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45.エリーゼの記憶

エリーゼ達は、無事にアリストンの家へと到着した。


家に着くと、カイゼルがエリーゼをそっとダイニングの椅子へと下ろした。


「カイさん…ずっと抱えて連れて帰って下さり…ありがとうございました…。」


エリーゼが、カイゼルの方を見てお礼を言った。


「いや…構わない…。あんな状態で歩いて帰らせる訳にはいかなかったからな…。気にするな…。」


カイゼルは、急に少ししどろもどろになりながらエリーゼから視線をそらせて言った。


(エリーゼが頭を押さえている姿を見て咄嗟にかけより抱き抱えてしまったが…今更ながら恥ずかしくなってしまっている…。いくら咄嗟だったとはいえ自分の首に腕を回させて掴ませるとは…。あの時はとにかくエリーゼが心配で一刻も早く家に連れて帰らなければの一心だったが今思うと我ながら何ということを…)


カイゼルは、エリーゼを無事に家まで連れて帰ってきた安堵感から急に自分の行動を恥ずかしく思えてきてそんな事を思っていた。


「はい…。本当にありがとうございました。」


エリーゼは、どこかそわそわした様な表情でカイゼルへと言った。


(まだ、胸のドキドキがおさまりきれてないわ…。それよりも本当にカイさんのお陰で家に帰って来れたわ。きっと重かったでしょうに…。それにカイさんに抱き抱えてもらってるうちにいつの間にか頭痛がおさまってるわ…。)


エリーゼは、まだ少し胸の鼓動の高鳴りが残っているのを感じながらそんな事を考えていた。


「エリーゼ…ところで体調はどうだ?」


エリーゼとカイゼルがお互いどことなくそわそわしている中アリストンがエリーゼを心配そうに見ながら尋ねた。


「えっ?あっ…はい。どうやら今は何ともないみたいです。皆さん…ご心配をおかけしたした。」


エリーゼは、ハッとなりアリストンへと応えた。


「そうか…。それなら良いのだが。体調が良くなったと思ったらまたすぐに辛そうにするもんだから焦ったぞ…。」


アリストンは、エリーゼの言葉に少しホッとした様な表情でエリーゼへと言った。


「本当にご心配おかけして申し訳ないです…。でも…本当にもう大丈夫です。」


エリーゼは、申し訳なさそうな表情で言った。


「ところで…俺と話をしている途中で体調が悪くなった様ですが…俺が何か変な事でも言いましたか?」


フェイが、横から心配そうな不安そうな表情でエリーゼへと尋ねた。


「そっ…そんな…。フェイさんは何も悪くありません!ただ…」


エリーゼは、フェイの言葉に驚き慌てて応えた。

そして、少し考え込む様な表情で言葉を止めた。


「ただ…何ですか?やはり何か余計な事でも…。」


フェイは、不安そうにエリーゼへと言った。


「いえ…本当にフェイさんは何も余計な事など言ってません。ただ…その…フェイさんとお話している時に急に何か…フラッシュバックの様な光景が頭の中を頭痛と共に過ぎったのです…。」


エリーゼは、再度慌ててフェイに言うと少し言いにくそうな表情で話を続けた。


「フラッシュバック…ですか?」


「頭の中を過ぎった光景とは何だ?」


エリーゼの言葉を聞き、フェイとアリストンは少し驚いた表情でエリーゼへと聞き返した。


「ぼんやりなのですが…フェイさんとお話をしている時に急に頭痛と共に頭の中にまるでフェイさんと話しているその状況が初めてではないかの様な光景がぼんやりと過ぎったのです…。過ぎった光景の人物の顔などはよく見えないのですが…。おかしな話ですよね。フェイさんと会ったことなどなかったというのに…。」


エリーゼは、アリストンとカイゼルとフェイへと自分が体験した状況を説明した。


エリーゼの話を聞き、アリストンとカイゼルとフェイは一瞬息を飲んだ。


「その過ぎった光景に思い当たる節はあるのか…?もしかしたら…記憶が戻りつつあるのか…?」


三人のうち最初にアリストンが口を開きエリーゼへと尋ねた。


「はい…。私も忘れている記憶なのかとも思い思い出そうとしたのですが思い当たる節もなく思い出そうとすると頭痛が酷くなってしまって…。」


エリーゼは、困った様な表情でアリストンへと応えた。


「そうか…。思い出そうとして頭痛などに襲われるのであれば無理して思い出す事はないさ…。それが原因でエリーゼの体調が悪くなるなど心配でたまらなくなるからな…。」


アリストンは、心配そうな表情でエリーゼの頭をポンポンとしながら言った。


「はい…。無理に思い出そうとするのはやめようと思います…。」


エリーゼは、頷きながらアリストンへと言った。


「今度からは、また今日の様に何か記憶の断片の様なものが頭を過ぎった時には教えてくれ。」


アリストンが言った。


「はい…分かりました。」


エリーゼが応えた。


アリストンへ応えたエリーゼはふとカイゼルに目を向けた。


「カイさん?何だか難しそうな顔をしてますけど…大丈夫ですか?もしや…私を抱えたせいで身体が痛くなったのではないですか…?」


エリーゼは、カイゼルの表情がどこか気になりカイゼルへと心配そうな表情で尋ねた。



「?!いや…大丈夫だ。身体が痛むのではない…。」


カイゼルは、ビクりと肩を揺らせると心配そうに見つめるエリーゼを見て慌てて応えた。


(いけない…。エリーゼの記憶が戻るかもしれないと思ったら動揺してしまった。動揺のあまり顔に出ていたのか…。気をつけなければ…。しかし…エリーゼの記憶が戻る手助けが出来たらと思っていたがいざ記憶が戻るかもしれないと思うと複雑な気持ちになってしまったな…。)


カイゼルは、エリーゼに問われて応えたものの頭の中ではそんな事を考えていた。


「では…どうされたのですか…?」


エリーゼは、首を傾げながら尋ねた。


「それは…その…そうだ…!空腹なのだ。あまりに空腹だから表情が歪んで見えたのだろう。」


カイゼルは、少し考え込む様にして応えた。


「お腹が…ですか?!」


「あっ…あぁ…。そうだ。まだ昼食を摂っていなかったからな。」


エリーゼは、少し驚いた表情を浮かべながらカイゼルへ言うとカイゼルは誤魔化すかの様に応えた。


「そう…ですね。そういえばせっかく昼食を用意して出かけたのに私のせいでまだ昼食を食べていませんでしたね…。ごめんなさい。すぐに支度するので良ければ食べていって下さい。アリさん、ここでカイさんとフェイさんも一緒に昼食を食べてもらってもいいですか?」


エリーゼは、カイゼルに言われてハッとなり謝りながら言うとアリストンの方を向きアリストンへと尋ねた。


「あぁ。それは構わないが…昼食の準備は私がするからエリーゼはまだ休んでいろ。」


アリストンが頷きながら応えると、エリーゼへ言った。


「ありがとうございます。私は大丈夫ですのですぐに支度します。」


エリーゼは、アリストンへお礼を言うと慌ててアリストンへと応えた。


「いいから休んでいろ。」


アリストンが言った。


「本当に大丈夫です。……。では、皆さんで一緒に支度をしましょう。そうすれば早く支度ができるでしょう?」


エリーゼは、アリストンに言われると引き下がらず笑顔で提案した。


「まったく…わかったよ。では、カイ、フェイ、お前達も昼食の支度を手伝え。エリーゼ、何をすればいいか指示を出してやってくれ。」


アリストンは、やれやれと言った表情を浮かべながら応えるとカイゼルとフェイの方を向いて言った。


「「「分かりました。」」」


アリストンに言われると、エリーゼとカイゼルとフェイの三人は同時に応えた。


そして、エリーゼの指示のもとエリーゼが用意していた昼食に加えて川で釣れた魚を数匹アリストンがさばきその魚をエリーゼが手早く調理したのだった。


テーブルには、美味しそうな匂いの食事が並べられた。


「よし!支度も出来た事だしいただくとしよう!」


アリストンが、支度が終わったのを見計らって三人へと言った。


「「「はい。」」」


エリーゼ、カイゼル、フェイは応えると席へとついた。


「では…いただきます!!」


「「「いただきます!!」」」


アリストンが、最初に言うと続いてて三人も言った。


「テオ…これはテオの分だから沢山食べてね。」


エリーゼが、テオの分にと別に除けて調理した魚料理をテオの前に出してテオへと言った。


「ニァ〜オォォオ!!」


テオは、嬉しそうに鳴きながらエリーゼが出してくれた魚料理を口にしたのだった。


そして、四人で食卓を囲んでテーブルに並んだ料理を和気あいあいと食べたのだった。

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