49.使用人達との遭遇
急に後ろから声をかけられたブラットは振り向いた。
振り向いた先には……
王宮でエリーゼの侍女をしていたマリア。
マリアの横には、王宮の料理長のユーリと庭師のロイがいた。
「あの…私に何か……?」
ブラットは、少し疑う様な表情を浮かべながら探るようにマリア達へと尋ねた。
すると……
「あっ…急に声をかけて申し訳ありませんでした…あの…突然で申し訳ありませんがあなた様に少しお伺いしたい事がありまして…。」
「??……。伺いたい事とは何でしょうか……?」
マリアは、ブラットの表情を見て慌てて謝罪すると少し恐る恐るした様にブラットへと言った。
ブラットは、マリアを見て??といった表情を浮かべながらマリアへ尋ねた。
「はい…。あの…先程お見かけしたのですが…一緒におられた女性の方なのですがお名前はエリーゼというお名前ではありませんか?」
マリアは、少し聞きづらそうにブラットへと尋ねた。
「……。あの…申し訳ありませんがあなた方はどなたですか?どなたが存じ上げない方に無闇に人の名前をお教えするのは…。」
ブラットはマリアの言葉を聞き一瞬驚いた表情を浮かべたがすぐに表情を戻し少し疑う様にマリアへと言った。
「あっ…申し訳ありません…。不躾な事を聞いてしまいました…。私は王宮でメイドをしていますマリアと申します。こちらのお二人も王宮に仕える方達です。あなた様と一緒にいらした女性が私達の知っている方によく似てらしたのでお伺いしたのでございます…。」
マリアは、どこか寂しそうな表情を浮かべながら自分とユーリやロイの素性を明かした。
「王宮の方達…ですか?」
ブラットは驚いた表情を浮かべてマリア達へと言った。
「はい…。王宮で少し前までお仕えしていた方にあなた様とご一緒にいらした方がとてもよく似てらしたのです…。ですので思わずお声をかけさせて頂いたのです。突然お声かけして本当に申し訳ありませんでした…。」
マリアは寂しそうな申し訳なさそうな表情でブラットへと言うと頭を下げてブラットへ謝罪したのだった。
隣にいたユーリとロイもマリアと同じ様に頭を下げたのだった。
「あの…もしや…あなた方は王宮でエリーゼ…妹に仕えて下さった方々なのですか…?」
ブラットは、驚いた表情を浮かべながらマリア達へと呟くと様に言った。
「え…?妹……?エリーゼ…。やはりあの方はエリーゼ様なのですか?!」
「やはり…あの方はエリーゼ様だったのだな…。」
「エリーゼ様…」
ブラットの言葉を聞いた瞬間、マリアとユーリとロイは目に涙を浮かべながら言ったのだった。
「……。先程妹と…仰いましたがあなた様はエリーゼ様のお兄様でらっしゃるのですか?!」
マリアがふと先程のブラットの言葉を思い出して尋ねた。
「はい…。私はエリーゼの兄のブラット・メディスと申します。妹…エリーゼが王宮にいる際にエリーゼのお世話をして頂いたのですね…。」
ブラットはどこか切ない表情を浮かべながらマリア達に言った。
「そんな…お世話など…。むしろ、エリーゼ様にとてもよくきて頂いたのは私達なのです…。」
「マリアの言う通りです…。エリーゼ様は使用人の私共にもとても優しく丁寧に接して下さいました…。」
「その通りです…。本当にエリーゼ様はとても心の優しいお方でした…。」
マリアは少し涙ぐむ様な表情で言った。
マリアに続けてユーリとロイも続いて切ない表情を浮かべながら言った。
「そう…でしたか…。エリーゼらしいというか何というか…。」
ブラットは、切ない表情のまま少しだけ口角をフッと上げながら言った。
「エリーゼ様のお兄様とご一緒におられるという事は…エリーゼ様はご無事だったのですね…。」
マリアが少しホッとした様な表情を浮かべながらブラットへと言った。
「……?御三方は…エリーゼが今どの様な状況かご存知ない…のですか?」
ブラットは、マリアの言葉を聞いて少し驚いた様な表情でマリア達へと尋ねた。
「「「…えっ……??」」」
マリア、ユーリ、ロイはブラットの言葉を聞いて三人で顔を見合わせてとても驚いた表情を浮かべながら同時に言った。
「えっ…と…やはり…エリーゼ様に何かあったのですか?」
マリアが不安そうな表情を浮かべながらブラットへと尋ねた。
「……。エリーゼが王宮から追放されたのはご存知なのですよね?」
ブラットはマリア達へと尋ねた。
「はい…。エリーゼ様が追放されたという事と他二名の王太子妃候補のご令嬢が出宮されたという事のみ私共使用人には伝えられました…。しかし…騎士団の方々の話をたまたま聞いてしまいエリーゼ様が王宮を出れた後にエリーゼ様のお乗りになっていた馬車が襲われ…その後エリーゼ様が行方不明だと知ったのです…。その後エリーゼ様がどうなったかはわからないままでしたので…。」
マリアが涙ぐみながらブラットに自分達が知っている範囲の事を説明した。
「そうでしたか…。エリーゼの乗っている馬車が襲われその後行方不明になっていたのは事実です…。しかし…その後色々とありましてエリーゼの無事を確認する事が出来たのです。」
ブラットはマリア達へとエリーゼが無事だったことをマリア達へと伝えた。
ブラットの話を聞いた三人はエリーゼが無事だったという話を聞いてホッとした表情を浮かべた。
「しかし…無事だったのですが…襲われたショックと王宮での出来事もありで…エリーゼは…記憶喪失になってしまったのです…。」
ブラットは、唇をグッと噛みしめながら悔しそうな悲しそうな表情を浮かべながら三人へと言った。
「え?」
「記憶喪失…ですか…?」
「そんな…エリーゼ様…。」
ブラットの話を聞いた三人は、ホッとした表情から一変絶望した様な表情を浮かべながら呟いたのだった…。
「御三方とは…色々とお話をしたいのですが、今エリーゼを待たせています。ですので…今は一旦話を置いておいて申し訳ないのですが後日…また王都の噴水のある広場で待ちあわせするというのはいかがですが?待ちあわせ後は我が邸へとお越し頂きお話をしましょう。きっと父と母も王宮でのエリーゼの様子もお聞きしたいと思いますので…。いかがでしょうか?」
ブラットは、ハッとエリーゼを待たせている事に気づき慌ててマリア達へと説明すると後日会う提案をした。
「私達は…いち使用人ですのに…伯爵邸にお伺いするなど…。」
「恐れ多いです…。」
「伺ってよいものか…。」
三人は、ブラットの提案に戸惑いながら言った。
「はは…伯爵邸といっても我が家は他の貴族の邸とは全く違いますのでそんなに考えすぎないで下さい。」
ブラットは、戸惑う三人を見て笑顔を浮かべながら言った。
「「「……。」」」
ブラットの話を聞いて三人は顔を見合わせてお互い頷いた。
「分かりました…。」
「宜しくお願いします。」
「宜しくお願いします。」
三人は、ブラットに頭を下げながら言った。
「決まりですね。御三方のご都合に合わせますのでご都合の良い日を教えて頂けると助かります。」
ブラットが笑顔で三人へと言った。
「……。四日後でしたら…私共三人とも半休ですので大丈夫です…。」
マリアは申し訳なさそうな表情でブラットへと言った。
「四日後ですね。分かりました。父と母にも伝えておきますね。では、四日後に正午に噴水前に待ちあわせにしましょう。……。そうだ…エリーゼに少し会って行かれますか?記憶がありませんので残念ながら御三方の事は忘れてしまっていますが…。私の友達という設定で…どうですか?」
ブラットは、にこりと優しく微笑みながら言うと何かを思いついた様に三人へと提案した。
「え?!エリーゼ様にですか?!」
「いっ…いいのですか?」
「本当にですか?!ぜひ…会いたいです…。」
ブラットの言葉を聞いて三人は目を輝かせて嬉しそうに言った。
「分かりました。では、ランチを購入したら私と一緒にエリーゼの元へ戻りましょう。」
ブラットは、嬉しそうな三人を見て笑顔を浮かべて言った。
「「「ありがとうございます。」」」
三人は満面の笑みでブラットへとお礼を言った。
そして、その後ブラットは出来たての野菜スープとパンを購入してマリア・ユーリ・ロイと共にエリーゼの元へと向かったのだった…。
※
ブラット達四人がエリーゼの元へと向かってるその頃……
ブラットを待っているエリーゼの元へ一人の人影が近づいてきたのだった……。
「エリーゼ…様?」
女性がエリーゼへと声をかけてきた。
エリーゼは、声がした方を見た。
そこには…
スカイ公爵令嬢のサリーが立っていたのだった………。