その方が去った後に気づいたの…。」
ブラットはエリーゼへと尋ねた。
エリーゼは苦笑いを浮かべながら応えた。
「そうか…。それはうっかりなミスだね…。」
ブラットはクスっと笑みを浮かべて言った。
(名前は分からずか…。一体誰だろうな…。王都でエリーゼの事を知っている人は割といるからな。一先ずこの事は父上達に報告しておいた方がいいな…)
ブラットはエリーゼに話しながらそんな事を考えていた。
「はは…そうね…。それより…そちらの方々はどなた…?」
エリーゼは苦笑いしながら言うと、ふとブラットの後ろにいたマリア達に気づきブラットへと尋ねた。
「あっ…あぁ…先程友達とばったり会ったんだよ…。」
「お友達ですか?」
ブラットはハッとマリア達が一緒だった事を思い出してエリーゼへと言った。
エリーゼは不思議そうな表情を浮かべながら言った。
「あぁ。マリアさんとユーリさんとロイさんだ…。」
ブラットは微笑みながらマリア達三人をエリーゼへと紹介した。
「……。こんにちは…。初めまして…。マリアといいます。」
「こんにちは…。お初にお目にかかるユーリです…。」
「こんにちは…。初めまして…ロイといいます…。」
マリア、ユーリ、ロイはブラットへと紹介を受けると三人共涙をグッと堪えながらエリーゼへと自己紹介をした。
「こんにちは。初めまして…。私はエリーゼと申します。どうぞ宜しくお願いします。」
エリーゼは、微笑みを浮かべながらマリア達三人へと挨拶をした。
「「「はい!」」」
マリア達三人はエリーゼの笑顔を見て嬉しくて涙が出そうになるのをグッと堪えながら笑顔で同時に言ったのだった。
「また…会う機会があると思うからその時はエリーゼも一緒にお茶でも飲みながら話でもしよう。」
「私も一緒にいいの…?嬉しいわ。その時はぜひ宜しくお願いしますね。マリアさん…ユーリさん…ロイさん…」
ブラットが優しく笑顔でエリーゼへと言った。
そんなブラットの言葉にエリーゼは嬉しそうに笑いながらマリア達へと言った。
「もちろんです。」
「その時は宜しくお願いします。」
「その時が楽しみです。」
三人はエリーゼの嬉しそうな顔に嬉しくなり三人共に笑顔で応えたのだった。
そして…
マリア達はその場でエリーゼとブラットと別れた。
三人と別れたエリーゼとブラットはブラットが買ってきてくれたランチを二人仲良く食べたのだった……。